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セバスリーにいさま。

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「一人でお出かけ? それは流石にわたくしがお父様に叱られそうですし。あ、そうだわ、セバスリーをお供につけましょう。彼なら護身術もそれなりに使えますし護衛としてもバッチリだわ」

 はう。そんなふうに言ってセバスリーにいさまを呼びつけるお婆さま。
 この家に代々仕えている家令執事のセバスチャンのお孫さん、セバスリーにいさまは長身で武術にも長けている。
 子供の頃からずっとそばにいて色々助けてくれたから、気心も知れているし。
 っていうか二人っきりの時はにいさまにいさまって呼んで本当のお兄様みたいな気がして甘えてたっけ。
 三年も会ってなかったけど素敵になってるかな?

「お呼びとお伺いしましたが」
 そうさっとリビングに現れたセバスリーにいさま。
 はあ。
 黒の執事服を颯爽と着こなし、こちらに向けて会釈をする彼。
 短めの黒髪、黒縁の眼鏡をかけて、もう完全に一人前の執事って雰囲気で。
 すごくかっこよくなっています。にいさまったら。

 着痩せして見えるのでしょうか?
 武術が得意なにいさまは、その体もしっかりと鍛え上げていましたから、きっと今でもスーツの下は筋肉がすごいのでしょうね。
 ふふ。眼鏡も伊達なのはわかっています。
「こういうのはまず形から入るものだから」
 っておっしゃって、まずはお爺さまお父様の後を継ぐべく完璧な執事を目指してお勉強なさっていたのも知っています。
 努力家なのです。にいさまは。

「ああ、セバスリー。あなたは今日からしばらくアナスターシアの護衛についてくださいな。この子に何かあったらわたくしがサイラスに叱られてしまうもの」

「わかりました。奥様」

 そうこちらをみて微笑むにいさま。
 わたくしも、
「それではお願いいたします」
 と、そう淑女っぽく笑みを返します。

「お嬢様はもうお年頃なのですから、子供の頃のようにお転婆はいけませんよ?」
「ひどい、セバスリーったら。わたくしはもう立派なレディなのですよ? 聖女のお仕事だってちゃんとこなしてきたのですから」
「ふふ。そうですね。お嬢様、お手をどうぞ」

 真っ白の手袋。
 そんな右手をさっと差し出し礼をするにいさま。

 わたくしは、そんな彼の手をそっととって。

 エスコートされるまま、エントランスに向かいました。

 ♢ ♢ ♢

 ファフナは一応ちゃんと猫らしく自分の足で歩いてついて来ています。
 流石にみんなの前で飛んだり喋ったりは自重しています。
 今までもずっとそうしてきましたし、彼女も普通の猫のように振る舞うのも上手なので。

「お嬢様、今日はファフナも一緒です?」

「そうなのにいさま、だめ?」

「いいですよ。この子は賢いですからね。馬車の中でもおとなしいですし、人混みでも勝手にどこかに行ったりしませんから」

「にゃぁ」

 ファフナも昔からセバスリーにいさまをよく知っているから、もうちゃんと猫らしく甘えて返事をしています。

 にいさまの足元に頭を擦り付けて媚を売るのも忘れません。

「はは。ファフナ、僕のことちゃんと覚えててくれたのかい?」

「にゃ~」

 にいさま、そんなファフナの返事に嬉しくなったのか、馬車の手前でさっと彼女を抱き上げて頬擦りをしてくれました。

 あは。ファフナもまんざらじゃない様子。

 ごろごろ鳴いて、そのまま馬車にポンと飛び乗って。

 わたくしはにいさまに手を借りながら馬車に乗り込み。

 さあ。街まで出発デス!
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