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第6章
70.呪われた少女と美味しい魔物(1)
キュリエルと別れ、森の家の庭に瞬間移動し、リディたちが待つ家へ入る。
「ただいまー」
「ん、おかえり」
「今日は変わったことはなかった?」
「ん、野菜収穫した」
「そっか……私はあったんだよね」
「ん……なに?」
とりあえず、ソファに座りつつ
「あのね、街のなかにある家を買いました」
「……家」
「うん、色々あったんだけど……その家には精霊がいてね。お願いされて根負けしちゃった」
「……ん、エナはそっちに住むの?」
「ううん、そうじゃないよ……まぁ、時々は泊まるかもしれないけど、この家に住むよ」
「ん、よかった」
「うん。それに街なかに家ができたら直接瞬間移動できるようになったから便利だよー」
「ん」
「今度、精霊……キュリエルって言うんだけど……紹介するね」
「ん、わかった」
ミートパイの美味しさに目覚めてから、親父さんによく頼むようになったパイやスープなど夕飯の用意をしつつ
「あ、そうだ。今日カーラさんがそろそろ羽をお願いしますって言ってたよ」
「ん、でもあんまり溜まってない」
こらこら、ブラン……抜かなくていいから。ハゲちゃうから。
「そうかー」
「でも、今日仕留めた魔物持っていく。でも大きいから……どうしよう……」
「ん? 変わったことはなかったんじゃないの?」
「ん……今日野菜収穫してたらエナの結界のすぐ外に弱ってる魔物がいたからブランと一緒に仕留めた。今、家の裏に置いてある……重たかった」
「そ、そう……」
あれ、これってまたマルガスさんに呆れられるやつかな?
「ちなみに、なんの魔物かな?」
「よくわかんない……でっかい熊」
ま、まさかのブラッドベアですかね!?じゅるり……
「ねぇ、ちなみに解体とかはした?」
「ううん……そのまま」
「よし、ご飯食べたら見に行ってもいい?」
「ん」
はやる気持ちを抑え、美味しいご飯を満喫……もぐもぐ、うまー。
リディにランプを渡し、《灯》をつける。魔物が置いてあると言う場所へ行くと結界ギリギリの場所に引きずり込まれていた。こりゃあ、運ぶのすごく大変だったはず……
早速、『女神の心眼』で確かめる。
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〈ブラッドベアの亡骸〉
鋭い牙と爪を持ち好戦的で危険な魔物。
素材は防具や武器になったり魔法の触媒や魔道具に使用されることもあるため、高価買い取りされている。
肉は食用可能で大変美味しい。
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「おおー、やっぱりブラッドベアだっ!」
うん、なわばり争いにでも負けたのかな……毛皮に鋭い爪痕がいつくか残っている……これだけ傷があれば買い取り下がるかもなぁ。
眉間に突き刺されたような痕があるので、リディが気をそらしブランが特攻したんだろう……うん、すごいね。
「あのね、リディ。このお肉『黄金の羊亭』に持って行くと……ものすっごく美味しくなるんだ……だからお肉をわたしに買い取らせてくれないかな?」
「ん、エナにあげる……」
「それはダメだよ。ふたりで頑張ったんでしょう?」
ほら、ブランもそう言ってるじゃない。
「ん、わかった。小銀貨1枚でいいよ」
「いやいや、それでも安すぎだから……」
結局リディがそれ以上受け取ってくれなかったので、ブランと相談してリディ貯金に銀貨1枚入れておくことにする。
「じゃあ、さっそく解体してもいい?」
「ん、お願い」
解体するとあっという間に魔核、牙、爪やお肉に分けられた。
「すごい」
「ん? これ、解体スキルのおかげなんだよね」
「へえ……」
「じゃあお肉はわたしがもらうとして、素材はリディの好きにしてね。売ってもいいし、持っててもいいよ」
「ん、エナならどうする?」
「んー……私は前の時は魔核だけ残してあとは売っちゃったけど、リディが魔核がいるかどうかだよね」
「……ん、魔核以外を売ることにする」
「そっか……」
でもなぁ、リディまだ見習いだから討伐依頼は受けられないんだよな……素材買い取りだけでもかなりの額にはなると思うけど……よし、マルガスさん達に相談だな。
「じゃあ、素材はリディのバッグに入るかな?」
「ん、大丈夫」
「あれ、リディのバッグって時間経過するっけ?」
「ん、わかんない……」
早めに売ったほうがいいかな……うーん。
「じゃあ、さっきのスープ入れて冷めるかどうか確かめてみよう」
「ん」
結果……時間経過しませんでした。アルさんの張り切りすぎっ……いや、ありがたいけどね。
「リディ、このバッグのことは無闇に人に教えちゃダメだよ。子供だからって狙われたりしたら困るからね」
「ん、わかった……でも、ブランが守ってくれるって」
うん、まぁそれはそうだろうけど……
「じゃあ、次に私がポーション納品するときにでも一緒に行こうか?」
「ん……ブランもそれまでに羽溜めとくって」
「そう……」
ブラン、もしハゲができていても見ないふりするね……
◇ ◇ ◇
人に見られる心配なく、瞬間移動が使えるなんて今までの苦労が何だったのかなってほど、楽。
街の家には噂のせいで人はほとんど近寄ってこないし、もし何かあっても精霊のキュリエルが追い払ってくれるし……
「だれ?」
えー、こちら現場のエナです。現在、精霊と少女の初対面中……あ、ふざけるのはここまでにして
「おはよう、キュリエル。彼女はリディ、あとこっちはブランね。前に話した森の家に一緒に住んでる子だよ」
「ふーん」
「それであの子はキュリエル。精霊でこの家を守ってるんだって」
「ん」
キュリエルは追い出したりせず、ふたりは見つめ合っている。
「ん、よろしく」
「まあ、いいか。よろしくー」
ふぅ……何事も起こらずよかった。ブランのリュックを見つめたキュリエル……
「ねぇー、僕もあんなの欲しいなぁ」
そう言われた途端、ブランが前に出てキュリエルに自慢げに見せつけている。
「えー……かなり体の細かなサイズとか必要だし、職人さんに姿を見せないとダメだよ?」
「連れてきてくれたら見せるよ、ね? お願い?」
いや、ドーラさんなら喜んでついてくると思うけどね……
「はぁ……わかったよ。とりあえず今日の用事が済んでから時間があれば……ね」
「うん、よろしくー」
精霊よ、軽いな……本当にほしいのか?
「じゃ、リディ行こっか」
「ん」
「あ、でも今日は荷車に入れていこうと思うんだけど……リディの素材も積む?」
「……なんで?」
「いやー、あんまりたくさんバッグから出したらすぐにマジックバッグだってわかっちゃうかも……」
「ん、じゃあお願い」
荷車を持ってポーションの納品へ行く……今までは適当にごまかしてたけど、たまには使わないと怪しまれちゃうからね。
街の家からならそこまで遠くないし、アピールにはちょうどいいだろう。
でも……荷車にポーションやブラッドベアの素材を乗せ換えたり重たい荷車を引っ張ったりとやってみたら結構大変。
実際、積んでみたらほとんどブラッドベアでいっぱいで、ほぼポーションはストレージの中だけど。
まあ、草原からひたすら歩くのに比べたら幾分も楽なんだけどね……ぜいたくな悩みか。
もちろんブラッドベアの素材も積んで、外から見えないようカバーもかけた。
「じゃ、キュリエル。行ってきます」
「……行ってきます」
「はーい、いってらっしゃーい」
どうか、マルガスさんに呆れられませんように……
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