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episode7
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翌日、いつもの癖で俺は屋敷の訓練場に足を向けた。
「おはよう、爺。今日も剣を振って鍛えてるんだね」
俺は朝から汗を身体中に浮かべている爺にそう言った。
「お、レインか! 久しぶりじゃの。今日も一戦交えてみるか?」
「もちろんだよ!」
そう言って始めようとすると訓練場の外がガヤガヤとうるさかなっていることに気付いた。
「おぼっちゃま~。私との約束を覚えていらっしゃらないんですか?」
ニコニコ顔で俺の方を向いて声をかけてきたのは公爵家筆頭メイド長のフランカだった。
顔は笑っているのに目の奥の光がないのだ。それを見た俺は鳥肌が立っていることに気付いた。
「あ、ああ。何のことだか分からないんだが…。お前と約束などした覚えも……あったわ」
そう、昨日父上にフランカに公爵家に相応しい礼節を学べと指示があった。
まさか、忘れていたとは、不覚だ。
「あ、お気づきになられましたか。しかし許すわけには参りませんよ。では大旦那様。おぼっちゃまは私が預かりますのでお気になさらず」
「そ、そうか。それは残念だな。久しぶりに剣を交えるのを楽しみにしておったのに……」
それを聞いたフランカは爺に笑って言った。
「なにか問題でも?」
「い、いや何もない。あ、そういえば用事を思い出した! それではわしはこれで失礼する」
そう言って爺は足早に訓練場を去っていった。
どうやら爺にも勝てない相手はいるらしい。
「それではおぼっちゃま、ついてきて下さい。覚悟しておいて下さいな」
「わ、分かったよ……」
そうして俺は一週間みっちりと礼節をニコニコと笑っているフランカに叩き込まれた。
そうして一週間後、俺は死んだ目をしながら従者であるフラーニャと一緒に馬車で帝都へ向かった。
人生で初めて恐怖に支配され続けた一週間だった。もう二度とあんなのはごめんだ。フランカには絶対に変な真似はしないでおこう。何されるか分からないし。
まあ、フランカのおかげで一通りの礼節はきっちりと身体にも馴染んでいるし、大丈夫だろう。
◇
数日後。
俺たちは帝都についた後、これから入学する帝立フォーレン学院に向かった。帝国最高峰の学術機関であるこの学院は貴族の子息、子女はもちろん、難しい試験で選りすぐられた平民からの入学生がいる。
貴族は家でも勉強ができる設備が整っている事も多いので入学試験はパスなのだ。
「ここが帝都か」
「ええ。南都とはまた違った雰囲気ですね。上品というか、なんというか」
俺とフラーニャは道中少し寄り道してみたりした。なかなか経験できない事なので楽しかった。
数十分、歩いていると目的の学院が見えてきた。
大きな門が学院の威厳を感じさせる。頑丈な作りでなおかつその中に美しい模様が施されている。
俺たちは門を潜り、学院の入学手続きをするため、学院長室に向かった。
案内板などを見て辿り着き、俺はノックする。
「入学手続きをしにまいりました。フォイエル公爵家が子息、レイン=フォイエルでございます」
「入りたまえ」
その指示に従い、俺とフラーニャは部屋に入った。
なお、フラーニャは従者という扱いになっている。そのため俺の後方に静かに控えている。貴族の生徒は皆、一人か二人くらい従者を従えている。
「久しぶりだね。レイン君」
そう言ったのは、金髪ロングヘアでおまけに特大メロンが二つついているナイスバディな美女だった。
「お久しぶりです。シャーリーさん」
そう、この美女、俺の父の妹である。つまりは叔母だ。
いつ見ても綺麗な人で、歳が止まっているようだ。
シャーリーさんは魔法の研究の成果が認められ、皇帝陛下に学院の学院長に任命された。
具体的には、常時魔力灯の開発、改良だ。
先日見かけた街灯はシャーリーさんが研究し開発したことにより帝国中に広まっている。
それだけ凄い人なのだ。俺の尊敬する人物の一人である。
「後ろの子、確かフラーニャちゃんだっけ?」
「はい、フラーニャと申します。レイン様の専属メイドとして日々働いておりましたが、この学院入学を機に従者となりました」
「あはは、あんまり硬くならなくていいよ。フラーニャちゃん」
「いえ、お気になさらず」
「そ、そっか」
なんだかすこしシャーリーさんが悲しそうな顔をした。
話を変えるために俺は本題を話す。
「シャーリーさん。入学の手続きの事なんですが……」
「あ、もう終わってるから大丈夫だよ」
「そうですか。ありがとうございます。それでは用事も終わりましたので、僕たちは帝都にある屋敷に向かいます。何かあればそちらに連絡ください」
「分かったよ。入学式は一週間後だからそれまで帝都を楽しんでね。最近は少しきな臭いから気をつけてね」
恐らく先日の一件だろう。謎の魔法士が何かしてくるかもしれないからな。改めて気を引き締め直さなければならない。
「ご忠告ありがとうございます。それでは」
そうして俺たちは帝都にある屋敷に向かった。
「おはよう、爺。今日も剣を振って鍛えてるんだね」
俺は朝から汗を身体中に浮かべている爺にそう言った。
「お、レインか! 久しぶりじゃの。今日も一戦交えてみるか?」
「もちろんだよ!」
そう言って始めようとすると訓練場の外がガヤガヤとうるさかなっていることに気付いた。
「おぼっちゃま~。私との約束を覚えていらっしゃらないんですか?」
ニコニコ顔で俺の方を向いて声をかけてきたのは公爵家筆頭メイド長のフランカだった。
顔は笑っているのに目の奥の光がないのだ。それを見た俺は鳥肌が立っていることに気付いた。
「あ、ああ。何のことだか分からないんだが…。お前と約束などした覚えも……あったわ」
そう、昨日父上にフランカに公爵家に相応しい礼節を学べと指示があった。
まさか、忘れていたとは、不覚だ。
「あ、お気づきになられましたか。しかし許すわけには参りませんよ。では大旦那様。おぼっちゃまは私が預かりますのでお気になさらず」
「そ、そうか。それは残念だな。久しぶりに剣を交えるのを楽しみにしておったのに……」
それを聞いたフランカは爺に笑って言った。
「なにか問題でも?」
「い、いや何もない。あ、そういえば用事を思い出した! それではわしはこれで失礼する」
そう言って爺は足早に訓練場を去っていった。
どうやら爺にも勝てない相手はいるらしい。
「それではおぼっちゃま、ついてきて下さい。覚悟しておいて下さいな」
「わ、分かったよ……」
そうして俺は一週間みっちりと礼節をニコニコと笑っているフランカに叩き込まれた。
そうして一週間後、俺は死んだ目をしながら従者であるフラーニャと一緒に馬車で帝都へ向かった。
人生で初めて恐怖に支配され続けた一週間だった。もう二度とあんなのはごめんだ。フランカには絶対に変な真似はしないでおこう。何されるか分からないし。
まあ、フランカのおかげで一通りの礼節はきっちりと身体にも馴染んでいるし、大丈夫だろう。
◇
数日後。
俺たちは帝都についた後、これから入学する帝立フォーレン学院に向かった。帝国最高峰の学術機関であるこの学院は貴族の子息、子女はもちろん、難しい試験で選りすぐられた平民からの入学生がいる。
貴族は家でも勉強ができる設備が整っている事も多いので入学試験はパスなのだ。
「ここが帝都か」
「ええ。南都とはまた違った雰囲気ですね。上品というか、なんというか」
俺とフラーニャは道中少し寄り道してみたりした。なかなか経験できない事なので楽しかった。
数十分、歩いていると目的の学院が見えてきた。
大きな門が学院の威厳を感じさせる。頑丈な作りでなおかつその中に美しい模様が施されている。
俺たちは門を潜り、学院の入学手続きをするため、学院長室に向かった。
案内板などを見て辿り着き、俺はノックする。
「入学手続きをしにまいりました。フォイエル公爵家が子息、レイン=フォイエルでございます」
「入りたまえ」
その指示に従い、俺とフラーニャは部屋に入った。
なお、フラーニャは従者という扱いになっている。そのため俺の後方に静かに控えている。貴族の生徒は皆、一人か二人くらい従者を従えている。
「久しぶりだね。レイン君」
そう言ったのは、金髪ロングヘアでおまけに特大メロンが二つついているナイスバディな美女だった。
「お久しぶりです。シャーリーさん」
そう、この美女、俺の父の妹である。つまりは叔母だ。
いつ見ても綺麗な人で、歳が止まっているようだ。
シャーリーさんは魔法の研究の成果が認められ、皇帝陛下に学院の学院長に任命された。
具体的には、常時魔力灯の開発、改良だ。
先日見かけた街灯はシャーリーさんが研究し開発したことにより帝国中に広まっている。
それだけ凄い人なのだ。俺の尊敬する人物の一人である。
「後ろの子、確かフラーニャちゃんだっけ?」
「はい、フラーニャと申します。レイン様の専属メイドとして日々働いておりましたが、この学院入学を機に従者となりました」
「あはは、あんまり硬くならなくていいよ。フラーニャちゃん」
「いえ、お気になさらず」
「そ、そっか」
なんだかすこしシャーリーさんが悲しそうな顔をした。
話を変えるために俺は本題を話す。
「シャーリーさん。入学の手続きの事なんですが……」
「あ、もう終わってるから大丈夫だよ」
「そうですか。ありがとうございます。それでは用事も終わりましたので、僕たちは帝都にある屋敷に向かいます。何かあればそちらに連絡ください」
「分かったよ。入学式は一週間後だからそれまで帝都を楽しんでね。最近は少しきな臭いから気をつけてね」
恐らく先日の一件だろう。謎の魔法士が何かしてくるかもしれないからな。改めて気を引き締め直さなければならない。
「ご忠告ありがとうございます。それでは」
そうして俺たちは帝都にある屋敷に向かった。
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