猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!

友坂 悠

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世界を再生する使命。

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「暫く待てば魔王石が集まって来るだろう。その後はこの世界を一度破壊する」

 え?

 顔色一つ変えずそう言い切るバルカ。

「なんでよ? 怒りとか憎しみとか、そういった感情は今は無いのでしょう? だったらなんで!」

「以前のような怒りや憎しみは確かに今の俺には無いが……。この世界を破壊し再生しなければといった使命感だけが心の奥底に刻まれ残っているのだ」

 なんなのよそれ!

「やめて欲しいって言っても、無駄なんだね?」

「そうだな。それが俺が今ここに存在している証《あかし》らしい」

「なら。させない! あたしがあなたを止めてみせる!!」



 ぶわっと魔王の気が膨らんだ。

 もうこれ以上後ろのみんなは耐えられない、どうしよう。

 ——レティーナ、三人をあなたのレイスに取り込みなさい。そうしないともうもたないわ!

 うん。そうだねアリシア。

 あたしは右手の掌を後ろの三人に向けて。

 ゲートからマナの手を伸ばす。カイヤ、ティア、アルミナをゆっくりとその見えないのマナの手で包むと、そのままあたしのゲートの中に避難させた。

 レイスの中でアリシアが三人を介抱してくれているのを感じる。

 ——わたしも手を貸すから、思いっきりいきましょう。レティーナ。

 うん! やってみる!



 龍化した身体に真龍のマトリクスを纏う。龍の鎧があたしの身体を包んで。

 右手に真龍エレメンタルクリスタルのヘッド。
 左手にシルヴァ・ファング。

 大きく口を開いたそこから吐き出す炎と氷のブレス!

「バーストー!!!」

 先制のブレス・バースト。

 まずここから! あらがってみる。 魔王の力がどれほどのものかわからないけどそれでも!


 あたしのバーストをいとも簡単に右手だけではねのけた魔王バルカ。

 両足に一瞬の溜めを作り、そのままあたしに向かって真っ直ぐに飛んできた。

 左手が横から飛んでくるのを龍の籠手で防ぐ。けれど。そのまま真横に吹っ飛ばされたあたし。

 とんでもないパワーだ。

 ——前の時みたいにわたしを纏って! レティーナ!

 うん。ごめんアリシア。

「マジカルレイヤー!」

 あたしの身体にアリシアの身体が重なる。魔王アリシア。身体の底から彼女のチカラを感じる。

 真っ白なキトン、金色の髪、そして真っ白な翼。

 両手両足にはまだ龍の鎧が残っているけれどそれでもそんな天使の様な姿に変化したあたし。


 魔王アリシアって名前がいけないよね。これだとまるで女神アリシア、じゃない?

 今更のようにそう呟くあたし。

 ——女神と魔王って、紙一重なのよ。

 そうウインクして微笑むアリシア。

 右手にドラゴンバスタードを顕現させたあたし、そのままその剣を抱えててバルカの脇まで跳んだ!
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