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第一夜 (17)
しおりを挟む親愛なるクロエ嬢
何も言わず立ち去る僕を、貴女はどうお思いでしょうか。
決して心変わりしたわけではないのです。どうか、信じてください。
この世界では、貴女のような特別な力をお持ちの女性の破瓜に関わると、罰せられるのが通例です。
罰せられるとは言っても、斬首や磔のような極刑ではありません。
ただ、そのような心持ちで暫く暮らすことが義務付けられています。
つまり、今日から7日間、僕は辺境の彼の地の洞窟にて、罪を償わなければいけません。
これで、どうして、貴女の元から去らなければいけなかったのか、また、貴方に打ち明けることができなかったのか、お分かりいただけると思います。
たとえ、貴女が僕を気に入ってくれていたとしても、この事実は変えられないものであり、好意的であればあるほど、罪が重いのです。
それは貴女が皆々の麗しの守り女だからです。自己評価が高くない貴女には腑に落ちない話かもしれません。
次に夜の帷が降りる時、貴女は他の男性の腕の中にいるでしょう。
それは、神聖の護りを維持する務めを果たせねばならないからです。
その方がお気に召せば、その次の夜、さらに次の夜も共にすることが可能でしょう。
僕はそれを知っていながら、初めての男でありたいと志願したのです。
これから七夜が明けるまで、貴女に指一本触れることすら叶わない。ましてや、僕以外の誰かに抱かれているのを感じながら過ごすのです。
こういう時に、自分の力を持て余していることに気付きます。
ただ、貴女が喜んだ時に限らず、苦しんで泣いて、心細くて堪らなくても、察することができるのです。それはどんなに離れていても、です。
遠くから貴女を見守り、窮地には馳せ参じると誓いましょう。
大賢者の息子、そして、僕自身も国への貢献を讃えられ、爵位を授かっている身ですから、食事を運んで来てくれる従者が、毎朝、毎夕やってきます。
その彼に、手紙を届けさせましょう。
返事は無理強いはしません。
ただ、僕の気持ちが変わりなく継続するものだと確信することができるでしょう。
いつか、貴女の心が僕のものになりますように。
僕の心は貴女に奪われている。
アルフィー
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