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第一夜 (16)
しおりを挟む「アルフィー様……」
「クロエ嬢。もう夜明けですよ」
寝起きで声が出し辛い。本当は、何故起こしてくれなかったのか、起きたら話すと言っていたことはどうなったのか、と矢継ぎ早に問い質したいのに。
「僕はもう行かなくてはいけないのです。愛らしい寝顔を見ていたくて、ついつい直接お話しできずに立ち去ることをお赦しください。文に認めましたので、どうか……」
一人だけ立派な正装に戻っている。サイドテーブルの上にそっと件の手紙を置いたと思うと、振り返りもせずに早足で部屋を出て行った。
お互いをよく知ることもできないまま。
「ずるい」
子どものように膝を抱えて、不貞腐れるしかなかった。
知らぬ間にネグリジェを着せられている。シーツも綺麗に整えられており、几帳面な性格が伺える。
体もベタついていないことを考えると、清拭をしてくれたのだろう。
どこも痛くない。
太ももが少し筋肉痛であること以外に、裂けたような痛みや傷めたような鈍い痛みなんて、どこにも無い。
とても丁寧にしてくれたんだ。
ここまでされていて、ぐっすり寝入っていた自分に呆れかえるしかない。
「はぁ……。とりあえず3日目を迎えることができたわけね」
あれだけのことがあったのだから、護りの力は維持されていると思いたい。目的が達成できたのだから、きっと追放されたりもないはずだ。
「アルフィー様、か」
初めての経験は、もっと劇的なものかと想像していた。確かに行為そのものは予想の範疇を飛び抜けていて、夢か幻でも見せられているかのようだった。
「眠りから覚めたら、昨日のことが嘘みたい」
お相手は、そそくさと帰ってしまったし。
残された手紙を見やる。
この状況がきちんと説明されているのだろうか。
読みたいような、読みたくないような。
手を伸ばし、指先に摘んで引き寄せる。きっと御令嬢はこんな不作法なことしちゃいけないんだろうけど、今は誰も見てはいないから。
寝転んで、胸の上に手紙を抱きしめる。
昨夜のお供の形見と言ったらおかしいけど、体を預けてもかまわないと思えた人の片鱗。
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