宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第23話任命「生き物係」

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 アウターの改造と修理が完了して、自由に宇宙空間を飛び回れるようになったフーさんは僕のデブリ拾いを手伝うと言い出した。

 解放感を求めるのなら、アウターそのものが必要ない気がしていたけれど、アームと足をつけっぱなしにしたのは最初から作業を手伝うためだったようである。

 デブリを細々と集めるこの時間に僕らは話をしていた。

「なんだか申し訳ないな。絶対必要な作業ってわけでもないし」

「そうなの? じゃあどうしてデブリ拾いを続けるの?」

 改めて尋ねられてボクはふむと唸った。

 鉱物資源は魔法生物たちが集めて来てくれるし、大概のものはシュウマツさんにお願いすれば、作り出せる。

 そうやって一新した方が、無駄もないし早いに違いない。

 だけど僕らが手を貸すことが、まるで無駄ではないと言うのが答えだろう。

 成果の一つがフーさん自身でもあった。

「ああ、元居た船の残骸回収とか、漂流物の調査はどうしても僕がやりたかったんだ。あんまり効率的ではないけど、そのおかげで君も見つけられたから」

 結果として自分が助けられたと知ったフーさんは、声を強張らせた。

「そ、それは頑張ってやらないとだ! うん! この子達にも漂流者には気を付けるようによく言っておくよ!」

「それは本当にとても助かる。でも、まぁほとんどは宇宙のゴミを片付ける「ゴミ係」ってところだから君みたいなことは滅多にないよ?」

 あくまで僕からすると、操縦の腕が鈍らないようにする日課という意味合いが強い。

 付き合わせるのが気の毒だと思ったが、フーさんはウウーンと唸って複雑そうな顔をしていた。

「ううん。いや! やるよ! 何日かここで過ごしてたらカノーの言うことが嘘じゃないってわかるから。それなら何かできること探したい!……いい?」

「そりゃあもちろん。手伝ってくれるなら助かるよ」

「うん! 任せておいてよ! この子達もやる気満々だから!」

 フーさんの周りには日に日に精度が上がってゆく宝石型魔法生物が輝いている。

 戯れるように飛ぶ彼らはずいぶんフーさんに懐いているように見えた。

 魔法を使えるのもそうだが、それだけですべてがうまくいくようにも思えない。

 やはり本人の資質によるところが大きいんだろうなと僕はホッコリした。

「ずいぶん仲良くなったんだね。生き物とか好きだったりするのかい?」

「うん! 大好きだよ! ここは緑は豊かなのに、動物はあんまりいないから少し残念なくらい」

「ああ、コロニーの中にかな? そういう興味もあるんだね」

 本当に動物が好きだったのか、それなら確かにニライカナイコロニーは少し物足りないかもしれない。

 しかしまるで生き物外にかというと……そんなことはなかった。

「……なら面白い話があるんだけど、その前に一つ聞いていい?」

「なに?」

「戦うのとか得意だったりする?」

「え? も、もちろんだよ! フェアリーシリーズのタイプ3は戦闘特化だよ!」

 なんか闇の深い胸の張り方をしてきたけれど、これはお願いしてみるべきだろうか?

 僕の頭に浮かんだのは、もう一つの持て余し気味案件だった。

「実は……コロニーの中にちょっと特殊な動物がいるんだけど。見てみる?」

「見る!」

 フーさんは気持ちのいいくらいの即答である。

 僕が若干の後ろめたさを感じていると、嬉しそうなフーさんは面白い質問をしてきた。

「じゃあ、その仕事は何係?」

「え?」

 それはさっきゴミ係なんて言った、僕の冗談を混ぜっ返したらしい。

 しばし考え、ため息を吐いた僕は当たり障りがない係にフーさんを任命しておいた。

「そうか。ええっと、じゃあ君を……生き物係に任命しよう」

 何も知らない女の子を騙したようで僕の良心はとても傷んだが、どうにか出来るならどうにかしてほしいのも本音だった。



 というわけで僕はフーさんをコロニーの中に連れてきた。

 完全装備でやってきたが、やはり勝てる気がしないのは自分の失敗体験からだろうか?

 いや、単純にアウターを含めても見上げてしまう巨躯を持つ生き物は非常識だと僕は思った。

 最初は大げさだと笑っていたフーさんだったが、今では笑顔も引っ込んでいた。

「……ナニコレ?」

「フシュウウウ……」

 今牛、豚、鳥の三つの頭を持つキメラは口から熱い息を吐きこちらを睨んでいる。

 前回僕の敗北の後、魔法で作られた檻に閉じ込められていたが、それでも届く威圧感は確実に増していた。

 強張った表情のフーさんがこっちを見るので、僕はそっと目を逸らす。

「ねぇ……ナニコレ?」

「動物?……シュウマツさん曰く家畜らしいけれど」

「ちょっとめちゃくちゃ過ぎだよ!? なんで頭が三つあるの!」

「……わからないけど、語弊を恐れず言えば、シュウマツさんの真心かなぁ?」

「どんな真心なの!? これは動物じゃなくてモンスターって言うんだよ!」

「全くその通りだと思う」

 心なしか前よりでかくなっている気さえした。

 目が白目で一切の知性が感じられない上、血走って闘争心しか感じないのはもはや嫌がらせの類だと思う。

 しかしそんなモンスターを前にしてなお、フーさんは奮い立った。

「この平和そうな場所にあんな魔物がいたなんて……でも大丈夫! 私には新生アレーネと、この子たちがいるんだから!」

「おお!」

 フーさんの手の中には、宝石の魔法生物が山のように抱えられていた。

 確かに実験の結果、あの魔法生物がその気になれば巨大な小惑星すら破壊できることが判明した。

 あれならばどうにかなるかもしれないと僕も期待してしまう。

 フーさんはキラキラした彼らを空中高く放り投げると、素早く指示を出した。

「あいつをやっつけて!」

 ただいつもなら恐ろしい速さで飛び出していく魔法生物達は、一向に動く気配はない。

「え!」

「……」

 魔法生物達は、陸にまかれて地面でビチビチしていた。

 動かないんじゃなくて動けない、そんな感じである。

「まさかこの子達……宇宙じゃないと動けない?」

「どうやらそうみたいだ……」

「魔法なのに!?」
 
 驚くフーさんだけど、確かに宝石フォルムで重力のある場所を自由自在に飛び回れるわけもない。

 当てが外れて動揺していたフーさんだったが、すぐに冷静さを取り戻すのは彼女もまた兵士だった。

「い、いやでも大丈夫だよ! スペーススーツのアウターがただの動物に負けるわけない!」

 あ、それ僕も立てたフラグだ。

 不安が頭をよぎったが、そう暢気にしてはいられない。

 檻は一定距離に踏み込むと解放されるチャレンジャーウエルカムな仕様だった。

 檻から解放された牛豚鳥が羽を広げて空中高く舞い上がる。

「「ヒィ!」」

 僕らは揃って悲鳴を上げた。

 そんな僕らの悲鳴は空中からの突進でかき消された。



「ううう……銃も……銃が効かないなんて」

「なんというか、あのパワーおかしいよね? おかしいと思うんだよ僕は」

 奮闘はしたのだけれど、後には命からがら逃げ延びた負け犬が二人いるだけだった。

 封印していた小銃まで使ったのに全部筋肉で弾くとか、もう僕はあれを動物とは思えない。

「……まぁ動物好きに、家畜の世話は酷な話ではあったかも」

「そういう問題? いや、それ以前に大きな問題があるよね?」

「ちょっと自分を慰める嘘だから気にしないで。……でもおいしいらしいんだよなぁ」

「あれって、おいしいの?」

「うん、おいしいらしい……食べたことないけど」

 僕とフーさんは同時にため息を吐く。

 まぁ味なんて今となっては夢のまた夢の話だった。

「はぁ……これじゃあとても生き物係は名乗れないね」

 そして敗北を期したことで、なんだか面接に落ちたみたいになってしまったフーさんには悪いことをしてしまった気分だった。

「いやー正直、僕が悪かったかなって思ってる」

 そんな時、狙ったようなタイミングでフワフワとやって来たシュウマツさんが僕らに暢気に声をかけて来た。

「やぁ、君達は何をしているんだい?」

「……このタイミングで出てきておいて聞く? またお肉はお預けだよ」

「おや、それは残念だ。ところで何なんだい? その生き物係とは?」

「……生き物の世話をする人?」

 まぁ小学校ネタのジョークではないとは言わないけれど。君まで混ぜっ返すかね?

 僕的にはいくらなんでも軍用アウターまで引っ張って来て倒せない謎の生物についてもう少しきっちり話をしておきたい気分なのだけれど、僕が何か言う前にシュウマツさんは僕らの前にやってきて、何か閃いたみたいにピカリと輝いた。

「ふむ。動物の世話がしたいのかね? ならばちょうどいい。一つ頼まれてくれないかな?」

「「??」」

 シュウマツさんの光に導かれてやって来たのはシュウマツさん(本体)の麓だった。
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