私ですか?聖女やらせてもらってますけど……え?そちらが本物の聖女だから私は用済みですか?

瑞多美音

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野営と精霊石 編

幕間 氷雷のルルース 

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 私たちの可愛い娘アルティアが非常に不愉快な状況下にいると聞きつけ乗り込んだ王城ーー

 娘の手前、大人しくしていたけれど、正直すぐにでも第2王子と落ち人とやらをぶちのめしたかった。手足の1本や2本くらいいいじゃない。

 散々頼み込まれてこの国に留まったにも関わらずこんなことになるなんてがっかりだわ。

 辺境伯の婚約者(仮)っていうのを了解したのだってこれ以上ティアをこの王都にいさせたくなかったから。
 何をするにも王都より辺境のほうが目立たずにすむ。「グレッグは研究バカだけどわるい子じゃないものね」その気持ちは本当だ。

 ここの王族たちより、よっぽど素直でわきまえているわ……娘が気に入ればいいけど、そうでなかった時に私達が動きやすいのもポイントが高いけど。

 ふふ。これでひと安心とでも思ったら大間違いよ。
 友人より家族をとるのなんて当然でしょう?
 息子のために他人の子を犠牲にしていたあなた達に文句なんて言わせない。


 「まぁ、あとはアルティア次第ってとこだな?」
 「そうね。アルティアはどうしたい?」
 「私は……辺境は危険がある分、聖女が行けば喜ばれるみたいですし……辺境はかつての落ち人が残したレシピで独自に進化した料理がたくさんあるそうですし、ゴタゴタしそうな王都より楽しそうですから行ってみるのもありかなーって」
 「「そう……」」

 アルティアが聖女をお役御免になって楽しそうだし、美味しいもの巡りの旅行をしたいと言っているからそちらを優先するだけよ。

 「じゃあ、俺たちも拠点はあっちに移すわ」
 「……そ、そうか」

 駄目なんて言わせないわよ。反論は笑顔で封殺していく。王族?不敬?それが何だというの。私達を喜んで受け入れる国は数多あるのよ。
 今となってはこの国に留まる理由は娘のみになってしまったもの……信頼回復には時間がかかるものよ。まずは問題をすべて解決してからよ。

 娘には荷物をまとめておくように言って送り出し……ここからは大人の時間。

 瞬く間に部屋の空気が張り詰めた。

 「アルティアが納得しているから今日は引き下がるけどこれが最後の警告よ」
 「わ、わかっておる」
 「言っとくけどお前らが子どもを大事に思うように俺らだってアルティアを大事に思ってんだぞ」
 「そうよ。人様の大事な愛娘、さんざんこき使ってこれで済むと思わないでね」

 次に何かあったら、多分私はこの城くらい吹き飛ばしてしまうでしょうね。娘が望むなら本当に辺境伯領を独立させることだって厭わない。

 「ええ、最大限譲歩してもらっていると理解しています」
 「落ち人関連の調査書類はこちらにもしっかり共有してもらうぞ」
 「ああ」
 「それと、クズールだっけ?あの家にはそっちの処罰とは別にこっちはこっちで報復はさせてもらうから」
 「……ああ」

 王家に関してはひとまず保留……クズール侯爵家には報復を進めておく。
 これからクズール侯爵領から冒険者が減りそれに敏感な商人も減り、領民すらも少しずついなくなっていき一気に税収が下がったり……とある深夜にクズール侯爵家の屋敷周辺に突然地割れが起きたりするがそれは報復の一部に過ぎないのだ。



 その後、合流したアルティアは少しくらい傷ついているかと心配したものの、全く気にしていないみたい。
 それよりも食べ歩きに目をキラキラさせて可愛い。神殿の皆に手紙や結界石まで残していくなんてなんていい子……もう少し自分本位になってもいいのに。

 何をするのも新鮮なようでアルティアが望むことはなんでもさせてあげたい。
 ただ、あの子が髪の毛を切ろうとした時は強硬に止めたわ!私がこれからたくさん飾ってあげるんだから!

 冒険者ギルドで冒険者登録を済ませ、ベルガーが持ってきた最低限の防具を買ったけれど……どこかで魔物の調達が必要かもしれない。
 息子達に用意させてもいいかも……そのあたりはアルフレッドがやってくれるみたいなので私は久しぶりの親子水入らずの時間を過ごし、必要な用事も済ませ無事王都を脱出した。 



 ◆ ◆ ◆



 私達にはない発想で驚かされることもあるけど、やはり娘との旅行は楽しいわ。
 少し興が乗って魔物をたくさん狩りすぎちゃったけど……ま、いいわよね。

 家族水入らずの野営なんてどれぐらい振りかしら……
 きっとティアは精霊石を探しに行くでしょうからあのへんの魔物をさっさと狩ってしまいましょう!子どもでも倒せる魔物はそのままでもいいわよね!

 ある程度魔力は節約していたけど、あとは野営だけだからかなり余裕がある。スピード重視で魔法も併用していくつもり。

 氷槍で貫きどんどんとマジックバックへいれる。こんな使い方するとあの人が怒るけど、娘のためだもの仕方ないわ。
 それに氷槍にしておけば魔物の劣化も防げるし。

 あらかた魔物を狩ったので移動して血抜きをし、素材や食料に振り分ける。
 あとは何度か地面を殴り大きな穴をあけ、埋めておく。

 「もっと、強い魔物いないかしらねぇ……このあたりの魔物弱すぎて手応えがないわ」

 とはいえ娘にはそこそこ脅威なのだけどね。あの子の安全のためにももっと鍛えてあげなくちゃ。どこかちょうどいい場所あったかしら……

 「うーん……ティアはお肉はオークがいいかしらボアがいいかしら」

 このあたりじゃあそれぐらいしか魅力的な食料がいないのよね……あら?
 

 「やだ、美味しそうなのはっけーん!」

 はるか上空を飛んでいた魔物は危機を感じる暇もなく狩人とかしたルルースに刈り取られた。

 「ふふ、これならティアも喜ぶはず!」

 道中、大きな精霊石も見つけたので娘にあげようと適当に拾っておく。

 「鳥肉ゲットしたわよー!」
 「おぉ、これならスープにしても出汁が出てうまそうだな!」

 ……それ鳥肉でなくヴィシャスバードだぞ!この場にギルマスがいたらそう突っ込むことだろう。

 ヴィシャスバードとは羽を広げたら6メートルはあるBランクの魔物で人を餌としか見てないヤバいヤツ……目をつけられたらどこまでも追いかけ死なない程度に痛めつけ絶望する姿を楽しんでいるとまで言われる魔物である。

 なぜそんな凶悪な魔物がBランクかといえばヴィシャスバードは真下に潜り込めれば容易に討伐できるからである。
 ヴィシャスバードの腹部は柔らかく非常に攻撃が通りやすい。そして飛行中視野外の真下は警戒を疎かにしがちなのだ。

 それにはヴィシャスバードに見つかる前に真下に移動し攻撃する必要があるが誰かが囮になればできないことではない。
 隙があるというのはランクが低くなる要因にもなる。

 「あ、この羽根……なにかに使えるかしら」
 「そうだな……まぁ、ちょっと弱い魔物だけどな」
 「この辺りじゃ仕方ないわよ。後で仕分け手伝ってね」
 「はいよー」

 やはり、Sランクは規模が違う。

 「そういえばあの子達から返事きてたわよ『ダンジョン脱出後合流予定』ですって」
 「ん?これルルースが送ったやつか?」
 「ええ、その履歴ね」
 「『アルティア、辺境へ。食いだおれの旅合流求む。』って場所書いてないぞ?」
 「あー、魔力ケチったのよね。あの子達なら大丈夫かなーって」

 魔力使いすぎると疲れるんだもの。ポーションも美味しくないし自然回復は即効性がないし……

 「まあ、マリスあたりが見当つけるだろうけど」
 「え、じゃあ一応目的地送っとくわ」

 えーっと『第1目的地ラウナード子爵領なり。早く来るべし』よし、これでいいわね!

 「ただいまー!」
 「おかえり」


 ◆ ◆ ◆



 「ポインッ!」

 ポイン!と鳴くからポーちゃんと娘に安易に名付けられたこの子……ほんとに聖なる魔物なのかしら?娘が連れて戻ってきた時は驚いた。
 しかも、聖痕よ?聖魔法で魔物に聖痕が浮かぶなんてあり得ると思う?
 娘は「なんかパニックで聖魔法使ったらこうなったんだよー」ってのん気にしていたけど、かなり大事なのよ。

 面倒だからさっさと討伐したかったけれど、聖痕があるし神罰が下ったら面倒だ。
 あのまま、神殿に留まっていたら娘が大聖女になっていたかも……そう思うと大聖女候補者が蔑ろにされていても無反応なくせに、聖痕がある魔物を討伐したくらいで神罰落としてくるのはどういう神経?って思っちゃうのよね。

 神罰は雷が多いって話だけど、私も雷魔法は得意なのよ……あら、もしかして神罰の振りして雷を落としてもバレないかしら?

 あの時も……私たちの国がなくなった時も……あちらは遅すぎた。
 はぁ、あちらの考えなんて私たちに理解できるものではないのでしょうね。だって、この世界を作った神々だもの。
 きっと、私は大聖女候補の親だからこそ見逃されている部分もあるのでしょう……めんどくさい。

 「ポイン?」

 まぁ、害意はないみたいだし様子見かしらね……あら、気が利くわね。なかなかいい座りごこちだわ。

 「あら、マッサージまでしてくれるの?」
 「ポインッ!」

 そうね、なにか悪いことしようとしたら殺さない程度に根性を叩き直せばいいかしら……あら、なんだか疲れが癒されているわ。

 「もしかして、ポーちゃんがやったの?」
 「ポイン?」


 聖痕があると癒しの力が使えるなんてこと……まさかね。

 「できたぞー」
 「わーい」

 ま、いいわ。今はご飯よ!


 ◆ ◆ ◆
 

 娘にプレゼントされて忘れかけていたけどやはり違う気がする……何か違和感がある。

 「ねぇ、あなた」
 「な、なんだ?」
 「ティアの前髪だけど」
 「えぇ、俺は知らないぞっ!火付けようとして前髪焦がして必死に治癒魔法とポーションで治したのなんか知らないぞっ!」
 「……ヒヒーン」
 「……ブルルル」
 「ポインッ?」

 そう。そうだったのね……髪にも治癒魔法やポーションって効くのね?

 アルティアが恐れていたことに母が気付いた。
 髪質がツヤツヤサラサラにも出来る可能性を……早々に母に髪のための研究につきあわされることとなり、前髪も元通りになるのはすぐそこの未来だ。
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