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しあわせの予感。
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翌日の式典は滞りなくおこなわれ、夜会の時刻となった。
今夜は立食。貴族の社交はこれからが本番の季節。
春の新緑祭を終えたあとは多くの下位の貴族が領地に帰るため、こうして全ての貴族が集まるのは秋も深まったこの季節になる。
パトリック様の件は内々に処理されることとなった。
流石に王位継承権を持つ公爵が義父の筆頭公爵を殺害しようとしたなどと公になったら、国が揺らぎかねない。
彼は王位継承権、公爵位、貴族位すら剥奪となって王宮の最奥の牢に幽閉されることとなった。
正式な裁判など彼には与えられなかった。それくらいの事をしでかしてしまっていたのだった。
マリアンネは正式に罪に裁かれることとなったけれど、お父様は彼女を修道院に押し込むつもりらしい。
裁判に出頭すれば何を喋り出すかわからない。
それよりも、裁判は略式で済ませ人前からは隠してしまいたいのだろう。
あたしはギディオン様のパートナーとしてパーティーに出席していた。
学園を卒業しすぐ婚姻を結んだこともあり、元々社交にはあまり出たことがなかったあたし。
こうして見ても誰も知り合いがいない状態で。
まあね。今日招待されているのは貴族夫妻が中心だ。若い女性、貴族の子女たちのデビューの場はまた別に用意されているわけだし知り合いがいなくっても当たり前だから別にぼっちなわけじゃないから学園時代には少しくらいお友達もいたんだから。って、心の中を慰めて。
それでも、騎士団の隊長であるギディオン様の名声はあちらこちらに轟いているらしく、多くの貴族から挨拶を受けていた彼。
隣にいたあたしも無難に会釈を振り撒いて過ごしていた。
あまりにも人の多さに疲れたあたしたちはバルコニーから静かな中庭に出てみることに。
優しくこちらを見つめてくれるギディオン様が差し出してくれた手を取って、ゆっくりと階段を降りる。
日中は風もなく日差しも暖かかったけれど夜になるとちょっと涼しい。
そろそろ寒い季節になるのかな。
今までは寒くもなく暑すぎもせずと良い気候が続いていたけれど、きっと冬の街は寒いんだろうな。あたし、耐えられるだろうか。
あんまり寒いと嫌だな。
そんなことを考えているとギディオン様がこちらを覗き込んだ。
「ねえ、セリーヌ? 浮かない顔をしてるね。心配事?」
「あ、いえ、ギディオンさま。わたくしガウディのお部屋に帰ったら、そろそろ寒くなるのかなっそう思って」
「え? 帰るの?」
「はい? 帰りますよ?」
だって、ギディオン様が駐屯地にいらっしゃるのなら、あたしが帰る場所はあそこだ。
もう離れて過ごすのは嫌だもの。
それに、お父様の言いなりになってどこかの貴族に嫁がされるのももう絶対に嫌。
だから。
「ははは。君らしいね。私は君のそんなところが大好きだよ」
優しい目をした彼がだんだんとあたしに近づいてくる。
え、でも、うん。
恥ずかしくって目を閉じたあたしに、ギディオン様、そっと口づけをくれた。
それがとっても嬉しくて。
「あたしも、大好きです。ギディオン様」
月の灯りが降るようにキラキラと噴水にこぼれ落ちて。
あたしは真っ赤になった顔を隠すように、月に向かって手を伸ばす。
「月に手が届きそう」
幻想的な光を浴びて、思わずそう声に出ていた。
「ああ。本当に綺麗な月だね」
そうおっしゃったギディオン様のお顔が、とても愛おしかった。
今夜は立食。貴族の社交はこれからが本番の季節。
春の新緑祭を終えたあとは多くの下位の貴族が領地に帰るため、こうして全ての貴族が集まるのは秋も深まったこの季節になる。
パトリック様の件は内々に処理されることとなった。
流石に王位継承権を持つ公爵が義父の筆頭公爵を殺害しようとしたなどと公になったら、国が揺らぎかねない。
彼は王位継承権、公爵位、貴族位すら剥奪となって王宮の最奥の牢に幽閉されることとなった。
正式な裁判など彼には与えられなかった。それくらいの事をしでかしてしまっていたのだった。
マリアンネは正式に罪に裁かれることとなったけれど、お父様は彼女を修道院に押し込むつもりらしい。
裁判に出頭すれば何を喋り出すかわからない。
それよりも、裁判は略式で済ませ人前からは隠してしまいたいのだろう。
あたしはギディオン様のパートナーとしてパーティーに出席していた。
学園を卒業しすぐ婚姻を結んだこともあり、元々社交にはあまり出たことがなかったあたし。
こうして見ても誰も知り合いがいない状態で。
まあね。今日招待されているのは貴族夫妻が中心だ。若い女性、貴族の子女たちのデビューの場はまた別に用意されているわけだし知り合いがいなくっても当たり前だから別にぼっちなわけじゃないから学園時代には少しくらいお友達もいたんだから。って、心の中を慰めて。
それでも、騎士団の隊長であるギディオン様の名声はあちらこちらに轟いているらしく、多くの貴族から挨拶を受けていた彼。
隣にいたあたしも無難に会釈を振り撒いて過ごしていた。
あまりにも人の多さに疲れたあたしたちはバルコニーから静かな中庭に出てみることに。
優しくこちらを見つめてくれるギディオン様が差し出してくれた手を取って、ゆっくりと階段を降りる。
日中は風もなく日差しも暖かかったけれど夜になるとちょっと涼しい。
そろそろ寒い季節になるのかな。
今までは寒くもなく暑すぎもせずと良い気候が続いていたけれど、きっと冬の街は寒いんだろうな。あたし、耐えられるだろうか。
あんまり寒いと嫌だな。
そんなことを考えているとギディオン様がこちらを覗き込んだ。
「ねえ、セリーヌ? 浮かない顔をしてるね。心配事?」
「あ、いえ、ギディオンさま。わたくしガウディのお部屋に帰ったら、そろそろ寒くなるのかなっそう思って」
「え? 帰るの?」
「はい? 帰りますよ?」
だって、ギディオン様が駐屯地にいらっしゃるのなら、あたしが帰る場所はあそこだ。
もう離れて過ごすのは嫌だもの。
それに、お父様の言いなりになってどこかの貴族に嫁がされるのももう絶対に嫌。
だから。
「ははは。君らしいね。私は君のそんなところが大好きだよ」
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それがとっても嬉しくて。
「あたしも、大好きです。ギディオン様」
月の灯りが降るようにキラキラと噴水にこぼれ落ちて。
あたしは真っ赤になった顔を隠すように、月に向かって手を伸ばす。
「月に手が届きそう」
幻想的な光を浴びて、思わずそう声に出ていた。
「ああ。本当に綺麗な月だね」
そうおっしゃったギディオン様のお顔が、とても愛おしかった。
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