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禁忌の魔法陣って、あの?
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「よし、行こう。アナスターシア。レムレスのところに」
「え?」
「君の事をお飾り聖女だなんて、わたしもそれは許せないよ。それに、気になることもある」
「でも」
わたくし個人の事にナリス様を巻き込むなんてできない。
それに。
ナリス様の方がお兄様だからといって、相手は王太子。立場は向こうが上なのだ。
「ふふ。その目はわたしの事を心配してくれてる、のかな? 大丈夫。これは陛下にも頼まれている案件なんだ。あの男爵令嬢、何かおかしい」
え?
「カナリヤさま、ですか?」
「ああ。実はね、今マギウスにも調べさせているんだけれど、彼女には不審な点が多々あってね」
マギウスさま?
ナリス様と同じフランソワ様のお子で弟君のマギウス様。
まだ十二歳ですよね?
この春貴族院初等科を卒業なさったばかりだと聞いていましたけど。
その魔力量の多さは王室随一と言われていましたし、優秀なのは間違いないですがそれでもまだ少年ですよね。
「あれはね、先祖返りとでも言うべきか。母方の血のせいかもしれないが、かなりの特異体質でね。女性に産まれていたら君の後の聖女として祭り上げられていただろうけど生憎男子だからさ。すっかり魔道士の塔に入り浸って、今ではあそこのトップに次ぐ実力者になってるよ。そんなわけで色々と調べ物にも役に立ってくれてるってわけだけどね」
そう言ってナリス様はふっと笑った。
母方の血って、フランソワ様の実家のコレット家?
そういえば大昔の大聖女様がフランソワ様ってお名前だと聞いた事があった。
その古い血を引き継ぐコレット家の血はわたくしにも流れてる。
もちろんナリス様にも。
わたくしのお母様もそう。その白銀の髪はその大昔の大聖女様と一緒なのだと聞いた。
少しピンクがかった銀色の髪のわたくしや、青みがかった銀色のナリス様も、きっとその血を色濃く受け継いでいるのだろうとは思うけれど。
でもマギウス様って茶褐色の髪色でしたよね?
そこがちょっと不思議だった。
だって、お母様の白銀の髪は本当に綺麗で。
聖女の力の証のような気もしていたのだもの。
まあ気のせいなのかもですけれど。
「ふふ。まあそうは言ってもマギウスはまだ見た目が子供だしね。危険な場所に連れて行くには憚られる。ヴァレリウス、ここに」
「はっ、ナリス様」
「ナリス・ド・アルメルセデスの名の下に漆黒の魔道士ヴァレリウスに命ずる。ここにおられる聖女、アナスターシア・スタンフォード侯爵令嬢をお前の命を賭して護れ! 彼女はわたしの命よりも大切な女性だと、心して任にあたるように」
「はい。我が主よ。命に替えてその任を全う致します」
黒髪に浅黒い肌のその男性。
着ているものも黒いキトンに黒いマント。
編み上げのブーツも黒で、本当真っ黒な装いのその人。
身体からも黒い霧のようなものを噴き出して。
あれは。
黒い魔力?
かなりの強い魔力を感じる。
ナリス様の部下? なのかしら。
それにしても命を賭して、だなんて……。
「危険、なのですか……?」
レムレス殿下のところに行くだけ。
一言文句を言いに行くだけ。
それでも不敬罪とかに問われる危険はあるといったらあるけれど。
彼らの物言いは、そんなレベルのものではなさそうで。
「ああ。本当なら君にはここに残っていて貰いたいくらいだ。わたしは、この件には禁忌の魔法陣が絡んでいると見ている。状況証拠もかなり揃っているのだ」
はう。
禁忌の魔法陣って、あの?
異界の門を開き魔力災害を巻き起こす、あれ、でしょうか。
そんな危険なものが関わっているだなんて。
「どうする? 先ほども言ったが本当は君にはこのままこの部屋で事が終わるまで待っていて貰たい。でも」
「ええ。そんな危険が待ち受けていると知ったら、なおさらナリス様だけを行かせるわけには参りませんわ」
元々わたくしの問題だったのですもの。
それに、そんな状態で、明日の神楽の本番を任せておくわけにもいきません。
ええ。
公務としての聖女の職を解任されたとしても、わたくしは第百八十代聖女。
それに変わりはありませんもの。
「ああ。君はそう言うと思っていたよ」
ナリス様は優しくそう言って、右手をそっと差し出した。
わたくしは、その手をとって。
不義理をしてしまっていたのに、ほんとごめんなさい。
そして、ありがとうございますナリス様。
わたくし、昔と同じようにまた、ナリス様の隣にいてもいいのでしょうか……?
♢ ♢ ♢
「え?」
「君の事をお飾り聖女だなんて、わたしもそれは許せないよ。それに、気になることもある」
「でも」
わたくし個人の事にナリス様を巻き込むなんてできない。
それに。
ナリス様の方がお兄様だからといって、相手は王太子。立場は向こうが上なのだ。
「ふふ。その目はわたしの事を心配してくれてる、のかな? 大丈夫。これは陛下にも頼まれている案件なんだ。あの男爵令嬢、何かおかしい」
え?
「カナリヤさま、ですか?」
「ああ。実はね、今マギウスにも調べさせているんだけれど、彼女には不審な点が多々あってね」
マギウスさま?
ナリス様と同じフランソワ様のお子で弟君のマギウス様。
まだ十二歳ですよね?
この春貴族院初等科を卒業なさったばかりだと聞いていましたけど。
その魔力量の多さは王室随一と言われていましたし、優秀なのは間違いないですがそれでもまだ少年ですよね。
「あれはね、先祖返りとでも言うべきか。母方の血のせいかもしれないが、かなりの特異体質でね。女性に産まれていたら君の後の聖女として祭り上げられていただろうけど生憎男子だからさ。すっかり魔道士の塔に入り浸って、今ではあそこのトップに次ぐ実力者になってるよ。そんなわけで色々と調べ物にも役に立ってくれてるってわけだけどね」
そう言ってナリス様はふっと笑った。
母方の血って、フランソワ様の実家のコレット家?
そういえば大昔の大聖女様がフランソワ様ってお名前だと聞いた事があった。
その古い血を引き継ぐコレット家の血はわたくしにも流れてる。
もちろんナリス様にも。
わたくしのお母様もそう。その白銀の髪はその大昔の大聖女様と一緒なのだと聞いた。
少しピンクがかった銀色の髪のわたくしや、青みがかった銀色のナリス様も、きっとその血を色濃く受け継いでいるのだろうとは思うけれど。
でもマギウス様って茶褐色の髪色でしたよね?
そこがちょっと不思議だった。
だって、お母様の白銀の髪は本当に綺麗で。
聖女の力の証のような気もしていたのだもの。
まあ気のせいなのかもですけれど。
「ふふ。まあそうは言ってもマギウスはまだ見た目が子供だしね。危険な場所に連れて行くには憚られる。ヴァレリウス、ここに」
「はっ、ナリス様」
「ナリス・ド・アルメルセデスの名の下に漆黒の魔道士ヴァレリウスに命ずる。ここにおられる聖女、アナスターシア・スタンフォード侯爵令嬢をお前の命を賭して護れ! 彼女はわたしの命よりも大切な女性だと、心して任にあたるように」
「はい。我が主よ。命に替えてその任を全う致します」
黒髪に浅黒い肌のその男性。
着ているものも黒いキトンに黒いマント。
編み上げのブーツも黒で、本当真っ黒な装いのその人。
身体からも黒い霧のようなものを噴き出して。
あれは。
黒い魔力?
かなりの強い魔力を感じる。
ナリス様の部下? なのかしら。
それにしても命を賭して、だなんて……。
「危険、なのですか……?」
レムレス殿下のところに行くだけ。
一言文句を言いに行くだけ。
それでも不敬罪とかに問われる危険はあるといったらあるけれど。
彼らの物言いは、そんなレベルのものではなさそうで。
「ああ。本当なら君にはここに残っていて貰いたいくらいだ。わたしは、この件には禁忌の魔法陣が絡んでいると見ている。状況証拠もかなり揃っているのだ」
はう。
禁忌の魔法陣って、あの?
異界の門を開き魔力災害を巻き起こす、あれ、でしょうか。
そんな危険なものが関わっているだなんて。
「どうする? 先ほども言ったが本当は君にはこのままこの部屋で事が終わるまで待っていて貰たい。でも」
「ええ。そんな危険が待ち受けていると知ったら、なおさらナリス様だけを行かせるわけには参りませんわ」
元々わたくしの問題だったのですもの。
それに、そんな状態で、明日の神楽の本番を任せておくわけにもいきません。
ええ。
公務としての聖女の職を解任されたとしても、わたくしは第百八十代聖女。
それに変わりはありませんもの。
「ああ。君はそう言うと思っていたよ」
ナリス様は優しくそう言って、右手をそっと差し出した。
わたくしは、その手をとって。
不義理をしてしまっていたのに、ほんとごめんなさい。
そして、ありがとうございますナリス様。
わたくし、昔と同じようにまた、ナリス様の隣にいてもいいのでしょうか……?
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