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第25話至福の時間
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僕は今、最高の瞬間に酔いしれていた。
お湯を入れて3分。待ちに待たされ、その封印は解除された。
解き放たれた醤油の香る湯気は、あまりにも食欲をそそる刺激を脳にもたらし、唾液が口にあふれてゆく。
箸は作った。
そしてフルフェイスのヘルメットには食事時、口のところだけ開放するギミックまで組み込んだのは、この一杯のためと言っても過言ではない。
「……いただきます」
僕は手を合わせて感謝し、カップを掴む。
それから麺を救い上げ、一気に吸い上げた。
ズゾ! ズゾゾゾ!
至福!
ああ、カップ麺……。カップ麺でしか取れない栄養素は、確かにあった。
「カノー……どこから持ってきたのそんなもの?」
困惑しているフーさんに僕はスープを飲み切って頷く。
これはとうとうこのコロニーで最も価値のある宝物を披露する時が来たようだった。
「カップ麺が生る木があるから……味も完ぺきだよ」
「カップ麺が生る木?―――あ、私馬鹿にされてる!」
「違うよ、本当にあるんだよ。見てみるかい?」
「……いいでしょう。 付き合ってあげましょう」
仕方がないなぁと、子供のいたずらでも嗜めるようなフーさんを僕はカップ麺が沢山生った木まで案内した。
「ホラ。カップ麺の木だよ」
「ナニコレ気持ち悪い!」
「そんなことない。こんなに素晴らしい物見たことない」
「そ、そう?」
「そうだとも。君にも分けてあげよう。味も最高だよ」
ほんの少しでも理解を示してくれるなら、僕としてはとっておきのカップ麺をフーさんに分けることもやぶさかではない。
ゆくゆくは大量生産も視野に入れているが、今はたった一本の木からひっそりと収穫できる、お楽しみである。
収穫していくらかパック詰めしておいたそれをフーさんに渡すとフーさんは少しだけあきれ気味だった。
「新鮮なお野菜が沢山あるんだから。そっちを食べたらいいのに……」
「毎日カップ麺でも僕はいいけれどね。タンパク質はただでさえ不足がちなんだから、フーさんこそカップ麺おすすめだよ?」
「えぇ? でもカップ麺にたんぱく質沢山入ってたっけ?」
「……謎肉?」
「……サプリメントでもいいから飲んだ方がいいよ? カノーは眠る時間も不規則みたいだし……毎日何してるの?」
あれ? タンパク質謎肉じゃダメ? ダメか。それなら仕方がない。
隠すことでもないかと僕は試しにやり始めた研究を教えることにした。
「ワープの研究だよ。どうにか形に出来ないかなと思って。魔法でそういうことも出来るみたいだから」
「ワープ!? 魔法でそんなことまで出来るの!?」
随分フーさんは驚いていたが、僕の居た実験船の事故はおそらくワープ実験が原因っぽい。
シュウマツさんの話では時空振まで起こっていたという話だし、そんな技術はそう多くはなかった。
「うん。そうなんだよ。シュウマツさんの力が及ぶ範囲もこのコロニー周辺だけみたいだからどうにか長距離ワープを安定させられないかなってね」
元々ワープ技術は実現一歩手前まで来ていた。
しかし安定性や安全性は全然で、まともに移動出来なければ何の役にも立たない。
「そうなんだー。シュウマツさんはなんて言ってるの?」
「時空間魔法はかなり高度なんだって……」
「意味わかんないね」
「だろう? まぁ気長にやるよ。シュウマツさんも手を貸してくれるらしい。もし安定させられたら、気軽に家に帰れるかもしれない」
「え? それはいいよ。どんと構えてて」
「え? いや……フーさんも月に帰りたいかな」「いいよゆっくりで」
かぶせ気味に拒否されてしまった。
「……そうだなぁ。僕も全然急いでるわけじゃないからゆっくりやろうかな?」
「それがいいよ」
うん、フーさん今はあんまり帰りたくないのかもしれない。
あまりにも満面の笑みが、それを裏付けている気がした。
だがまぁ、実現できれば夢のある技術であるのは間違いない。
僕も出来る出来ないはともかく、少しづつでも進めていければいいと思っていた。
「まぁ帰らないにしても、ワープが使えたら便利そうじゃない? フーさんはどこか行ってみたいところはあるかい?」
「え? うーん。そうだなぁ……地球かな? まだ行ったことないんだー」
「ああ、僕もないな。人類発祥の星だし行ってみたいよね」
僕としても話には聞いていたが、旅行先としては中々渋い。
しかし月からすると肉眼でも見ることが出来る母なる星は、とても身近なもののようである。
「私、月から見てた」
「寒冷期なんだっけ。かなり厳しい環境だって聞くけど?」
「うん。すごく寒いらしいよ。見た感じ白い星って感じかな?」
それはしんどそうだなと僕は思った。
実は地球勢力に、僕ら人類連合は含まれていない。
地球の環境が激変する際に、公共事業として宇宙開発が活発になり、僕らはそのまま宇宙に出た人類の子孫だ。
コロニーが独立して生活が出来るようになってくるとだんだんと疎遠になっていったわけだが、やはり自分達の故郷に思い入れもあり、人生で一度は訪れたい場所に地球は上がる、そんな場所だった。
「地球には……まだ見ぬカップ麺があるんだろうか?」
「そこはどうでもいいかなぁ」
「そう?……そっかー」
僕はすごく気になるんだけれど。
今となっては、地球はあまりコロニー育ちには縁はないが、月とは小競り合いが起こっていると聞く。
そして現在地球人を名乗っている人類は、月人とは違った進化をしていると聞いていた。
お湯を入れて3分。待ちに待たされ、その封印は解除された。
解き放たれた醤油の香る湯気は、あまりにも食欲をそそる刺激を脳にもたらし、唾液が口にあふれてゆく。
箸は作った。
そしてフルフェイスのヘルメットには食事時、口のところだけ開放するギミックまで組み込んだのは、この一杯のためと言っても過言ではない。
「……いただきます」
僕は手を合わせて感謝し、カップを掴む。
それから麺を救い上げ、一気に吸い上げた。
ズゾ! ズゾゾゾ!
至福!
ああ、カップ麺……。カップ麺でしか取れない栄養素は、確かにあった。
「カノー……どこから持ってきたのそんなもの?」
困惑しているフーさんに僕はスープを飲み切って頷く。
これはとうとうこのコロニーで最も価値のある宝物を披露する時が来たようだった。
「カップ麺が生る木があるから……味も完ぺきだよ」
「カップ麺が生る木?―――あ、私馬鹿にされてる!」
「違うよ、本当にあるんだよ。見てみるかい?」
「……いいでしょう。 付き合ってあげましょう」
仕方がないなぁと、子供のいたずらでも嗜めるようなフーさんを僕はカップ麺が沢山生った木まで案内した。
「ホラ。カップ麺の木だよ」
「ナニコレ気持ち悪い!」
「そんなことない。こんなに素晴らしい物見たことない」
「そ、そう?」
「そうだとも。君にも分けてあげよう。味も最高だよ」
ほんの少しでも理解を示してくれるなら、僕としてはとっておきのカップ麺をフーさんに分けることもやぶさかではない。
ゆくゆくは大量生産も視野に入れているが、今はたった一本の木からひっそりと収穫できる、お楽しみである。
収穫していくらかパック詰めしておいたそれをフーさんに渡すとフーさんは少しだけあきれ気味だった。
「新鮮なお野菜が沢山あるんだから。そっちを食べたらいいのに……」
「毎日カップ麺でも僕はいいけれどね。タンパク質はただでさえ不足がちなんだから、フーさんこそカップ麺おすすめだよ?」
「えぇ? でもカップ麺にたんぱく質沢山入ってたっけ?」
「……謎肉?」
「……サプリメントでもいいから飲んだ方がいいよ? カノーは眠る時間も不規則みたいだし……毎日何してるの?」
あれ? タンパク質謎肉じゃダメ? ダメか。それなら仕方がない。
隠すことでもないかと僕は試しにやり始めた研究を教えることにした。
「ワープの研究だよ。どうにか形に出来ないかなと思って。魔法でそういうことも出来るみたいだから」
「ワープ!? 魔法でそんなことまで出来るの!?」
随分フーさんは驚いていたが、僕の居た実験船の事故はおそらくワープ実験が原因っぽい。
シュウマツさんの話では時空振まで起こっていたという話だし、そんな技術はそう多くはなかった。
「うん。そうなんだよ。シュウマツさんの力が及ぶ範囲もこのコロニー周辺だけみたいだからどうにか長距離ワープを安定させられないかなってね」
元々ワープ技術は実現一歩手前まで来ていた。
しかし安定性や安全性は全然で、まともに移動出来なければ何の役にも立たない。
「そうなんだー。シュウマツさんはなんて言ってるの?」
「時空間魔法はかなり高度なんだって……」
「意味わかんないね」
「だろう? まぁ気長にやるよ。シュウマツさんも手を貸してくれるらしい。もし安定させられたら、気軽に家に帰れるかもしれない」
「え? それはいいよ。どんと構えてて」
「え? いや……フーさんも月に帰りたいかな」「いいよゆっくりで」
かぶせ気味に拒否されてしまった。
「……そうだなぁ。僕も全然急いでるわけじゃないからゆっくりやろうかな?」
「それがいいよ」
うん、フーさん今はあんまり帰りたくないのかもしれない。
あまりにも満面の笑みが、それを裏付けている気がした。
だがまぁ、実現できれば夢のある技術であるのは間違いない。
僕も出来る出来ないはともかく、少しづつでも進めていければいいと思っていた。
「まぁ帰らないにしても、ワープが使えたら便利そうじゃない? フーさんはどこか行ってみたいところはあるかい?」
「え? うーん。そうだなぁ……地球かな? まだ行ったことないんだー」
「ああ、僕もないな。人類発祥の星だし行ってみたいよね」
僕としても話には聞いていたが、旅行先としては中々渋い。
しかし月からすると肉眼でも見ることが出来る母なる星は、とても身近なもののようである。
「私、月から見てた」
「寒冷期なんだっけ。かなり厳しい環境だって聞くけど?」
「うん。すごく寒いらしいよ。見た感じ白い星って感じかな?」
それはしんどそうだなと僕は思った。
実は地球勢力に、僕ら人類連合は含まれていない。
地球の環境が激変する際に、公共事業として宇宙開発が活発になり、僕らはそのまま宇宙に出た人類の子孫だ。
コロニーが独立して生活が出来るようになってくるとだんだんと疎遠になっていったわけだが、やはり自分達の故郷に思い入れもあり、人生で一度は訪れたい場所に地球は上がる、そんな場所だった。
「地球には……まだ見ぬカップ麺があるんだろうか?」
「そこはどうでもいいかなぁ」
「そう?……そっかー」
僕はすごく気になるんだけれど。
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