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11 兄妹。
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皆が食べ終わる頃にやっと現れたジークハルト。
侯爵が「おはよう」と声をかけているのに、軽く会釈するだけで自分の席に着く。
苦笑する侯爵を見向きもせず、そのまま特に一言も発しずに食事を始める彼。
「お兄様はほんとそういうところがダメなのよ。もっと周りに気をつかったら? 仮にも侯爵家を継ぐ立場でしょう? もうちょっとちゃんと貴族らしく振る舞ってくれないとこちらが恥ずかしいわ」
そう、面と向かって苦言を云うヴェネッサ。
侯爵夫人も他の子たちも黙ってみているけれど、きっとみんな彼女と同じ気持ちなのだな、と、そうエーリカは感じていた。
ジークハルトは、そんなヴェネッサに、「ふん!」とだけ鼻息荒く噴き出し無視をする。
どちらが年上かわからない、そんな態度だった。
エーリカの席は家族の末席。
ジークハルトは侯爵のお隣。
席が離れているとはいえ、こうして一緒に食事を摂っている時にもこちらを見ることの無い彼に。
エーリカは心の中だけで一つため息をつき、そして目を伏せた。
まだ、メイドでいる時間の時の方がこちらを見る機会が多そうだ。
そんなふうにも思い。
きっと、メイドのエリカがここにいるエーリカだとは全く気がついてもいない、疑ってもいないのだろうなぁと思うと、心の中でもう一つため息をついて。
貴族らしからぬスピードで自分の朝食を食べ終えたジークハルト。
まだ他の皆が食後のお茶をいただいていることも気にもせず、
「行ってくる」
とだけ声をかけ、上着を羽織って食堂を出て行った。
後に残された皆が、それぞれため息をつくのを眺めながら。
(子供、なのかしら。彼は)
精神的に幼い。
そんなふうにも感じて。
侯爵が「おはよう」と声をかけているのに、軽く会釈するだけで自分の席に着く。
苦笑する侯爵を見向きもせず、そのまま特に一言も発しずに食事を始める彼。
「お兄様はほんとそういうところがダメなのよ。もっと周りに気をつかったら? 仮にも侯爵家を継ぐ立場でしょう? もうちょっとちゃんと貴族らしく振る舞ってくれないとこちらが恥ずかしいわ」
そう、面と向かって苦言を云うヴェネッサ。
侯爵夫人も他の子たちも黙ってみているけれど、きっとみんな彼女と同じ気持ちなのだな、と、そうエーリカは感じていた。
ジークハルトは、そんなヴェネッサに、「ふん!」とだけ鼻息荒く噴き出し無視をする。
どちらが年上かわからない、そんな態度だった。
エーリカの席は家族の末席。
ジークハルトは侯爵のお隣。
席が離れているとはいえ、こうして一緒に食事を摂っている時にもこちらを見ることの無い彼に。
エーリカは心の中だけで一つため息をつき、そして目を伏せた。
まだ、メイドでいる時間の時の方がこちらを見る機会が多そうだ。
そんなふうにも思い。
きっと、メイドのエリカがここにいるエーリカだとは全く気がついてもいない、疑ってもいないのだろうなぁと思うと、心の中でもう一つため息をついて。
貴族らしからぬスピードで自分の朝食を食べ終えたジークハルト。
まだ他の皆が食後のお茶をいただいていることも気にもせず、
「行ってくる」
とだけ声をかけ、上着を羽織って食堂を出て行った。
後に残された皆が、それぞれため息をつくのを眺めながら。
(子供、なのかしら。彼は)
精神的に幼い。
そんなふうにも感じて。
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