Election war

あかかがや

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Election war 予備選挙

Election war Epi.1 告示日

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プロローグ
 北海道札幌市にある、公立高校その名も「札幌市立福住ふくずみ高校」。

 生徒数は60ある市内の高校の中でも突出して多い1116人で、偏差値も65と高く人気の進学校である。
 設立は1898年と古く、約120年の歴史の中で独自のルールや慣例が編み出されてきたため、設立されてまだ歴史の浅い高校が多い札幌市の中では独特の雰囲気をまとっている。
 中でも一番独特と言われているのが生徒会選挙では生徒会長一人だけを選出しその他の副会長などの役員は生徒会長が指名するという制度。
 この制度によって、毎年生徒会選挙には多くの候補者が乱立し激しい選挙戦を繰り広げていた。
 この物語はそんな福住高校の生徒会選挙に立候補した1年5組在籍の木内海斗きのうちかいとを主人公に展開していく。
  


 
 9月1日、普通の学生にとってはただの日付としか感じないかもしれないが、この学校に在籍している生徒なら少し緊張を覚えるような日だ。この高校では9月1日に選挙の告示を行うと決められている。たとえその日が休日でも祝日でも9月1日に行われる。昔は土日関係なく登校していたからという理由でこうなっているらしい。たまたま今年は平日だったからよかった。
 そしてこの日は、僕が2年前から待っていた日でもある。
 今は帰りのHR、担任の辻先生が会の進行をしていく。
 「えー、では連絡事項は以上です。何かある人いるか?」
 選挙管理委員の藤村が手を上げた。
 すぐさま辻先生から指名され椅子から立ち上がって話し始めた。
 「選挙管理委員会です。今日から生徒会選挙の立候補の受付を行います、立候補したい人は僕から立候補届をあげるのであとで来てください。書いた人は担任の先生の署名をもらって僕に提出してください。締め切りは今週の5日金曜日です。次の週の8日月曜日に立候補者の名簿を配り。その後各候補者の選挙運動が始まります。そして。29日月曜日に投票を行い。次の日の30日火曜日に結果発表となります。詳しくは生徒手帳の5ページ、選挙規則をご覧ください。」
 話し終えた藤村は以上ですと言って椅子に座った。
 「他にあるやつはいないなー?じゃあ号令お願い。」

 「気を付け」

 「「さようなら」」

  帰りのHRが終わった。
 早速藤村から立候補届をもらった。A4サイズの紙に年組名前の記入欄と担任の署名欄があるだけの質素なつくりだ、一応生徒会選挙と選挙管理委員会という題名はついているが紙の下半分は何も書かれていない。
 早速名前を書き込もうとしたとき、目の前に見慣れた男が現れた。

 「おーい、きうち!一緒に帰ろー」
 「僕の名前はきのうちだ!そして栄太、お前と帰りたくない!!」
 「いや帰り道一緒だし」

 こいつの名前は笹塚栄太、クラスが一緒の友達である。
 いつも僕の名前をわざと間違えていじってくるし、馬鹿だし間抜けだしで最悪だけど、ここぞというときにはかっこいい奴だから中学校時代から仲良くさせてもらってる。
 
 「わかったわかった、もう少しやることあるから玄関でまっててくれ。」
 「りょーかい」
 玄関に向かうため教室を出て行った栄太を見届けてからもう一度立候補届に目を向け直し、必要事項を書き込み残すは担任の署名のみとなった。
 
 それなりに時間が経っていたから教室には僕と担任の辻先生だけ、そして一呼吸置いてから辻先生のいる教卓の前に歩き出した。

 辻先生は、パソコンをいじっていて僕には気づいていない。

 「先生。」

 「木内か、どうした?」

 先生はさっきまでいじっていたパソコンから手を放し、視線もパソコンのディスプレイから僕の方へと変わっていた。

 「先生にどうしても報告したいこととお願いしたいことがあります。」

 「おう、なんだ?いじめか?」

 そう言って先生は眉をひそめ教卓から身を乗り出して聞いて来た。

 そういうことではないので違います。と言って教卓の椅子に座り直してもらった。
 
 「ならなんなんだ?」
 
 いじめの件は否定したので先生も何の件か何となくわかったのだろう、少し演技っぽく言ってきた。
 この会話の流れは学校の慣例の一つであるからだ。選挙の告示日に立候補者が担任の先生とかわす決まった会話。 
 福住高校126年の歴史の中のいつかに生まれた一種のである。
 
 「ここにご報告します。僕木内海斗は第100代生徒会長に立候補致します。」
 
 「分かった。ぜひ頑張ってくれ。」
 
 こうして僕、木内海斗の選挙戦が始まった。
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