神嫌いの神様と一つ屋根の下

朔々

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信仰心の厚い相談者

4話

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「え、ええ、えええええ! 」

「そんなに驚かないでぇ」

 二人して、着物から元の普段着に戻っている。チャラ璃三郎お兄さんが再見参。

「いや、一緒にとは言いましたけど、布団も隣同士なんですか」

 せっせと璃三郎さんの寝室に、2人分の布団を敷いてくれているのを見ながら、棒立ちのまま、口だけはよく動かしている。

「布団も隣同士だし、最初だから、はぐれないように手も恋人繋ぎしちゃおうかな」

「ひゃああああ」

 狼狽うろたえている私を見て、楽しんでいる。

「ごめんね。これもお仕事だから我慢してね」

 申し訳なさそうに言われちゃったけど、違うんです! むしろ喜んでるんです! ってそんなこと言えない。

「さてさて、靴は持ってきた? 」

「靴なんて寝室に持ってきて、どうするんですか? 」

「んーとね、夢の世界は、結局イメージが大事だから、別に外出着である必要はないんだよ。でも、パジャマで寝ちゃったっていうイメージが強かったら、向こうの世界でもパジャマのまま。そんなことが媛ちゃんに起こったら可哀想だから、向こうでも問題ない格好をして寝てもらおうと思ってね」

「璃三郎さんも合わせてくれてるんですね」

「そう、せっかくだし、と思って。さすがに靴を履いたままだと寝るのが大変だろうから、枕元に置いておこう。向こうに着く時には、履いているイメージでね? 」

 素早い動きで明かりを消し、布団に潜り込む璃三郎さん。

「ほら、媛ちゃんも早く。あと30分もしないうちに向こうに着いてないといけないから、早く寝ないと」

「は、はい! 」

 私の動作を横目で見守ってくれているのが分かるけれど、なんかもう! 目が合わせられない! 暗いから結局見えないだろうけど!

「さぁ、手を繋いでいこう。俺の側から離れたらダメだからね」

「分かりました」

 そっと差し出された手に手を重ねると、強い力で指と指が固く結ばれるようにされた。その指先から心臓に向けて、物凄い勢いで血が戻って来るような感覚に陥った。

「目を閉じて。きっと、へとへとになって、帰って来ることになると思う。でも、信じて。眠りは味方だから」

 この3年間、眠ってばかりの自分を呪っていた。夢の内容も覚えていないし、気づいたら時間ばかりが過ぎていった。

 ーー眠りは味方だからーー

璃三郎さんの優しい声を頭の中で反芻していたら、あっという間に眠りに落ちた。


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