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瘴気。
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王宮の真っ赤な絨毯の上を進む。
わたくしはほとんどここには来たことがありませんけど、ナリス様は迷わず進んでいくからそのあとを追いかけ急いで。
「これをかけるといい」
と手渡されたメガネをかけたわたくしは、その髪の色も茶色のありきたりな色に変化し、着ているものもどうやら王宮侍女さんのお仕着せに見えるようになっているらしい。
今のピンクシルバーの髪や白銀の聖女服では目立ちすぎるからと変装用に。
認識阻害グラスという名の魔道具との事。
まあね。
いきなりわたくしが訪ねるよりこうして変装している方がいいのはわかるけれど、ちょっとこう言うのは恥ずかしい。
侍女さんの服は黒いシックなドレスに真っ白なエプロンをかけた清楚な感じで。
今のわたくしはナリス王子に付き従う侍女にしか、見えないだろう。
ヴァレリウス様は影に隠れているから、実質今はナリス様が一人でレムレス様のお部屋を訪ねていくといった感じのシチュエーションになっている。
長い廊下をずんずんと進み。
そしてどうやら目的の場所まで到着したようだ。
コンコン
と、ノックをするナリス様。
「レムレス、わたしだ、ナリスだ。話があるんだが」
そう声をかけると中からゴソゴソと音がして。
「ああ、ナリス兄様。面会なら先触れを出してもらわないと」
はう?
レムレス様がそのままドアのところまで出てきましたけど?
お付きの侍女や侍従の方々はどうしてしまったのでしょう?
普通ならここで王太子本人がドアを開けるなんてあり得ないような気がしますけど。
「急ぎの用事だったのだ、陛下からの伝言も預かっている。中に入れてもらえないか?」
「父上の? では」
そう言って自ら扉を開けるレムレス殿下。
「今は人払いしていますから、お構いもできませんけれど」
そう言ってナリス様を部屋に通す。
わたくしもお付きの侍女然としてすすっと中に入った。
多分、影に紛れてヴァレリウスもちゃんと部屋に入っているだろう。それは感じる。
「そちらにどうそ」
進められるままソファーに座るナリス様。
わたくしは一応侍女なので、横に立ったままだけれど。
「それで、どういう要件でした?」
対面にボスんと腰掛けたレムレス様。
ちょっと機嫌が悪そうにそういう。
でも。
レムレス様ってこんな気配を漂わせていただろうか?
魔力の感じがなんだか違って感じるのは、気のせい?
「ああ。単刀直入に言おう。レムレス、君は禁忌の魔法陣については知っているか?」
「はは。なんだそんなことですか。あれは素晴らしいものですよ。兄様もやっとお気づきになりましたか?」
え? 素晴らしいってそんな!
わたくしはびっくりして手を口元に当ててレムレス様を見てしまって。
そのわたくしの動作が一瞬目に入ったのかこちらをじろっと睨みつけたレムレス様、でも、認識阻害グラスのおかげでしょうか、わたくしだということには気がつかず、そのまま興味を失ったかのように目を逸らしました。
「素晴らしい、もの、と?」
「ええ。かの魔法陣は、この世界と異世界とを繋ぐもの。そして実はすでに異世界より真の聖女の召喚にも成功しているのです。研究者ロッテンマイヤー男爵の功績ははかりしれないほどです。ああそうだ、私はその真の聖女と結婚することに決めました」
「なるほど。で、その禁忌の魔法陣は今どこに?」
「それはいくらナリス兄様であっても教えることはできません。いわば国家機密に相当するほどの貴重な情報ですからね」
「父上は、陛下はこのことはご存じない様子だが」
「はは。そうですね、まだお知らせするには早いと思っていましたからね。もう少し研究が進んだ段階で公表しようと思っていたところです。それがどうして兄様に情報が漏れたのか……。こちらが教えて欲しいくらいなのですがね。カナリヤ、出ておいで」
奥の部屋の扉が開く。
位置的に寝室、だろうか?
そこから、妖艶な夜着に身を包んだ女性が、その首から手首、お腹、足首までも数多の宝石を散りばめた金のチェーンを身に纏った状態で、しゃなりしゃなりと歩いてくる。
「あら、ナリス殿下でしたか。レムレス様、どうします?」
「どうやら兄様は例の魔法陣について調べているようだ。まああれも最終段階ではある。明日の神楽でその仕上げに入るのだろう? であれば今はそれを邪魔されない程度に捕らえておけば済むと思うけれど」
「ふふ。甘いですわねレムレス様。この方そんなにお優しくはないはずですよ。ナリス様と言ったら、この国の影の総元締めのはずですからね。でもこうしてここまで出向いてくださったのですもの、ねえ、レムレス様? この方あたくしに下さいます?」
「まあいいさ、君の自由にしたらいいよカナリヤ」
そういうと、するすると前に出てきたカナリヤ嬢、ソファーに座るナリス様に抱きつくようにしなだれかかる。
はう、ナリス様!
カナリヤ嬢の周囲には黒い靄がかかっている。
その瘴気にあてられたように一瞬金縛りにあったように動けなかったわたくし。
ああ、だめだ、このままじゃナリス様を守れない!
意識を集中し、お腹に力を入れて。
「ダメ! ナリス様!」
そう叫んだ。
♢
わたくしはほとんどここには来たことがありませんけど、ナリス様は迷わず進んでいくからそのあとを追いかけ急いで。
「これをかけるといい」
と手渡されたメガネをかけたわたくしは、その髪の色も茶色のありきたりな色に変化し、着ているものもどうやら王宮侍女さんのお仕着せに見えるようになっているらしい。
今のピンクシルバーの髪や白銀の聖女服では目立ちすぎるからと変装用に。
認識阻害グラスという名の魔道具との事。
まあね。
いきなりわたくしが訪ねるよりこうして変装している方がいいのはわかるけれど、ちょっとこう言うのは恥ずかしい。
侍女さんの服は黒いシックなドレスに真っ白なエプロンをかけた清楚な感じで。
今のわたくしはナリス王子に付き従う侍女にしか、見えないだろう。
ヴァレリウス様は影に隠れているから、実質今はナリス様が一人でレムレス様のお部屋を訪ねていくといった感じのシチュエーションになっている。
長い廊下をずんずんと進み。
そしてどうやら目的の場所まで到着したようだ。
コンコン
と、ノックをするナリス様。
「レムレス、わたしだ、ナリスだ。話があるんだが」
そう声をかけると中からゴソゴソと音がして。
「ああ、ナリス兄様。面会なら先触れを出してもらわないと」
はう?
レムレス様がそのままドアのところまで出てきましたけど?
お付きの侍女や侍従の方々はどうしてしまったのでしょう?
普通ならここで王太子本人がドアを開けるなんてあり得ないような気がしますけど。
「急ぎの用事だったのだ、陛下からの伝言も預かっている。中に入れてもらえないか?」
「父上の? では」
そう言って自ら扉を開けるレムレス殿下。
「今は人払いしていますから、お構いもできませんけれど」
そう言ってナリス様を部屋に通す。
わたくしもお付きの侍女然としてすすっと中に入った。
多分、影に紛れてヴァレリウスもちゃんと部屋に入っているだろう。それは感じる。
「そちらにどうそ」
進められるままソファーに座るナリス様。
わたくしは一応侍女なので、横に立ったままだけれど。
「それで、どういう要件でした?」
対面にボスんと腰掛けたレムレス様。
ちょっと機嫌が悪そうにそういう。
でも。
レムレス様ってこんな気配を漂わせていただろうか?
魔力の感じがなんだか違って感じるのは、気のせい?
「ああ。単刀直入に言おう。レムレス、君は禁忌の魔法陣については知っているか?」
「はは。なんだそんなことですか。あれは素晴らしいものですよ。兄様もやっとお気づきになりましたか?」
え? 素晴らしいってそんな!
わたくしはびっくりして手を口元に当ててレムレス様を見てしまって。
そのわたくしの動作が一瞬目に入ったのかこちらをじろっと睨みつけたレムレス様、でも、認識阻害グラスのおかげでしょうか、わたくしだということには気がつかず、そのまま興味を失ったかのように目を逸らしました。
「素晴らしい、もの、と?」
「ええ。かの魔法陣は、この世界と異世界とを繋ぐもの。そして実はすでに異世界より真の聖女の召喚にも成功しているのです。研究者ロッテンマイヤー男爵の功績ははかりしれないほどです。ああそうだ、私はその真の聖女と結婚することに決めました」
「なるほど。で、その禁忌の魔法陣は今どこに?」
「それはいくらナリス兄様であっても教えることはできません。いわば国家機密に相当するほどの貴重な情報ですからね」
「父上は、陛下はこのことはご存じない様子だが」
「はは。そうですね、まだお知らせするには早いと思っていましたからね。もう少し研究が進んだ段階で公表しようと思っていたところです。それがどうして兄様に情報が漏れたのか……。こちらが教えて欲しいくらいなのですがね。カナリヤ、出ておいで」
奥の部屋の扉が開く。
位置的に寝室、だろうか?
そこから、妖艶な夜着に身を包んだ女性が、その首から手首、お腹、足首までも数多の宝石を散りばめた金のチェーンを身に纏った状態で、しゃなりしゃなりと歩いてくる。
「あら、ナリス殿下でしたか。レムレス様、どうします?」
「どうやら兄様は例の魔法陣について調べているようだ。まああれも最終段階ではある。明日の神楽でその仕上げに入るのだろう? であれば今はそれを邪魔されない程度に捕らえておけば済むと思うけれど」
「ふふ。甘いですわねレムレス様。この方そんなにお優しくはないはずですよ。ナリス様と言ったら、この国の影の総元締めのはずですからね。でもこうしてここまで出向いてくださったのですもの、ねえ、レムレス様? この方あたくしに下さいます?」
「まあいいさ、君の自由にしたらいいよカナリヤ」
そういうと、するすると前に出てきたカナリヤ嬢、ソファーに座るナリス様に抱きつくようにしなだれかかる。
はう、ナリス様!
カナリヤ嬢の周囲には黒い靄がかかっている。
その瘴気にあてられたように一瞬金縛りにあったように動けなかったわたくし。
ああ、だめだ、このままじゃナリス様を守れない!
意識を集中し、お腹に力を入れて。
「ダメ! ナリス様!」
そう叫んだ。
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