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マナの濃さ。
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最初の襲撃は森に入ってすぐだった。
この森は特に人の手がなかなか入ることのない魔物の縄張りみたいなものだったから余計に警戒されたのだろう。
まず一斉に襲ってきたのは雷鳥の大群。
これはまずいと思って馬車四両共に丸ごとシールドを張ったから最初の雷撃は防ぐことができた。
ドドドンと落ちる雷撃。
まともに喰らっていたらこのメンバーじゃかなりの被害が出ていたはずで。
「悪い、マリカ嬢ちゃん。おかげで助かった」
アッシュには全て事情が飲み込めたのだろう。
あたしがはったシールドを解くと同時に全員で弓の一斉掃射を行って。
雷鳥の多くはそれで討ち取られた。
まあでもあたしが最初の一撃をとどめたのを理解しすぐさま弓の掃射を指示するなんて、アッシュにはそうした戦闘勘みたいのが備わっているのか、皆への指示も的確でさすがリーダーを張るだけあるなってちょっと感心して。
今日はそのままここで馬車をとめ、次の襲撃に備えつつテントをはる。
討ち取った雷鳥は回収し今夜のおかずになることとなった。
せっかくの雷鳥、美味しく食べたいしね?
まあこんなところで普通作るものじゃないけどあたしは自前でもってきていた植物油をお鍋に注ぎ加熱し。
鶏肉の揚げ物、カラアゲにすることにして。
調味料とでんぷん粉でまぶして揚げるだけの料理だけど、カラッと揚がるからカラアゲ。
うん。鳥肉はこれが一番美味しい。
さっきの戦いでは出番がなかったマキナにはちゃんと雷鳥を捌くお仕事をしてもらった。
まあそういうのはマキナは慣れてるし得意な部類?
そんなこんなで大量に揚げた雷鳥のお肉は皆のお腹におさまって。
あ、結構評判は良かったよ?
まあね、美味しいお肉だったから余計に美味しかったのかもだけど。
そんな感じでその夜は割といい感じに終わった。
明日からはきっともっと厳しい戦いになるかもだけれど。
⭐︎⭐︎⭐︎
翌朝からは二班に別れて森を散策することとなった。
まず一班はアッシュ、デューイ、マキナ、あたし。
第二班は副団長のダント、キリア、ラクス、ジュドー。
そして居残りはレンとパオ。
レンとパオはあまり戦闘は期待できない二人。
ここに居残りで何かあれば馬車の中からの対処をし狼煙をあげるのが役目。
そうするうちに近くにいる班が駆けつけ対処することになっている。
ダントの二班は今回のメンバーの中では手練れを揃え。
アッシュが新人のデューイの面倒とあたしとマキナを連れていく、そうした布陣。
まあどちらにしてもあまり無理して奥まで行かないように指示をしてダント班を送り出したアッシュ。
「さあ、俺らも行くぞ。そうは言っても今日はまず周囲の偵察だ」
と、先頭で歩き出した。
「オレ、どうしてもマリカさんにお礼をしたくて」
歩きながらそういうデューイ。
「ふふ。何事もなくて良かったわ」
あたしはそう軽く答えて。
だって、あんまりにも命の恩人! っていう目で見てくるんだもの。
さすがにね?
「あの事故じゃ、オレは半身不随になっていてもおかしくはなかった。それよりも命だって危なかったかもしれない。それをこうして五体満足で治してもらえたんだ。どれだけ感謝してもし足りないさ」
そう目をキラキラさせて話しかけてくるデューイに、マキナが面白くなさそうな顔をしているのを……。
しょうがないなぁ、って目で見てたあたし。
マキナはそれも面白くなさげでブスッとしたまま最後尾をついてくるのだった。
「妙だな」
先頭をゆくアッシュがそうぼそっと言った。
まあ確かに?
あたしたちのゆく道は未だ森に入ったばかりの場所とはいえあれだけの初っ端の歓迎され具合を考えればもう少しは魔物が現れてもおかしくはないはず。
というかもっと積極的に攻撃してくるものだと思っていたのに、全くその気配がなくて。
あたしたちが左周り、第二班が右周りに森に入ったわけだけど、実はそちらではもうすでに戦闘の音が聞こえてきていたりしたのだ。こちらにも現れるのが当たり前だとそう考えつつ進んでいたはずで。
うん。まあ。これは。あれだよね?
マキナがいるせいだろうというのはあたしには想像がついてたけれど。
「拍子抜けするくらい魔物が居ない」
「って、ここはそんなに魔物が多い筈な場所なんです?」
「まあね。このエンターでは昨今大量の魔物が観測されていたんだ。それもあって俺たちの第一目標に選んだわけだけど」
「確かに、他の場所と比べても魔が濃くなってますね」
「おう、そんなことまでわかるのかい?」
「まあそれくらいなら。大気中のマナの濃さくらいなら普通に感じますよね?」
「まさか! そんなことできるのはマリカ嬢ちゃんだけだって」
「うそ」
「うそじゃねえまじだって。普通人間にマナの濃さなんてわからねえって」
「そうなの? マキナは?」
「ごめん、俺にも無理」
えー。
ちょっと待って。
だって、マナなんてこの世界の至る所にあるじゃない。
確かに町の中みたいにあんまりマナの薄すぎる場所だと感じにくいかもしれないけど、こんな森の中でそれも濃縮されて魔になってるような濃さのマナだよ?
魔力酔いを起こしかねないくらいになっても気がつかないの? まじで?
呼吸をするように。
魂のゲートからマナを吸収しないことには出すばっかりじゃマナも枯渇しちゃうし。
それくらいは普通の人間でも本能的にやってることだと思ってたのに。
まさかそれも感じられないのかな。
そうか。
あたしに見えるように。
感じるように。
マナを見ることも感じることも普通の人にはできないのか。
水蒸気が集まって水になるように。
マナは凝縮すると魔へと変化する。
その魔が固体化したものが魔石。主に魔獣クラスの魔物だと、その体内に魔石と化した魔を持っている。
そうした状態であれば人の目にもちゃんと見える。
魔石はいろんなものの燃料となるから人間の世界でも重宝されているし。
結界魔法なんかを使う場合でもそれを燃料として魔法の発動に使用している。
だからてっきり普通にマナを感じることくらいできているものだと思ってたのに。
「やばい! 戻るぞ! キャンプが襲われている」
そのアッシュの声にはっと現実に引き戻されたあたし。
振り返ると黄色と赤の入り混じった狼煙が上がっている。
あの煙弾は余程の緊急事態にしか使わないはずの信号?
さっと駆け出すアッシュにあたしも急いでついて行く。
気がついた時にはマキナがかなり前を走っていた。
右手にグラムスレイヤーを持って。もうすでにかなりのマナをその剣にこめている。
青白く光を放つその刃は、マキナのその目、その前方にかなりの敵が集まっているのを示唆していた。
この森は特に人の手がなかなか入ることのない魔物の縄張りみたいなものだったから余計に警戒されたのだろう。
まず一斉に襲ってきたのは雷鳥の大群。
これはまずいと思って馬車四両共に丸ごとシールドを張ったから最初の雷撃は防ぐことができた。
ドドドンと落ちる雷撃。
まともに喰らっていたらこのメンバーじゃかなりの被害が出ていたはずで。
「悪い、マリカ嬢ちゃん。おかげで助かった」
アッシュには全て事情が飲み込めたのだろう。
あたしがはったシールドを解くと同時に全員で弓の一斉掃射を行って。
雷鳥の多くはそれで討ち取られた。
まあでもあたしが最初の一撃をとどめたのを理解しすぐさま弓の掃射を指示するなんて、アッシュにはそうした戦闘勘みたいのが備わっているのか、皆への指示も的確でさすがリーダーを張るだけあるなってちょっと感心して。
今日はそのままここで馬車をとめ、次の襲撃に備えつつテントをはる。
討ち取った雷鳥は回収し今夜のおかずになることとなった。
せっかくの雷鳥、美味しく食べたいしね?
まあこんなところで普通作るものじゃないけどあたしは自前でもってきていた植物油をお鍋に注ぎ加熱し。
鶏肉の揚げ物、カラアゲにすることにして。
調味料とでんぷん粉でまぶして揚げるだけの料理だけど、カラッと揚がるからカラアゲ。
うん。鳥肉はこれが一番美味しい。
さっきの戦いでは出番がなかったマキナにはちゃんと雷鳥を捌くお仕事をしてもらった。
まあそういうのはマキナは慣れてるし得意な部類?
そんなこんなで大量に揚げた雷鳥のお肉は皆のお腹におさまって。
あ、結構評判は良かったよ?
まあね、美味しいお肉だったから余計に美味しかったのかもだけど。
そんな感じでその夜は割といい感じに終わった。
明日からはきっともっと厳しい戦いになるかもだけれど。
⭐︎⭐︎⭐︎
翌朝からは二班に別れて森を散策することとなった。
まず一班はアッシュ、デューイ、マキナ、あたし。
第二班は副団長のダント、キリア、ラクス、ジュドー。
そして居残りはレンとパオ。
レンとパオはあまり戦闘は期待できない二人。
ここに居残りで何かあれば馬車の中からの対処をし狼煙をあげるのが役目。
そうするうちに近くにいる班が駆けつけ対処することになっている。
ダントの二班は今回のメンバーの中では手練れを揃え。
アッシュが新人のデューイの面倒とあたしとマキナを連れていく、そうした布陣。
まあどちらにしてもあまり無理して奥まで行かないように指示をしてダント班を送り出したアッシュ。
「さあ、俺らも行くぞ。そうは言っても今日はまず周囲の偵察だ」
と、先頭で歩き出した。
「オレ、どうしてもマリカさんにお礼をしたくて」
歩きながらそういうデューイ。
「ふふ。何事もなくて良かったわ」
あたしはそう軽く答えて。
だって、あんまりにも命の恩人! っていう目で見てくるんだもの。
さすがにね?
「あの事故じゃ、オレは半身不随になっていてもおかしくはなかった。それよりも命だって危なかったかもしれない。それをこうして五体満足で治してもらえたんだ。どれだけ感謝してもし足りないさ」
そう目をキラキラさせて話しかけてくるデューイに、マキナが面白くなさそうな顔をしているのを……。
しょうがないなぁ、って目で見てたあたし。
マキナはそれも面白くなさげでブスッとしたまま最後尾をついてくるのだった。
「妙だな」
先頭をゆくアッシュがそうぼそっと言った。
まあ確かに?
あたしたちのゆく道は未だ森に入ったばかりの場所とはいえあれだけの初っ端の歓迎され具合を考えればもう少しは魔物が現れてもおかしくはないはず。
というかもっと積極的に攻撃してくるものだと思っていたのに、全くその気配がなくて。
あたしたちが左周り、第二班が右周りに森に入ったわけだけど、実はそちらではもうすでに戦闘の音が聞こえてきていたりしたのだ。こちらにも現れるのが当たり前だとそう考えつつ進んでいたはずで。
うん。まあ。これは。あれだよね?
マキナがいるせいだろうというのはあたしには想像がついてたけれど。
「拍子抜けするくらい魔物が居ない」
「って、ここはそんなに魔物が多い筈な場所なんです?」
「まあね。このエンターでは昨今大量の魔物が観測されていたんだ。それもあって俺たちの第一目標に選んだわけだけど」
「確かに、他の場所と比べても魔が濃くなってますね」
「おう、そんなことまでわかるのかい?」
「まあそれくらいなら。大気中のマナの濃さくらいなら普通に感じますよね?」
「まさか! そんなことできるのはマリカ嬢ちゃんだけだって」
「うそ」
「うそじゃねえまじだって。普通人間にマナの濃さなんてわからねえって」
「そうなの? マキナは?」
「ごめん、俺にも無理」
えー。
ちょっと待って。
だって、マナなんてこの世界の至る所にあるじゃない。
確かに町の中みたいにあんまりマナの薄すぎる場所だと感じにくいかもしれないけど、こんな森の中でそれも濃縮されて魔になってるような濃さのマナだよ?
魔力酔いを起こしかねないくらいになっても気がつかないの? まじで?
呼吸をするように。
魂のゲートからマナを吸収しないことには出すばっかりじゃマナも枯渇しちゃうし。
それくらいは普通の人間でも本能的にやってることだと思ってたのに。
まさかそれも感じられないのかな。
そうか。
あたしに見えるように。
感じるように。
マナを見ることも感じることも普通の人にはできないのか。
水蒸気が集まって水になるように。
マナは凝縮すると魔へと変化する。
その魔が固体化したものが魔石。主に魔獣クラスの魔物だと、その体内に魔石と化した魔を持っている。
そうした状態であれば人の目にもちゃんと見える。
魔石はいろんなものの燃料となるから人間の世界でも重宝されているし。
結界魔法なんかを使う場合でもそれを燃料として魔法の発動に使用している。
だからてっきり普通にマナを感じることくらいできているものだと思ってたのに。
「やばい! 戻るぞ! キャンプが襲われている」
そのアッシュの声にはっと現実に引き戻されたあたし。
振り返ると黄色と赤の入り混じった狼煙が上がっている。
あの煙弾は余程の緊急事態にしか使わないはずの信号?
さっと駆け出すアッシュにあたしも急いでついて行く。
気がついた時にはマキナがかなり前を走っていた。
右手にグラムスレイヤーを持って。もうすでにかなりのマナをその剣にこめている。
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