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第24話シュウマツさんのアンサー
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コロニーの真ん中に生えているシュウマツさんの麓は完全に宇宙空間である。
シュウマツさん本体の根本にやってくると、外から居住区が一望出来た。
最初は岩だらけだったが、もはやその面影は微塵もない。
山に川、そして森や海がコロニーの大部分を占めている光景は一般的なコロニーの景色とは明確に違うものである。
ただ、出来上がった居住区はとても美しかった。
いうなれば、大自然をそのまま切り取ってあてはめたような絶景に、僕だけでなくフーさんも見蕩れていた。
「うわー! すっごい! 綺麗だね!」
「綺麗だよねぇ。シュウマツさんが魔法でだいたいやってくれた出来立てだからかな? 僕としてはいつかどうやったのか科学的に解き明かしたいところだけれど」
「えぇ! それはさすがに無理じゃないかな? 科学じゃ説明出来ないから魔法なんじゃないの?」
「それはどうだろう? 僕らの文明だって、シュウマツさんからしたら初めて見ることも多いみたいだ。僕としては一生で一つくらい不思議に思ったことを解明したいなって思うよ」
まぁ出来ればいいなという願望である。
頭の中に響いた声は実に楽し気に僕らに語り掛けて来た。
「そんなこと企んでたのかい?」
「当然じゃない? 僕は不思議なことは大好きだからね。理屈を調べたくなるのさ」
「それは素晴らしい。その点は元の世界の人類よりも君達の方が優れていると感じるよ」
「そうだと嬉しいけれどね。それよりシュウマツさん。こんなところまで連れて来て、頼みたいことって何なの?」
生き物係の流れでここまで来たが、空気もない場所で生き物も何もないと思う。
シュウマツさんの光はフワリと浮かび上がって、本体の幹の中に溶けてゆく。
「ふむ。いや、森も海もいい感じに育ってきたが、今のままじゃ水を溜めただけだからね。やはり自然というのなら命がなければ始まらないだろう?」
「命?」
「……命」
「ああそうだとも。実はそろそろ生まれそうなのでね。君達に顔見せしたいと思っていたのだ」
「生まれるって何が?」
余りに突飛な表現に混乱して僕がそう尋ねると、シュウマツさんの枝がワサワサと音を立てて揺れ、僕は顔を上げた。
「説明しても理解するのは難しいと思う。まずは枝の方を見ていてくれ。そろそろだ」
指摘され枝によくよく目を向けてみると、いつもと違う一際強い光が見えて、それは真っすぐこちらに落ちて来た。
全部で五つの光の玉は僕らの前でパチンと弾けて形になって―――
「……」
「……」
光の中から出てきたのは、バスケットボールサイズの動物達だった。
鳥。タツノオトシゴ。亀。猫と、トカゲである。
それぞれ、ゆっくりと目を開けて僕らを見た。
感動して震えているフーさんは彼らに手を伸ばすと、鳥の子供はフーさんの手に頭をこすりつけて来た。
「おおお……。ど、動物? 動物だよね! コロニーじゃ普通は生き物の制限厳しいもんね!」
「月もそうなんだ。コロニーも生きた奴は基本持ち込み禁止だから、小動物は珍しいよ」
「だよね!……これはすごい! なんだろう……かわいい。かわいいが固形化している」
「いやぁ感動しているところ申し訳ないんだが、動物の形はとっているが、実は普通の動物ではないんだよ。この子たちはこのコロニーの自然を管理する精霊だよ」
「「精霊?」」
「そうとも。環境を安定させる重要な存在だとも。僕らの世界では、彼らのような存在が世の理を管理していたんだ。意志を持っているから頼めば色々と融通を聞かせてくれるよ」
僕はああそう言えばと、前に聞いていた話を思い出していた。
シュウマツさんがコロニーの自然を安定させるために作り出した光の数が全部で五つだった気がする。
その光の正体がこの動物達で「精霊」だったというわけか。
だがそうだとすると僕は一つ引っかかることがあって、どうしてもシュウマツさんに聞いておきたくなった。
「へぇ……え? 小動物にそんな重要なこと管理させてたの? 大丈夫?」
「いや、管理させるというのは言葉のあやでね……元素を象徴しているというか、可視化させたというか―――ともかく自然にも命というやつはあってだね、精霊というのはないと成立しないものなのだよ。まぁ―――魔法だね」
「説明するのめんどくさくなったら“魔法”で括ってごまかしてない?」
「そんなことはないとも」
恐ろしい疑惑が出たが、シュウマツさんがそう言うのなら、彼らが重要な存在であるのは間違いないようだ。
ただ僕は不思議な動物達と戯れていたフーさんがいつの間にかこちらをジッと見ていることに気が付いた。
その視線は主にシュウマツさんに向けられている。
一体どうしたのかと思っていると、フーさんの口からその質問は零れるように出て来た。
「ねぇシュウマツさん……命ってなんだろう?」
その瞬間、ギシリと空気が凍り付いた音が聞こえた気がした。
「……私に命とか魂ってちゃんとあるのかな? シュウマツさんならわかる?」
「「……」」
おおっと、これはまた深刻な難題を突き付けられた感じである。
アニメとかなら、12話とかかけて最終的な答えを導き出しそうな難問が不意打ちで来た。
この回答者が僕なら、迂闊なことは言うべきではない。
だがせめて前向きになれるような言葉を考える。
ただその回答者はよりにもよってシュウマツさんだった。
はっきり言って僕にはシュウマツさんが何を言うのか想像もできない。
何なら矮小な人間では想像も出来ないような超越的な言葉が飛び出ても何ら不思議はない。
僕は固唾を飲んで見守った。
大丈夫だシュウマツさん、君が何を言っても僕はワンクールかけてメンタルケアに励む意気込みで行くとも。
僕が決意を固める中、フーさんは真剣な面持ちで質問を続ける。
「私の月にいる人は、新しい人類って言われてるんだ。でも新しいってことは少ないってことで……だからクローンや遺伝子操作なんかも積極的に試みられてるんだ。私達フェアリー3タイプなんて、成長促進されて寿命が普通の人間の4分の一しかない。私達を作った人たちはよく命について話してた。……神様みたいなシュウマツさんならこの答えが分かる?」
完全に脇に置かれた僕は、ひとまず生まれたばかりの五匹をこちらに撤収させてきて、よしよししておいた。
おいおい月の人よ。頼むから魔法を使う方々よりもヤバそうなネタをガンガン使っていくスタイルは止めてもらっていいだろうか?
遺伝子操作の影響で寿命が短いとかそんな衝撃の事実、いきなり聞かされても嚙み砕けない。歯が折れそうだ。
僕は何も言えず、フーさんはシュウマツさんのアンサーを待っている。
ああ願わくば、フーさんの心が少しでも軽くなるような言葉が欲しいと僕は願った。
シュウマツさんは数秒明滅して、フーさんに答えた。
「質問の意味が難しいな。命はあるし、君は普通に人類では? 植物視点で言わせてもらえば、生まれ方は千差万別だよ? 種と球根の違いなど気になりはしないなぁ。一年で枯れても命がないなんてことはないし……」
まさかの神様視点ではなく植物視線だった。
「ああ、それと治療の時に「解呪」を掛けたから悪い影響はだいたい解除出来てると思うよ。君は人類種だから普通にしてれば100年くらいなら生きられるんじゃないかな?」
そして思わぬ爆弾は、シュウマツさん側にもあったらしい。
「「!!」」
正直僕の顎は落ちた。口はしばらく開けっ放しである。
結構大雑把にすごいこと言ったよね?
僕はそりゃあもう驚いたが、僕以上に慌てたのはもちろんフーさんだった。
「ええええ! わ、私の体になにしたの! ひょ、ひょっとして! 寿命が長くなった代わりに能力がなくなったとかそう言うこと言わないよね!」
「??? 何か衰えたと感じる部分があったかな?」
「……そう言えばないけど」
「うん。なら問題ないのでは?」
「……というか解呪でどうにかなるって、遺伝子操作って呪いなの?」
「うーん。そこはよくわからないが、こっちでは命に悪影響があるモノを広い意味で呪いと定義しているらしい。解呪はとても優秀な魔法でね、魔法文明の絶頂期に完成したのだよ。魔法による呪いだけでなく、薬や毒による影響も必要ならば解除できる。良いところは消さないと言うのもポイントでね? 個性は潰さないのは僕らの世界の人類のこだわりを感じるところだ」
「「……へー」」
なんだか僕はそうとしか声に出せなかった。
結構根本的な問題がだいたい秒で解決した? いやまぁあくまで個人的な話ではあるけれども。
魔法ってやっぱり魔法なんだなって、僕はそう思ったんだ。
シュウマツさん本体の根本にやってくると、外から居住区が一望出来た。
最初は岩だらけだったが、もはやその面影は微塵もない。
山に川、そして森や海がコロニーの大部分を占めている光景は一般的なコロニーの景色とは明確に違うものである。
ただ、出来上がった居住区はとても美しかった。
いうなれば、大自然をそのまま切り取ってあてはめたような絶景に、僕だけでなくフーさんも見蕩れていた。
「うわー! すっごい! 綺麗だね!」
「綺麗だよねぇ。シュウマツさんが魔法でだいたいやってくれた出来立てだからかな? 僕としてはいつかどうやったのか科学的に解き明かしたいところだけれど」
「えぇ! それはさすがに無理じゃないかな? 科学じゃ説明出来ないから魔法なんじゃないの?」
「それはどうだろう? 僕らの文明だって、シュウマツさんからしたら初めて見ることも多いみたいだ。僕としては一生で一つくらい不思議に思ったことを解明したいなって思うよ」
まぁ出来ればいいなという願望である。
頭の中に響いた声は実に楽し気に僕らに語り掛けて来た。
「そんなこと企んでたのかい?」
「当然じゃない? 僕は不思議なことは大好きだからね。理屈を調べたくなるのさ」
「それは素晴らしい。その点は元の世界の人類よりも君達の方が優れていると感じるよ」
「そうだと嬉しいけれどね。それよりシュウマツさん。こんなところまで連れて来て、頼みたいことって何なの?」
生き物係の流れでここまで来たが、空気もない場所で生き物も何もないと思う。
シュウマツさんの光はフワリと浮かび上がって、本体の幹の中に溶けてゆく。
「ふむ。いや、森も海もいい感じに育ってきたが、今のままじゃ水を溜めただけだからね。やはり自然というのなら命がなければ始まらないだろう?」
「命?」
「……命」
「ああそうだとも。実はそろそろ生まれそうなのでね。君達に顔見せしたいと思っていたのだ」
「生まれるって何が?」
余りに突飛な表現に混乱して僕がそう尋ねると、シュウマツさんの枝がワサワサと音を立てて揺れ、僕は顔を上げた。
「説明しても理解するのは難しいと思う。まずは枝の方を見ていてくれ。そろそろだ」
指摘され枝によくよく目を向けてみると、いつもと違う一際強い光が見えて、それは真っすぐこちらに落ちて来た。
全部で五つの光の玉は僕らの前でパチンと弾けて形になって―――
「……」
「……」
光の中から出てきたのは、バスケットボールサイズの動物達だった。
鳥。タツノオトシゴ。亀。猫と、トカゲである。
それぞれ、ゆっくりと目を開けて僕らを見た。
感動して震えているフーさんは彼らに手を伸ばすと、鳥の子供はフーさんの手に頭をこすりつけて来た。
「おおお……。ど、動物? 動物だよね! コロニーじゃ普通は生き物の制限厳しいもんね!」
「月もそうなんだ。コロニーも生きた奴は基本持ち込み禁止だから、小動物は珍しいよ」
「だよね!……これはすごい! なんだろう……かわいい。かわいいが固形化している」
「いやぁ感動しているところ申し訳ないんだが、動物の形はとっているが、実は普通の動物ではないんだよ。この子たちはこのコロニーの自然を管理する精霊だよ」
「「精霊?」」
「そうとも。環境を安定させる重要な存在だとも。僕らの世界では、彼らのような存在が世の理を管理していたんだ。意志を持っているから頼めば色々と融通を聞かせてくれるよ」
僕はああそう言えばと、前に聞いていた話を思い出していた。
シュウマツさんがコロニーの自然を安定させるために作り出した光の数が全部で五つだった気がする。
その光の正体がこの動物達で「精霊」だったというわけか。
だがそうだとすると僕は一つ引っかかることがあって、どうしてもシュウマツさんに聞いておきたくなった。
「へぇ……え? 小動物にそんな重要なこと管理させてたの? 大丈夫?」
「いや、管理させるというのは言葉のあやでね……元素を象徴しているというか、可視化させたというか―――ともかく自然にも命というやつはあってだね、精霊というのはないと成立しないものなのだよ。まぁ―――魔法だね」
「説明するのめんどくさくなったら“魔法”で括ってごまかしてない?」
「そんなことはないとも」
恐ろしい疑惑が出たが、シュウマツさんがそう言うのなら、彼らが重要な存在であるのは間違いないようだ。
ただ僕は不思議な動物達と戯れていたフーさんがいつの間にかこちらをジッと見ていることに気が付いた。
その視線は主にシュウマツさんに向けられている。
一体どうしたのかと思っていると、フーさんの口からその質問は零れるように出て来た。
「ねぇシュウマツさん……命ってなんだろう?」
その瞬間、ギシリと空気が凍り付いた音が聞こえた気がした。
「……私に命とか魂ってちゃんとあるのかな? シュウマツさんならわかる?」
「「……」」
おおっと、これはまた深刻な難題を突き付けられた感じである。
アニメとかなら、12話とかかけて最終的な答えを導き出しそうな難問が不意打ちで来た。
この回答者が僕なら、迂闊なことは言うべきではない。
だがせめて前向きになれるような言葉を考える。
ただその回答者はよりにもよってシュウマツさんだった。
はっきり言って僕にはシュウマツさんが何を言うのか想像もできない。
何なら矮小な人間では想像も出来ないような超越的な言葉が飛び出ても何ら不思議はない。
僕は固唾を飲んで見守った。
大丈夫だシュウマツさん、君が何を言っても僕はワンクールかけてメンタルケアに励む意気込みで行くとも。
僕が決意を固める中、フーさんは真剣な面持ちで質問を続ける。
「私の月にいる人は、新しい人類って言われてるんだ。でも新しいってことは少ないってことで……だからクローンや遺伝子操作なんかも積極的に試みられてるんだ。私達フェアリー3タイプなんて、成長促進されて寿命が普通の人間の4分の一しかない。私達を作った人たちはよく命について話してた。……神様みたいなシュウマツさんならこの答えが分かる?」
完全に脇に置かれた僕は、ひとまず生まれたばかりの五匹をこちらに撤収させてきて、よしよししておいた。
おいおい月の人よ。頼むから魔法を使う方々よりもヤバそうなネタをガンガン使っていくスタイルは止めてもらっていいだろうか?
遺伝子操作の影響で寿命が短いとかそんな衝撃の事実、いきなり聞かされても嚙み砕けない。歯が折れそうだ。
僕は何も言えず、フーさんはシュウマツさんのアンサーを待っている。
ああ願わくば、フーさんの心が少しでも軽くなるような言葉が欲しいと僕は願った。
シュウマツさんは数秒明滅して、フーさんに答えた。
「質問の意味が難しいな。命はあるし、君は普通に人類では? 植物視点で言わせてもらえば、生まれ方は千差万別だよ? 種と球根の違いなど気になりはしないなぁ。一年で枯れても命がないなんてことはないし……」
まさかの神様視点ではなく植物視線だった。
「ああ、それと治療の時に「解呪」を掛けたから悪い影響はだいたい解除出来てると思うよ。君は人類種だから普通にしてれば100年くらいなら生きられるんじゃないかな?」
そして思わぬ爆弾は、シュウマツさん側にもあったらしい。
「「!!」」
正直僕の顎は落ちた。口はしばらく開けっ放しである。
結構大雑把にすごいこと言ったよね?
僕はそりゃあもう驚いたが、僕以上に慌てたのはもちろんフーさんだった。
「ええええ! わ、私の体になにしたの! ひょ、ひょっとして! 寿命が長くなった代わりに能力がなくなったとかそう言うこと言わないよね!」
「??? 何か衰えたと感じる部分があったかな?」
「……そう言えばないけど」
「うん。なら問題ないのでは?」
「……というか解呪でどうにかなるって、遺伝子操作って呪いなの?」
「うーん。そこはよくわからないが、こっちでは命に悪影響があるモノを広い意味で呪いと定義しているらしい。解呪はとても優秀な魔法でね、魔法文明の絶頂期に完成したのだよ。魔法による呪いだけでなく、薬や毒による影響も必要ならば解除できる。良いところは消さないと言うのもポイントでね? 個性は潰さないのは僕らの世界の人類のこだわりを感じるところだ」
「「……へー」」
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