宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第92話穏やかな日々(コロニーに穴は開いたけど)

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 さて、僕がしっかりと睡眠をとり、冴えわたった脳みそを手に入れたのは8時間ほど後の事だ。

 一度解散となった定例会は次の日、もう一度行われた。

 そこには約束通り、アウターを身に纏い巨大な剣を掲げた白熊さんの姿があった。

「これ使ってみたけど、切れ味がすごいんだ。竜でも金属でもバターみたいに切れるから怖いくらいでね」

「それは確かにすごい。さすが星の……まぁうん素晴らしい」

 普通剣で金属を切るなんてどんな達人だよと思うところだが、白熊さんの掲げる剣にはそうあっても不思議ではない凄味がある。

 ただ、とても切れ味のいい刃物という評価に待ったをかけたのはシュウマツさんだった。

「いや、ちょっと待ってほしい。この剣がそれくらいの性能なわけがないのだがね?」

「性能も何も、剣は切るためのものだよね?」

 白熊さんは当然のことを言うが、シュウマツさんの常識からすると必ずしもそういうわけではないようである。

「剣の形は、攻撃性のある概念なんだ。実態は高密度のエネルギー結晶みたいな感じで……こう、敵を一撃のもとに薙ぎ払う」

「どんな風に?」

「君達でいうと、ビーム的な奴だね」

「冗談? ……剣の意味とは?」

「さてね。まぁ私達の世界では、とても身近な武器だったのさ刃物は」

 咄嗟に物申したい衝動にかられた僕だったが、そういうことらしい。

 一般市民の僕からしても銃と刃物、どちらが身近な武器かと問われれば刃物と答えるかもしれない。

 しかしまぁ……ビームは出ないと思うが。

 今一反応の悪い僕らにシュウマツさんは実際に見せるべきと判断したようだった。

「……じゃあ少しやってみようか? では白熊さん。狂戦士化して、剣を構えてくれないか?」

「あ、ああ。わかった」

 白熊さんは魔法を使って巨大化し、アウターは変形する。

「その状態なら、体中の魔素が活性化しているからわかりやすいと思う。コツさえ掴めば、元の状態でも使えるはずだから練習してみるのもいいだろうね」

「魔素か……つまりそれをこの剣に流せばいいんだね?」

「すでにやり方はわかっているみたいだね。やはり勘がいい」

 白熊さんは深呼吸しながら剣を構える。

 すると刃の輝きがドンドン増してきて、周囲に黄金の粒子をまき散らし始めた。

 白熊さんの体も金色に輝き始めて、僕はハラハラしながらそれを眺めていると、シュウマツさんは合図した。

「今! 正面に剣を振れ!」

「!」

 自然な動きで、白熊さんは一歩踏み込む。

 そして振りかぶった剣を力強く振り下ろしたのだと―――思う。

 なぜはっきりわからなかったのかと言えば、めちゃくちゃに光り輝いていて目が眩んだからだ。

 ただ、ズンと腹に響くほどに空気が振動したのは分かった。

 僕は思わず目を閉じ、そして瞼の下からでもわかる光が収まった時、恐る恐る目を開けると大変なことになっていた。

「コロニーの外壁に穴が!」

「だ……大丈夫だ! 落ち着いて結界を張り直せば大丈夫! あっ結構大穴空いてるネ!」

「ネ!じゃないよ! 全然大丈夫じゃなさそう!」

「ど、どうしよう! これ! ボクのせいだよね!?」

 全員顔面蒼白の大騒動になった。

 剣の一振りはシュウマツさんの言った通りに一直線にビームを放ち、コロニーの外壁を直撃して大穴を開けていた。



「いやぁ焦った焦った。全員宇宙の藻屑になるところだった」

「本当だよ。聖剣を使う時は次からはコロニーの外にしよう……」

 何とか外壁の修復を終えた僕らはようやく人心地ついて、乾いた笑いを浮かべていた。

 フーさんも白熊さんも今頃、コロニーの中に影響がないか調べるために走り回っているだろう。

 オペ子さんも降ってわいたような大事故の処理にオーバーヒートしていても不思議じゃないので、後でクールダウンできる……何か冷却材でも持って行ってあげようか。

 そして、今回のデータは無駄なくきっちり活用しなければ、各方面からブーイングが飛んできそうだった。

「でもまぁ……聖剣ってやつをこの目で見れたのはよかったかな。おかげで白熊さんのパワーアップ案も、アイディアが固まりそうだよ」

 僕はそうシュウマツさんに言っておく。

 あえて口に出したのは、完成させるために自分を追い詰める、最後の宣言である。

 シュウマツさんはしかし、ぼんやり輝いていて嬉しそうではなかった。

「……しかし、ずいぶん気を張って頑張っているようだが、大丈夫かね?」

 心配そうなシュウマツさんに、どうやら僕は相当危なく見えるようだ。

 しまったなとは思うけれど、ここは頑張り時だと僕自身がそう決めていた。

「まぁ……大変だし。危ないものはない方がいいとは今でも思ってるよ? でも……」

「でも?」

「通信が回復しても、ゲートが開通しても、フーさんも白熊さんもまだここにいてくれているからね。きっとニライカナイコロニーを好きでいてくれていると思うんだ」

「……ああ、私もそう思うよ」

「だから、まぁ僕もできることはしたいんだよね」

「それが戦う力だと?」

「いや。守る備えさ。シュウマツさんだってだから剣を作ったんだろう? なら僕も少しは無茶もするさ」

「ふむ、そういうものかね?」

「そういうものだろうね。僕のやれることなんて些細な事だろうけど、何かしたいのさ。……まぁ万が一ということはあるんだろうから」

「そうだねぇ」

 しみじみと僕はそう思う。

 ただシュウマツさんも含めて漠然とした必要性は感じているはずだった。

 こんな宇宙の果てにいつ非常事態がやってくるかなんてわからないけれど、心穏やかな時間はなるべく長い方がいい。

 シュウマツさんもそうだといいなと、僕は穏やかに笑いながら大きな大樹を眺めた。
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