73 / 74
転生者。
しおりを挟む
レストラン、「ねこや」を出た時にはもう日が随分と傾いていた。
そのあとはまた商店街をまわって、池のベンチで少し休んで。
お料理のことを少し考えてたら。
「ねえセリーヌ。まだ料理のことを考えてるの?」
「ああ、ごめんなさいギディオン様。ついつい他のメニューのことも考えてしまって」
「謝らなくていいよ。私はセリーヌが作ってくれる料理はほんと楽しみで、好きだからね」
そうあたしの目を覗き込むギディオン様。
「それにね。今日の出来事で確信したこともあるんだ」
え?
「タカスギ家のご先祖様はね、大昔に異世界からやってきた人だったんだよ」
ああ、やっぱり。
「って言うかこのベルクマールが公国としてあった時代はね、異世界からの転移者や転生者がたくさんいたって話なんだ」
「え??」
「うちの家系にしたってそうさ。元々の勇者も、大予言者だった公主も、異世界、それも日本って言う国の記憶を持って生まれた転生者だったっていう言い伝えもあるんだよ」
「それ!! ほんとですか!!?」
「はは。嘘なんかつかないよ。だって、君もそうじゃないのかい? 君の作るオムライスもハンバーグも、そんな異世界の料理だよね?」
あああああ・・・
「あたしがそんな転生者だって話したら、ギディオン様に変だと思われちゃうと思ってました……。だから、言い出せなくって……」
「やっぱり君には異世界の記憶があるんだね。はは。変だなんてとんでもないよ。私たちのご先祖様もそうだったんだから、私がそんなふうに思うわけないから安心して」
心の壁が溶ける。
今までどうしても言い出せなかったあたしの秘密。
そんなわだかまりがすーっと溶けていくようで。
この人には、あたしの全部をわかってもらいたい。
あたしは記憶を取り戻したあの日のこと。そこからの全てを順番にギディオン様に話した。
「そうか。そうだったんだね」
優しいお顔でそう相槌を打ちながら話を聞いてくれるギディオン様に。
やっぱり、この人を好きで、好きになって良かった。そう思った。
♢ ♢ ♢
お部屋に帰ってお夕食を頂いて、お風呂にゆっくりと入って。
なんだかいろんなことがあって心がざわついている。
それにしても、ご先祖様も転生者だったなんて。なんだか不思議。
っていうかほんともう何千年も前の出来事だよね初代の勇者様の時代だなんて。
そんな年代が離れた今と昔におんなじ年代の日本から転生だなんてちょっと理解が追いつかないけれど。まあ考えてもしょうがない。
時間の流れが違うんだろうって納得するしかないよね?
ただ、歴史上の人物としか思えてなかったご先祖様にすっごく親近感を覚えて。
ギディオン様にはあたしの味付け魔法のことも話した。
そこを秘密にしてもしょうがないしね?
「ああ、だから君の作ったドーナツを食べると元気になったんだ。納得したよ」
そう笑って仰ってくれたギディオン様。
ふふ。
もう遠慮はいらないから、今度はどんなお味のお料理を作ってあげようかな。
そう考えるのがすごく楽しくて、嬉しかった。
そのあとはまた商店街をまわって、池のベンチで少し休んで。
お料理のことを少し考えてたら。
「ねえセリーヌ。まだ料理のことを考えてるの?」
「ああ、ごめんなさいギディオン様。ついつい他のメニューのことも考えてしまって」
「謝らなくていいよ。私はセリーヌが作ってくれる料理はほんと楽しみで、好きだからね」
そうあたしの目を覗き込むギディオン様。
「それにね。今日の出来事で確信したこともあるんだ」
え?
「タカスギ家のご先祖様はね、大昔に異世界からやってきた人だったんだよ」
ああ、やっぱり。
「って言うかこのベルクマールが公国としてあった時代はね、異世界からの転移者や転生者がたくさんいたって話なんだ」
「え??」
「うちの家系にしたってそうさ。元々の勇者も、大予言者だった公主も、異世界、それも日本って言う国の記憶を持って生まれた転生者だったっていう言い伝えもあるんだよ」
「それ!! ほんとですか!!?」
「はは。嘘なんかつかないよ。だって、君もそうじゃないのかい? 君の作るオムライスもハンバーグも、そんな異世界の料理だよね?」
あああああ・・・
「あたしがそんな転生者だって話したら、ギディオン様に変だと思われちゃうと思ってました……。だから、言い出せなくって……」
「やっぱり君には異世界の記憶があるんだね。はは。変だなんてとんでもないよ。私たちのご先祖様もそうだったんだから、私がそんなふうに思うわけないから安心して」
心の壁が溶ける。
今までどうしても言い出せなかったあたしの秘密。
そんなわだかまりがすーっと溶けていくようで。
この人には、あたしの全部をわかってもらいたい。
あたしは記憶を取り戻したあの日のこと。そこからの全てを順番にギディオン様に話した。
「そうか。そうだったんだね」
優しいお顔でそう相槌を打ちながら話を聞いてくれるギディオン様に。
やっぱり、この人を好きで、好きになって良かった。そう思った。
♢ ♢ ♢
お部屋に帰ってお夕食を頂いて、お風呂にゆっくりと入って。
なんだかいろんなことがあって心がざわついている。
それにしても、ご先祖様も転生者だったなんて。なんだか不思議。
っていうかほんともう何千年も前の出来事だよね初代の勇者様の時代だなんて。
そんな年代が離れた今と昔におんなじ年代の日本から転生だなんてちょっと理解が追いつかないけれど。まあ考えてもしょうがない。
時間の流れが違うんだろうって納得するしかないよね?
ただ、歴史上の人物としか思えてなかったご先祖様にすっごく親近感を覚えて。
ギディオン様にはあたしの味付け魔法のことも話した。
そこを秘密にしてもしょうがないしね?
「ああ、だから君の作ったドーナツを食べると元気になったんだ。納得したよ」
そう笑って仰ってくれたギディオン様。
ふふ。
もう遠慮はいらないから、今度はどんなお味のお料理を作ってあげようかな。
そう考えるのがすごく楽しくて、嬉しかった。
627
あなたにおすすめの小説
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる