猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!

友坂 悠

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エネルギー生命体。

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 西の空が夕陽に染まり、上空は濃紺のカーテンに覆われた。

 つい先ほどまでここには山があったのだなと、そうは思えないほどの荒地が広がっている。

 爆散して上空に巻き上がった土砂はどれほどあったのだろうか。半分以上は次元の裂け目に飲み込まれた様にも感じるけれど……。



 グリフォンはどうなったのだろう。爆発して死んじゃった?

 ——死んだわけはないのですよ……。というか魔王石のカケラから生まれた魔獣はエネルギー生命体とでも言うべき存在なので……。

 はうう、死なないの?

 ——死なない、というか、生きて無いんです。レイスが残っていれば何度でも復活してしまう。だから魔王の類は封印するしか方法が無かったんですよ。

 そういう事、かぁ。だから……。

 ——今左手に嵌ってるシルヴァ・ファングだってそう。千年の間ずっと祠で眠ってたけど何とも無い昔のまま。

 うきゅう。じゃぁどうやって倒せばいいの?

 ——まああれはあれで復活するまでには少し時間がかかるはずです。失ったマナを取り戻すのにはそれ相応の対価が必要なので。

 はう。

 ——倒すというよりも封印、ですけど、方法として一番簡単なのは強力な結界に取り込んでレイスに収納してしまう事ですかね……。

 え? 収納してしまうの?

 ——ええ。普通の人には流石に無理ですけどね。貴女ならできるかな。それが器としての能力ですから。



 ああ。なんだかやっと納得した。

 魔王の器ってそういう事?

 自分自身に取り込んでしまうっていう事なのか。


 ——あとはレイス自体を浄化する、くらいですけど、方法としては……。バルカやグリフォンの様にあそこまで妄執が強く魔が濃くなったレイスはなかなか居ませんからね……。

 妄執、かぁ……。

 グリフォンの魔力が膨らんで爆散した時に感じた意識。計り知れないほどの憎悪がそこにあった。

 あそこまでの憎悪が妄執という形で存在するのなら、その妄執自体が彼のレイスそのものなのかもしれない。真っ赤に膨れ上がった妄執。そんなイメージがあの時にあたしには見えた。



 ああ、なんだか疲れたな……。

 カイヤもティアも、二人とも意識を失ってる。物理的な被害はなんとか避けることができたけど、あの時空振によってかなりレイスが疲弊した。あまりの衝撃の強さに二人とも意識を保って居られなかったのだ。

 マナの手で二人を抱き抱えたまま上空に浮遊していたあたしはゆっくりと地上に降りた。



 ——うーん。わたしがみんなを運ぼうか?

 あう。アリシアは大丈夫なの?

 ——とりあえず聖都まで跳びましょうか? ゆっくり休めるところに。

 空間転移? 

 ——ええ。ゲートが空いたから。わたしの空間転移も使えるようになったので。

 っていうかアリシア? あなたそしたらもうあたしの外に出られるって事じゃない?

 ——そう、なんですけどねー。もう少しここに居た方が良い様な気がして。

 はう?

 ——わたしのチカラ、きっと役に立ちますよ? だからもう少しここに居させてくださいな?
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