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12 メイド作戦。
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メイド作戦は侯爵家の皆にも助けられながら続いていた。
「しかしなぁ。まさか自分の奥方の顔も覚えていなかったとはな」
「お兄様は女性のお顔の区別ができないのよ」
そんなふうに、ジークには容赦がない侯爵とヴェネッサ。
エーリカも、最初はちょっとどうかと思ったりもしたけれど、今ではこれが愛情ゆえのセリフだと言うのもわかってきて。
この家族が本当にお互いを思い合っている素敵な関係だというのも理解できてきたころ。
ほんとうに、このままでいいのかな?
そんな疑問が心の中をよぎるようになった。
彼と意思疎通ができるようになったら、ちゃんと説得して離婚届にサインをもらう。
そんな当初の計画も揺らいできてしまって。
ここの侯爵家の皆がとても優しい人ばかりだっていうのもわかって、そんな家族の一員になれたら幸せなのかも、そんな思いも芽生えてきてしまったけれど。
それでもやっぱり、ダメだ。と、思い返す。
肝心のジークとはちゃんとした夫婦にはなれそうにない。
元々こんなメイド作戦、彼に知れたらきっと騙してたってよけいに嫌われるだろう。
だから。
エーリカはいつでも取り出せるように、胸元に離婚届を忍ばせるようにした。
決意がゆらがないように、自分の分はちゃんとサインして。
♢ ♢ ♢
その日はジーク様の帰りがいつもにまして遅かった。
彼が帰宅する際にはまず先触れがきて、それに合わせて食事の支度やら湯浴みの支度やらの準備をはじめていたエーリカ。
夕食自体は厨房で作り置きでおいてあるのでそれを盛り付け運ぶだけであったけれどそれでもその日はそんな先触れもなく。
仕事が忙しいのかな。
それとも、職場の方と食事でもして遅くなっているのか。
そんなふうに考えつつ帰りを待っていた。
もう皆が寝静まった頃。
屋敷のロビーに灯がつくのがわかり、ジークが帰宅したのだと悟ったエーリカはメイド服に着替え厨房に向かった。
こんな夜半。
きっともう食事は済んでいるのだろう、とはおもいつつも。
(もしお腹をすかせていらっしゃるのなら何か軽食を用意しましょう)
そう思いながらとりあえずお茶のセットをワゴンに乗せて運び。
彼の私室の前でコンコンとノックをして、「若様、お帰りなさいませ」と声をかけ扉を開ける。
返事がないのはいつものこと。マーヤにもこの辺は返事を無視されても積極的にお世話をすべきと教わっていたから、遠慮しないで部屋に入っていく。
が。
「ジーク様!!」
部屋に入ってすぐ見えたのは寝台に寄りかかるように倒れ伏したジークの姿。
慌てて近づき肩を抱き上げようと身体に触れると、体温がすごく高くなっていて熱があるのがわかった。
「う、うう」
声をかけてもうめき声しか聞こえない。完全に意識が朦朧としている。
とにかく上着だけでも脱がしてなんとかベッドの上に押し上げ、執事のバトラーを呼びに行った。
「しかしなぁ。まさか自分の奥方の顔も覚えていなかったとはな」
「お兄様は女性のお顔の区別ができないのよ」
そんなふうに、ジークには容赦がない侯爵とヴェネッサ。
エーリカも、最初はちょっとどうかと思ったりもしたけれど、今ではこれが愛情ゆえのセリフだと言うのもわかってきて。
この家族が本当にお互いを思い合っている素敵な関係だというのも理解できてきたころ。
ほんとうに、このままでいいのかな?
そんな疑問が心の中をよぎるようになった。
彼と意思疎通ができるようになったら、ちゃんと説得して離婚届にサインをもらう。
そんな当初の計画も揺らいできてしまって。
ここの侯爵家の皆がとても優しい人ばかりだっていうのもわかって、そんな家族の一員になれたら幸せなのかも、そんな思いも芽生えてきてしまったけれど。
それでもやっぱり、ダメだ。と、思い返す。
肝心のジークとはちゃんとした夫婦にはなれそうにない。
元々こんなメイド作戦、彼に知れたらきっと騙してたってよけいに嫌われるだろう。
だから。
エーリカはいつでも取り出せるように、胸元に離婚届を忍ばせるようにした。
決意がゆらがないように、自分の分はちゃんとサインして。
♢ ♢ ♢
その日はジーク様の帰りがいつもにまして遅かった。
彼が帰宅する際にはまず先触れがきて、それに合わせて食事の支度やら湯浴みの支度やらの準備をはじめていたエーリカ。
夕食自体は厨房で作り置きでおいてあるのでそれを盛り付け運ぶだけであったけれどそれでもその日はそんな先触れもなく。
仕事が忙しいのかな。
それとも、職場の方と食事でもして遅くなっているのか。
そんなふうに考えつつ帰りを待っていた。
もう皆が寝静まった頃。
屋敷のロビーに灯がつくのがわかり、ジークが帰宅したのだと悟ったエーリカはメイド服に着替え厨房に向かった。
こんな夜半。
きっともう食事は済んでいるのだろう、とはおもいつつも。
(もしお腹をすかせていらっしゃるのなら何か軽食を用意しましょう)
そう思いながらとりあえずお茶のセットをワゴンに乗せて運び。
彼の私室の前でコンコンとノックをして、「若様、お帰りなさいませ」と声をかけ扉を開ける。
返事がないのはいつものこと。マーヤにもこの辺は返事を無視されても積極的にお世話をすべきと教わっていたから、遠慮しないで部屋に入っていく。
が。
「ジーク様!!」
部屋に入ってすぐ見えたのは寝台に寄りかかるように倒れ伏したジークの姿。
慌てて近づき肩を抱き上げようと身体に触れると、体温がすごく高くなっていて熱があるのがわかった。
「う、うう」
声をかけてもうめき声しか聞こえない。完全に意識が朦朧としている。
とにかく上着だけでも脱がしてなんとかベッドの上に押し上げ、執事のバトラーを呼びに行った。
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