猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!

友坂 悠

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シルヴァ・ファング。

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「まさか封印を解ける者があらわれるとはな」

 背後でそんな声がした。

「誰!」

 振り向いたあたし。もうずっとここにきてからあたし達のことを観察する人がいるのは感じてた。ものすごく強い魔力、そんな存在がいることも。

 そこに居たのは……。あの聖都襲撃の時にいた魔物? グリフォンだった。

「キサマ! 何しに現れた!」

 カイヤがそう牙を剥いて威嚇する。

「おやおや。猫風情がこの俺にたてつこうってか? 俺はグリフォン。魔王様の片腕。その魔王石のカケラはどうせ素人にはなんの価値も無い物だ。大人しく渡してくれれば命までは勘弁してやろうと思ってたんだがな!」

 はう。

「よく見たらお前、あの時の龍神族か? 魔力紋が違ってるからわからなかったぞ! チカラもあの時より落ちてるんじゃないか?」

「ぬかせ!」

 カイヤが問答無用とばかりにグリフォンに飛びかかった。ティアも龍化して後に続く。

 ニ対一になったグリフォンは天井に向かって飛ぶとそのまま壁を擦り抜けた。カイヤもティアもそのままグリフォンを追って行く。

 あたしも! と思ったけど手にした魔王石から流れ込む何かが気になって手を離せないでいた。

 ——レティーナ! ゲートが開いたよ!

 はう! アリシア! ほんと?

 っていうかアリシアの隣に犬? が見える?

 真っ白なそんな犬? ううん、もしかして狼? そんなもふもふが見える!

 ——シルヴァ・ファング。魔王のカケラから生まれた魔獣だけど、昔わたしと一緒にバルカと戦ったこともある仲間、かな。この子がレティーナの中に潜り込んできてくれたおかげでゲート開いたよ! まだちょっと安定してないからそこからマナの手を伸ばして! ゲートを固定するの!

 あたしは言われるままゲートに向かってマナの手を伸ばす。その見えない無数の手がゲートから伸びて、あたしの周囲を覆った。

 ——うん。その調子! シロ! あんたはレティーナの盾になりなさい!

 ——クーン。

 シロってシルヴァ・ファングの事? って思ったのも束の間。あたしの左手には白銀の籠手が嵌る。その甲にはさっきの魔王石がそのまま収まった。

 紅かったその石は白銀の宝石に変わりそのままあたしの手の甲で鈍く光る。

 ——レティーナ! わたしもチカラを貸すからお願い! マジカルレイヤーでわたしのマトリクスを重ね掛けして! 

 はう。たぶんアリシアがその気になればそのまま表に出ることもできるんだろうけど、いいや! 甘えるよ!

「マジカルレイヤー!」

 あたしは龍化を二段階進めてた時と同じように、魂《レイス》の中にいるアリシアのマトリクスを自分自身に重ね掛けした。

 金色のふわふわの髪に二本のドラゴンのツノ。真っ白なキトンに身を包み。背中のドラゴンの羽は白銀に輝き。額には金緑のサークレット。その額の真ん中にちょうど嵌るのは魔ギアキャッツアイ。
 右腕にはドラゴンオプスニル。左腕にシルヴァ・ファング。

 そんな姿に変化したあたしは、そのままグリフォンと戦うカイヤ達の後を追った。
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