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【R18】同じ夜、すれ違う想い
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翌日の夜。
王城の回廊は静まり返り、燭台の炎だけが淡く揺れていた。
厚い絨毯が音を吸い込み、ソフィの歩みはまるで夢の中のように頼りない。
耳の奥で脈打つ鼓動だけが、彼女がまだ現実にいることを知らせていた。
ロランの寝所の前に立つ。
一度だけ、深く息を吸う。
そして、ためらいを断ち切るように、そっと扉を叩いた。
「……誰だ」
低く抑えた声が返り、胸が跳ねる。
「……ソフィです」
一瞬の間。
扉が開き、ロランが姿を現した。
薄明かりの中で、驚いたように目を見開いている。
「ソフィ? こんな時間に……」
「お話があります」
声はわずかに震えていたが、言葉ははっきりとしていた。
ロランは何かを言いかけ、結局それを飲み込み、無言で身を引く。
室内に足を踏み入れ、扉が閉まる。
その音が、逃げ道を断つ合図のように響いた。
部屋は、薄暗い橙色の光が家具の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。
昨夜とは違う。
今夜は、互いに背を向けたままでは終われない空気があった。
ソフィのナイトドレスは胸元が大きく開き、ガウンを羽織っていても隠し切れない。
ロランはそれに気づいた瞬間、反射的に視線を逸らした。
その仕草に、ソフィの胸が小さく痛む。
だが彼女は俯かなかった。
両手を胸の前で握りしめ、逃げずに顔を上げる。
「……私が好きなのは、ロラン様です」
飾り気のない、率直な言葉。
勇気を振り絞った、嘘のない告白だった。
だが――
ロランは、それを受け取ることができなかった。
――建前だ。
そう思った瞬間、喉の奥が軋む。
王太子妃としての立場。
昨夜の出来事。
自分を安心させるために、言わされている言葉。
彼はそう結論づけてしまう。
「……無理をしなくていい」
低く、抑えた声だった。
感情が滲まない様、必死に抑え込んでいる。
「俺は……わかっている」
何を、とは言わなかった。
だがその曖昧さが、ソフィには残酷だった。
ロランは彼女と視線を合わせないまま、ゆっくりと踵を返す。
「待って、ロラン様」
呼び止める声は、ほとんど縋るようだった。
振り返ろうとするその背に、ソフィは焦りに突き動かされるように腕を回す。
背中に伝わる体温。
思いのほか近い距離に、ロランの足が止まった。
抱きしめてしまったはいいものの、次の言葉が見つからない。
胸の内は焦りと恐怖でいっぱいなのに、喉が強張り、声にならなかった。
――信じてほしい。白い結婚なんて嫌。でも、どうすれば……。
沈黙に耐え切れず、追い詰められた末にこぼれ落ちた言葉は、彼女自身の意図とはかけ離れていた。
「……王太子妃として、果たすべきことだと思っています」
言い終えた瞬間、ソフィは自分の言葉に息を呑んだ。
それが、彼にどう聞こえるかを考える余裕はなかった。
ただ、取り返しのつかない一言だったと、すぐに理解してしまう。
その背中越しに、ロランの中で何かがはっきりと壊れる音がした。
――やはり、そういうことか。
彼女は“王太子妃としての役目”を果たそうとしている。
心ではなく、立場として。
そう思った瞬間、胸にこみ上げたのは失望だけではなかった。
背中に押し当てられた柔らかさと、必死に抑えられている体温が、彼の理性を激しく揺さぶる。
――こんな衝動を抱いてしまう自分が、どうしようもなく醜い。
心まで奪う資格はない。
だが、彼女が“役目”として差し出すのなら――
それを拒む理由も、もう見つからなかった。
ロランは振り向きざま、ソフィの細い腰を抱き寄せた。
逃げ場を塞ぐように、折れてしまいそうなほど強く。
「……後悔するなよ」
低く、突き放すような声だった。
――後悔は、していない。
けれど……彼が私を抱く理由が“義務”なのだとしたら。
ソフィの胸に、冷たい痛みが走る。
ロランは彼女を抱き上げ、ほとんど無言のまま寝台へと運ぶ。
静かに見下ろされたその先で、ソフィは視線の置き場を失い、耐え切れずに目を伏せた。
――また、目を逸らされた。
押さえた手の下で、彼女の身体が小さく震えている。
その震えを、ロランは誤って受け取った。
――好きでもない相手に、抱かれる恐怖。
一瞬のためらいの後、ロランは彼女を起こし、枕元にあった薄い布を取る。
そして、何かを言い聞かせるように、そっとその瞳を覆った。
「……好きな相手にされていると思え」
その言葉に、ソフィは悟った。
まだ、何ひとつ伝わっていない。
「ロラン様、私――」
必死に声を振り絞ろうとした、その瞬間。
「何も言うな」
低く、拒むような声が重なった。
言葉を封じられ、ソフィは唇を震わせたまま、沈黙するしかなかった。
視界を塞がれたことで、室内の静けさが際立った。
燭台の炎がかすかに弾ける音だけが、夜の深さを知らせている。
闇に放り出された彼女は、耳元で衣擦れの音を聞く。
やがて、冷たい指先が夜着の紐を解き、滑らかな絹が肌を滑り落ちていく感覚に、背筋がびくりと震えた。
だが、不思議と恐怖よりも、別の感覚が先に訪れた。
見えないことで、顔を見ずに済む――その安堵と、同時に彼の本心が見えないという絶望。
ロランの指が、ソフィの濡れた唇に触れる。
――ここだけは、彼女の愛する者のものだ。
彼は最後まで、口づけはしなかった。
その唇を奪うことは、心を奪うことに等しいと、どこかでわかっていたから。
代わりに触れた指を、ロランは自らの唇に当て、慈しむように口づけた。
視界を奪われた分、息遣い、吐息の熱、指の微かな震えが鮮明に肌に刻まれる。
ソフィの身体は、知らぬ間に熱を帯び、疼き始めた。
――想像より、ずっと綺麗だ。
白い肌に、隠されていた桜色の頂が露わになると、ロランは短く息を呑んだ。
大きな手のひらが、白く柔らかな膨らみを包み込み、親指でその頂を優しくなぞる。
柔らかな舌先が、敏感な先端を優しく包み、甘く愛撫する。
「あっ……んっ」
いつもと違う艶っぽい声が、ソフィの口から漏れた。
その反応に、ロランの下半身に熱がこもる。
「声、我慢するな」
耳元で囁かれる吐息混じりの声でさえ、今の彼女には甘い刺激だった。
ロランの右手は太ももの内側をゆっくり這い、その聖域へと忍び寄る。
震える膝を割り、指先がひたひたと濡れた入口に触れた。
「……こんなに熱くなって……義務とは思えないな」
その言葉に、ソフィの心がきゅっと締めつけられる。
――違うのに。
違う、と言いたいのに。
けれど、声は届かない。
ロランは指先で、執拗に愛撫を続けた。
ソフィの背中が弓なりに反り、シーツを握りしめる指に力がこもる。
目隠しされた闇の中で、触れられる場所すべてが異様に鮮明に感じられ、快感が波のように全身を駆け巡った。
ロランの指が中を撫で、ゆっくりと動き始める。
指を動かすたびに、みだらな音が部屋中に響いた。
ロランはその音を楽しむように、時には早く、時には深く抉るように緩急をつけて動かしていく。
「あんっ……あ、あぁぁ!」
ソフィはシーツをぎゅっと握りしめ、襲いくる快感の波に翻弄される。
頭の中は白く濁り、自分が「役目」で抱かれていることさえ忘れ、ただこの熱い波に溺れていた。
どれほどの時間が過ぎたのか、わからなかった。
夜が深まったのか、それとも、ほんの刹那だったのか。
ロランは指を引き抜き、自身の熱をソフィの入り口にあてがう。
一瞬、彼女の身体が固まる。
「――っ!」
痛みに顔を歪める彼女を見て、ロランは本能を抑え、腰を引こうとした。
だがソフィは、それを拒むように、必死にその腕を掴む。
「……やめようか?」
その言葉に、安堵より先に、胸が締めつけられた。
――離れてほしくない、と思ってしまった自分に、ソフィは気づいてしまう。
「や、やめないで……」
かすれたその声に、ロランの理性は再び溶けた。
ソフィを壊さないように抱きしめ、彼女の呼吸に合わせて、一寸ずつ、その深淵へと沈んでいく。
――……入った。
これで、彼女は役目を果たしたと思うだろう。
ロランは一つ大きく息を吐き、彼女の中に自分という証を刻み込んだ。
慣れるまで動かずに待つ。
やがて、ソフィの腰が、空白を埋めるように微かに揺れ始めた。
ロランはゆっくりと、そして深く、腰を進める。
「ん、あ……あっ……あんっ」
突かれるたびに、ソフィの嬌声が狂おしくあがる。
次第に強く腰を打ち付け、速度を増していく。
二人の熱が重なり、互いの吐息が絡み合う。
「……っ!」
限界まで張り詰めた弦が切れるように、二人は同時に絶頂を迎えた。
ソフィはびくびくと身体を震わせながら、余韻に浸る。
ロランは彼女に覆いかぶさり、荒くなった息を整えながら、ソフィの髪に顔を埋めた。
やがてロランが身体を引き抜くと、二人をつないでいた熱が、静かに失われる。
身体を離した途端、シーツの冷たさが否応なしに現実を引き戻した。
燭台の炎は、いつの間にか小さくなっている。
ロランは、言葉を探すように唇を噛んだ。
出てきたのは、ひどく小さな一言だけだった。
「……すまない」
それが何に対する謝罪なのか、ソフィにはわからなかった。
抱かれたことか。
信じてもらえなかったことか。
それとも、愛されたと錯覚してしまった、自分自身に対してか。
目隠しが外されたとき、ロランはもう彼女を見ていなかった。
一度も、口づけはなかった。
その事実だけが、はっきりと残る。
互いに背を向けたまま、同じ夜を越えながら、二人は同時に確信していた。
――相手の心は自分には向いていない。
すれ違いは、まだ終わらない。
王城の回廊は静まり返り、燭台の炎だけが淡く揺れていた。
厚い絨毯が音を吸い込み、ソフィの歩みはまるで夢の中のように頼りない。
耳の奥で脈打つ鼓動だけが、彼女がまだ現実にいることを知らせていた。
ロランの寝所の前に立つ。
一度だけ、深く息を吸う。
そして、ためらいを断ち切るように、そっと扉を叩いた。
「……誰だ」
低く抑えた声が返り、胸が跳ねる。
「……ソフィです」
一瞬の間。
扉が開き、ロランが姿を現した。
薄明かりの中で、驚いたように目を見開いている。
「ソフィ? こんな時間に……」
「お話があります」
声はわずかに震えていたが、言葉ははっきりとしていた。
ロランは何かを言いかけ、結局それを飲み込み、無言で身を引く。
室内に足を踏み入れ、扉が閉まる。
その音が、逃げ道を断つ合図のように響いた。
部屋は、薄暗い橙色の光が家具の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。
昨夜とは違う。
今夜は、互いに背を向けたままでは終われない空気があった。
ソフィのナイトドレスは胸元が大きく開き、ガウンを羽織っていても隠し切れない。
ロランはそれに気づいた瞬間、反射的に視線を逸らした。
その仕草に、ソフィの胸が小さく痛む。
だが彼女は俯かなかった。
両手を胸の前で握りしめ、逃げずに顔を上げる。
「……私が好きなのは、ロラン様です」
飾り気のない、率直な言葉。
勇気を振り絞った、嘘のない告白だった。
だが――
ロランは、それを受け取ることができなかった。
――建前だ。
そう思った瞬間、喉の奥が軋む。
王太子妃としての立場。
昨夜の出来事。
自分を安心させるために、言わされている言葉。
彼はそう結論づけてしまう。
「……無理をしなくていい」
低く、抑えた声だった。
感情が滲まない様、必死に抑え込んでいる。
「俺は……わかっている」
何を、とは言わなかった。
だがその曖昧さが、ソフィには残酷だった。
ロランは彼女と視線を合わせないまま、ゆっくりと踵を返す。
「待って、ロラン様」
呼び止める声は、ほとんど縋るようだった。
振り返ろうとするその背に、ソフィは焦りに突き動かされるように腕を回す。
背中に伝わる体温。
思いのほか近い距離に、ロランの足が止まった。
抱きしめてしまったはいいものの、次の言葉が見つからない。
胸の内は焦りと恐怖でいっぱいなのに、喉が強張り、声にならなかった。
――信じてほしい。白い結婚なんて嫌。でも、どうすれば……。
沈黙に耐え切れず、追い詰められた末にこぼれ落ちた言葉は、彼女自身の意図とはかけ離れていた。
「……王太子妃として、果たすべきことだと思っています」
言い終えた瞬間、ソフィは自分の言葉に息を呑んだ。
それが、彼にどう聞こえるかを考える余裕はなかった。
ただ、取り返しのつかない一言だったと、すぐに理解してしまう。
その背中越しに、ロランの中で何かがはっきりと壊れる音がした。
――やはり、そういうことか。
彼女は“王太子妃としての役目”を果たそうとしている。
心ではなく、立場として。
そう思った瞬間、胸にこみ上げたのは失望だけではなかった。
背中に押し当てられた柔らかさと、必死に抑えられている体温が、彼の理性を激しく揺さぶる。
――こんな衝動を抱いてしまう自分が、どうしようもなく醜い。
心まで奪う資格はない。
だが、彼女が“役目”として差し出すのなら――
それを拒む理由も、もう見つからなかった。
ロランは振り向きざま、ソフィの細い腰を抱き寄せた。
逃げ場を塞ぐように、折れてしまいそうなほど強く。
「……後悔するなよ」
低く、突き放すような声だった。
――後悔は、していない。
けれど……彼が私を抱く理由が“義務”なのだとしたら。
ソフィの胸に、冷たい痛みが走る。
ロランは彼女を抱き上げ、ほとんど無言のまま寝台へと運ぶ。
静かに見下ろされたその先で、ソフィは視線の置き場を失い、耐え切れずに目を伏せた。
――また、目を逸らされた。
押さえた手の下で、彼女の身体が小さく震えている。
その震えを、ロランは誤って受け取った。
――好きでもない相手に、抱かれる恐怖。
一瞬のためらいの後、ロランは彼女を起こし、枕元にあった薄い布を取る。
そして、何かを言い聞かせるように、そっとその瞳を覆った。
「……好きな相手にされていると思え」
その言葉に、ソフィは悟った。
まだ、何ひとつ伝わっていない。
「ロラン様、私――」
必死に声を振り絞ろうとした、その瞬間。
「何も言うな」
低く、拒むような声が重なった。
言葉を封じられ、ソフィは唇を震わせたまま、沈黙するしかなかった。
視界を塞がれたことで、室内の静けさが際立った。
燭台の炎がかすかに弾ける音だけが、夜の深さを知らせている。
闇に放り出された彼女は、耳元で衣擦れの音を聞く。
やがて、冷たい指先が夜着の紐を解き、滑らかな絹が肌を滑り落ちていく感覚に、背筋がびくりと震えた。
だが、不思議と恐怖よりも、別の感覚が先に訪れた。
見えないことで、顔を見ずに済む――その安堵と、同時に彼の本心が見えないという絶望。
ロランの指が、ソフィの濡れた唇に触れる。
――ここだけは、彼女の愛する者のものだ。
彼は最後まで、口づけはしなかった。
その唇を奪うことは、心を奪うことに等しいと、どこかでわかっていたから。
代わりに触れた指を、ロランは自らの唇に当て、慈しむように口づけた。
視界を奪われた分、息遣い、吐息の熱、指の微かな震えが鮮明に肌に刻まれる。
ソフィの身体は、知らぬ間に熱を帯び、疼き始めた。
――想像より、ずっと綺麗だ。
白い肌に、隠されていた桜色の頂が露わになると、ロランは短く息を呑んだ。
大きな手のひらが、白く柔らかな膨らみを包み込み、親指でその頂を優しくなぞる。
柔らかな舌先が、敏感な先端を優しく包み、甘く愛撫する。
「あっ……んっ」
いつもと違う艶っぽい声が、ソフィの口から漏れた。
その反応に、ロランの下半身に熱がこもる。
「声、我慢するな」
耳元で囁かれる吐息混じりの声でさえ、今の彼女には甘い刺激だった。
ロランの右手は太ももの内側をゆっくり這い、その聖域へと忍び寄る。
震える膝を割り、指先がひたひたと濡れた入口に触れた。
「……こんなに熱くなって……義務とは思えないな」
その言葉に、ソフィの心がきゅっと締めつけられる。
――違うのに。
違う、と言いたいのに。
けれど、声は届かない。
ロランは指先で、執拗に愛撫を続けた。
ソフィの背中が弓なりに反り、シーツを握りしめる指に力がこもる。
目隠しされた闇の中で、触れられる場所すべてが異様に鮮明に感じられ、快感が波のように全身を駆け巡った。
ロランの指が中を撫で、ゆっくりと動き始める。
指を動かすたびに、みだらな音が部屋中に響いた。
ロランはその音を楽しむように、時には早く、時には深く抉るように緩急をつけて動かしていく。
「あんっ……あ、あぁぁ!」
ソフィはシーツをぎゅっと握りしめ、襲いくる快感の波に翻弄される。
頭の中は白く濁り、自分が「役目」で抱かれていることさえ忘れ、ただこの熱い波に溺れていた。
どれほどの時間が過ぎたのか、わからなかった。
夜が深まったのか、それとも、ほんの刹那だったのか。
ロランは指を引き抜き、自身の熱をソフィの入り口にあてがう。
一瞬、彼女の身体が固まる。
「――っ!」
痛みに顔を歪める彼女を見て、ロランは本能を抑え、腰を引こうとした。
だがソフィは、それを拒むように、必死にその腕を掴む。
「……やめようか?」
その言葉に、安堵より先に、胸が締めつけられた。
――離れてほしくない、と思ってしまった自分に、ソフィは気づいてしまう。
「や、やめないで……」
かすれたその声に、ロランの理性は再び溶けた。
ソフィを壊さないように抱きしめ、彼女の呼吸に合わせて、一寸ずつ、その深淵へと沈んでいく。
――……入った。
これで、彼女は役目を果たしたと思うだろう。
ロランは一つ大きく息を吐き、彼女の中に自分という証を刻み込んだ。
慣れるまで動かずに待つ。
やがて、ソフィの腰が、空白を埋めるように微かに揺れ始めた。
ロランはゆっくりと、そして深く、腰を進める。
「ん、あ……あっ……あんっ」
突かれるたびに、ソフィの嬌声が狂おしくあがる。
次第に強く腰を打ち付け、速度を増していく。
二人の熱が重なり、互いの吐息が絡み合う。
「……っ!」
限界まで張り詰めた弦が切れるように、二人は同時に絶頂を迎えた。
ソフィはびくびくと身体を震わせながら、余韻に浸る。
ロランは彼女に覆いかぶさり、荒くなった息を整えながら、ソフィの髪に顔を埋めた。
やがてロランが身体を引き抜くと、二人をつないでいた熱が、静かに失われる。
身体を離した途端、シーツの冷たさが否応なしに現実を引き戻した。
燭台の炎は、いつの間にか小さくなっている。
ロランは、言葉を探すように唇を噛んだ。
出てきたのは、ひどく小さな一言だけだった。
「……すまない」
それが何に対する謝罪なのか、ソフィにはわからなかった。
抱かれたことか。
信じてもらえなかったことか。
それとも、愛されたと錯覚してしまった、自分自身に対してか。
目隠しが外されたとき、ロランはもう彼女を見ていなかった。
一度も、口づけはなかった。
その事実だけが、はっきりと残る。
互いに背を向けたまま、同じ夜を越えながら、二人は同時に確信していた。
――相手の心は自分には向いていない。
すれ違いは、まだ終わらない。
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