猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!

友坂 悠

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紅い街道。

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 まずこの国境の駅ラウンタークを抜け山脈沿いの街道を進むと辿り着くのはケルタル人の暮らす街、グノープル。

 髪をお団子に結っているってどんな感じなのだろう? 男性だけ? 女性だと可愛い感じになるのかなとかそんな事を考えながら馬車を進めた。

 しかしこの街道の道、紅い煉瓦で敷設されたこのみちのなんと快適なことか。

 御者はティアと交代で務めているんだけれど聖王国の土の道は流石にわだちのへこんだ場所が多くて振動が凄かった。

 あたしはまだ龍化してるから平気だったけどティアはお尻が痛いって泣いてたっけ。



 正直なところ帝国領に入るだけならもっと東の道とか栄えている地域がいっぱいあるところの方が良いのかもだけどこういう寂れた地域にもちゃんとこうして街道が繋がっている所が帝国の良いところなのかもって思う。

 だいたいね。帝国っていうのは一番偉い人、すなわち皇帝がなんでも決めて治めてるんだろうとか子供の頃は思ってた。

 でも違ってたの。

 こういうのを民主的? っていうのかな?

 選挙で選ばれた9名の執政官。その人たちによって基本この国は運営されているっぽい。

 皇帝は決して武力で民を虐げたりはせず、政事は全て宰相を筆頭とする政府に任されている。

 宰相を選ぶのは選挙で選ばれた9名の執政官であり、各大臣はそのメンバーの中から宰相が指名する。そして貴族からなる貴族院、独立した裁判権を持つ法務官。皇帝はその全ての上に位置していても、統治は彼らに委任されていた。

 皇帝は基本的にその政策を承認するだけらしい。

 助言と承認、そして人々の尊敬と信頼を集める皇帝。執政官達の政策がどうしても民のためにならないと皇帝が判断した場合にだけその承認を拒否する事で、政治が回っているらしい。

 もちろんあたしたちが知ることができるのはそんな所だってだけでほんとはもっと複雑なんだろうけどおおむねそんな感じ。

 だからこそのこの4000年以上もの長い間この世界の平和が保たれてきたのだとは思うな。

 沢山の国、沢山の人が集まれば意見の違い信じるものの違いは絶対にある。

 人は弱いから。人々の間国と国との間での諍いは避けることができないし。

 もしこの帝国のパクスが無かったら、きっと人同士国同士で戦ったり殺しあったりする歴史もあったかもしれない。

 今ならそういう争い事はすべて帝国における裁定に従うことで解決するからいいけれど。

 帝国が世界を統一するまでの歴史には、そういう武力での戦いの歴史もあったって話だしね。

 そういうのは嫌だなぁ……。



 紅い街道はそんな平和の印。

 どこまでも整備されたこうした道が続くことで人々は帝国の恩恵にあずかっていると認識できる。

 ほんと、平和だなぁって思えていたのはそこまでだった。



 目の前に砂煙が見える。魔物や魔獣が大量に地を蹴っている証だ。

 まだ距離があるしあまりにも多すぎてもう何頭いるのかわからない、か。

 ちょっと身震いして。あたしはその場に馬車を停めた。
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