三度目の転生は猫でした。〜最強賢者、猫に転生し、まったりもふもふ暮します〜

おかえり。

　でも。

　夢の中でどれだけ遥香として振る舞っていたとしても。

　記憶の中にミーシャ、ラギレスのキオクが混ざってしまったとしても。



　キオクはキオク。

　あたしじゃ、いや、わたしじゃないよ。

(ああもうついついミーシャのキオクに引きずられちゃってたよ……。



　どこか他人の記憶を覗き見てるような気分がするのは変わらない。

　ミーシャが三度転生を繰り返してたこと。それは理解はしたけど四度目がわたし？　そうは思えないの。

　だから。

　ね。

　わたしはわたし。いくらミーシャのキオクがあってもわたし。それでいいと思ってる。

　ごめんねミーシャ。

　わたしはあなたにはなれないよ。



　——ならなくても、いいよ？

　え？

　——ごめんねレイア。迷惑かけたね。


　何？　心の奥から声がする？


　——あは。やっと繋がった。


　心の奥底の。インナースペースの奥底にあったクリーム色の卵。

　その卵から声がする？


　もしかして……。

　ミーシャ？

　ミーシャなの？



　唐突に、その卵がパカリ、と割れる。

　そして。

　——にゃーあ！

　両足を伸ばしてノビをするミーシャ！


　——あは、ごめんねえレイア。ちょっと死にかけてさ。一か八か緊急避難しちゃってた。

　——あ、でも身体は死んじゃったんだよね？　こういう場合、なんていうんだろう？

　——心は身体が死ぬ前に切り離して避難したから、なんとか無事だったはずなのにね？


　えーーー？

　ほんとにミーシャなの？


　——そうだよ？


　そうコテって首を傾げるミーシャ。

　両前足をちょこんと前で合わせて、こくびをコテンと傾げるその愛らしさに、わたしは……。



　涙を流しながら笑ってた。

　気がついたら。そう。



　ミーシャ、おかえり……。


　——うん。ごめんねレイア。ただいま！


　あは。

　涙がとまらないよ。

　嬉しくっても涙ってでるんだね。



　わたしはそう、自分で自分を抱きしめて、その場に立ち尽くして泣いた。