神嫌いの神様と一つ屋根の下

朔々

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信仰心の厚い相談者

3話

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「苑子さん、貴女が知りたがっているのは、ご自身の天命ですね」

「もう痛みにこらえて生きるだけの日々はもう嫌なんです……」

 体は動くけど、痛みはあるのね……。

「分かりました。それでは今宵も夢見を行います。少し早いですが、午後10時には眠りについている状態にしておいてください。朝までかかるかも知れませんから、なるべく熟睡できるように努めてくださいね」

「こんな、ばあばの陰気な願いを聞いてくださり、ありがとうございます」

 苑子さんは深く深く腰を折り曲げ、頭を畳につけた。

 同じように、璃三郎さんも目を閉じて深く深く頭を下げた。慌てて、私も同じ動作を繰り返す。







「夢見ってなに? って聞かないんだね」

「……夢の中で苑子さんに逢えるんですか」

 考え事をしているような横顔に見惚みとれていたなんて言えない。

「そうだね。俺の異能は『夢見』だ。夢の世界には現実には表出しない想いが漂っている。苑子さんの本心や、もしかすると、旦那さんが苑子さんの心の中に残していった想いも見せてもらえるかも知れない」

「どうやって、見るんですか」

「俺も眠りにつくんだよ。それはある意味危険なことなんだ。夢の世界の中で、現実に帰ることができないことが起こると、本体が眠りっぱなしになってしまう」

「そんな……」

「だから、媛ちゃんをここに呼んだんだよ。力を貸しておくれ」

 私をここに呼んだのは、璃三郎さんなの?

「ふぅ、足崩していい? 痺れそう」

「え! えええ! 」

 着物の裾を肌蹴はだけさせて、胡座あぐらをかき始めるから、どこに目をやれば良いのやら。

「俺の力を持ってすれば、媛ちゃんも夢の世界に連れて行けるよ? ついて来る? 」

 悪戯っ子のようににやにやとして、私のことを揶揄からかっているようだ。どうせ信じてないんでしょ? とでも言い出しそうである。

「行きます! 私もついて行きます! 連れてってください! 」
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