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夏の夜会。
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「陰鬱令嬢のくせに生意気ね」
「そうよそうよ。貴女なんか公爵さまには相応しくないわ」
夏の夜は納涼を楽しむための夜会が各地で頻繁に開かれる。
爽やかな冷たいシャンパンや、キンキンに冷えたエールが振る舞われ、多くの人が集まってそのお酒の喉越しを楽しむらしい。
そんな中、セラフィーも旦那さまに連れられそんな会の一つに参加していた。
今夜はロックフェラー公爵家で開催された納涼夜会。流石の四大公爵家の筆頭だというその豪奢なお屋敷の大ホールに百人以上の貴族が招待されていて。
立食パーティーの形式だけれど壁には休憩する為の椅子もたくさん用意されていた。
そんな中、挨拶に忙しい旦那様から離れ壁の花に徹していたセラフィーナは美味しそうなソーセージやサラダを頂きながらエールを嗜んでいた。
(普段のおうちの夕食も美味しくて嬉しいけど、こういうのも美味しくて良いですねー)
冷たいエールはシュワシュワとした喉越しがとても美味しくて。
ソーセージもパリっとしててジューシーでエールに合う。
やっぱ夏はこれよねーだなんて一人ホクホクしてた時だった。
わざわざセラフィーナのそばまでやってきて絡んできた二人の令嬢。
セラフィーナには心当たりが無かったけれど、どうやら彼女たちはセラフィーナの事を知っているようだ。
最初は、
「あらあらセラフィーナさんじゃありませんか。あいかわらず壁の花でいらっしゃる?」
「氷結公爵さまに輿入れしたとお伺いしましたけど披露宴もされてないそうで。どうせすぐに捨てられるんじゃありません?」
ほほほ、ほほほと笑い方は上品そうに装って。
それでも言ってることは失礼極まりない。
(もしかして、学生時代のいじめっ子、とかでしょうか?)
そんなふうにも思ってすこし腹が立った。
「氷結公爵ってどなたのことでしょう? もしうちの旦那様のことだとしたら、貴女たち不敬すぎません?」
この二人、見た感じ公爵より下位の貴族にみえる。さきほどみかけたロックフェラー公爵令嬢とは格が違いすぎる。そう感じて。
それなのに、王室とも繋がりがある公爵家に対してあまりにも敬意がなさすぎるんじゃないか。
ジロッと睨んでそう反論したところで彼女たち、セラフィーナの事を生意気だのなんだのと怒り出した。
それにしても、陰鬱令嬢に氷結公爵だなんてひどいあだ名だとあらためて腹が立つ。
旦那様は女性嫌いが高じてそんなあだ名でよばれていたんだろうけれどセラフィーナのそれは内向的とかいうレベルではもうないかもしれない。
学生時代からずっとそんな非常識なあだ名をつけられいじめられていたのだとすれば、ここは少し反撃してもいいかもしれない。そんな気分にもなった。
まあそれでも、そういうことならこの今の状況もわからないでもない、とも思う。
情報をあつめ分かった話ではセラフィーナの実家は貧乏な男爵家だそう。母親も早くに無くして酒に溺れた父とひとり国の役所に勤めながら家を支えている兄がいるだけらしい。
ろくに持参金も用意できず気弱で人とまともに口もきけない陰鬱令嬢では、嫁の貰い手もなかったのだろう。
そういう意味では旦那様のように形だけの妻を望んでいた人には都合が良かったのかもしれない。
正直その辺の事情はセラフィーナにはまだよくわかってなかったけれど、今のところ推測するにそんなところ。
(都合がいいだけの嫁かぁ。それもなんだか気に食わないなぁ)
とそんなことを頭の中で連想していたら、
「なんですか! 今度は無視するんですか!」
「ほんとセラフィーナのくせに生意気だわ!」
と、本性丸出しで怒り出した彼女たち。
「貴女なんかこうよ!」
そういうや手に持っていたグラスをこちらに向かってぶちまける。
真っ赤なワインが飛沫をあげてセラフィーナにかかろうとした瞬間、それは空間の壁に弾かれるようにグラスをぶちまけた彼女の方にはね返った。
「そうよそうよ。貴女なんか公爵さまには相応しくないわ」
夏の夜は納涼を楽しむための夜会が各地で頻繁に開かれる。
爽やかな冷たいシャンパンや、キンキンに冷えたエールが振る舞われ、多くの人が集まってそのお酒の喉越しを楽しむらしい。
そんな中、セラフィーも旦那さまに連れられそんな会の一つに参加していた。
今夜はロックフェラー公爵家で開催された納涼夜会。流石の四大公爵家の筆頭だというその豪奢なお屋敷の大ホールに百人以上の貴族が招待されていて。
立食パーティーの形式だけれど壁には休憩する為の椅子もたくさん用意されていた。
そんな中、挨拶に忙しい旦那様から離れ壁の花に徹していたセラフィーナは美味しそうなソーセージやサラダを頂きながらエールを嗜んでいた。
(普段のおうちの夕食も美味しくて嬉しいけど、こういうのも美味しくて良いですねー)
冷たいエールはシュワシュワとした喉越しがとても美味しくて。
ソーセージもパリっとしててジューシーでエールに合う。
やっぱ夏はこれよねーだなんて一人ホクホクしてた時だった。
わざわざセラフィーナのそばまでやってきて絡んできた二人の令嬢。
セラフィーナには心当たりが無かったけれど、どうやら彼女たちはセラフィーナの事を知っているようだ。
最初は、
「あらあらセラフィーナさんじゃありませんか。あいかわらず壁の花でいらっしゃる?」
「氷結公爵さまに輿入れしたとお伺いしましたけど披露宴もされてないそうで。どうせすぐに捨てられるんじゃありません?」
ほほほ、ほほほと笑い方は上品そうに装って。
それでも言ってることは失礼極まりない。
(もしかして、学生時代のいじめっ子、とかでしょうか?)
そんなふうにも思ってすこし腹が立った。
「氷結公爵ってどなたのことでしょう? もしうちの旦那様のことだとしたら、貴女たち不敬すぎません?」
この二人、見た感じ公爵より下位の貴族にみえる。さきほどみかけたロックフェラー公爵令嬢とは格が違いすぎる。そう感じて。
それなのに、王室とも繋がりがある公爵家に対してあまりにも敬意がなさすぎるんじゃないか。
ジロッと睨んでそう反論したところで彼女たち、セラフィーナの事を生意気だのなんだのと怒り出した。
それにしても、陰鬱令嬢に氷結公爵だなんてひどいあだ名だとあらためて腹が立つ。
旦那様は女性嫌いが高じてそんなあだ名でよばれていたんだろうけれどセラフィーナのそれは内向的とかいうレベルではもうないかもしれない。
学生時代からずっとそんな非常識なあだ名をつけられいじめられていたのだとすれば、ここは少し反撃してもいいかもしれない。そんな気分にもなった。
まあそれでも、そういうことならこの今の状況もわからないでもない、とも思う。
情報をあつめ分かった話ではセラフィーナの実家は貧乏な男爵家だそう。母親も早くに無くして酒に溺れた父とひとり国の役所に勤めながら家を支えている兄がいるだけらしい。
ろくに持参金も用意できず気弱で人とまともに口もきけない陰鬱令嬢では、嫁の貰い手もなかったのだろう。
そういう意味では旦那様のように形だけの妻を望んでいた人には都合が良かったのかもしれない。
正直その辺の事情はセラフィーナにはまだよくわかってなかったけれど、今のところ推測するにそんなところ。
(都合がいいだけの嫁かぁ。それもなんだか気に食わないなぁ)
とそんなことを頭の中で連想していたら、
「なんですか! 今度は無視するんですか!」
「ほんとセラフィーナのくせに生意気だわ!」
と、本性丸出しで怒り出した彼女たち。
「貴女なんかこうよ!」
そういうや手に持っていたグラスをこちらに向かってぶちまける。
真っ赤なワインが飛沫をあげてセラフィーナにかかろうとした瞬間、それは空間の壁に弾かれるようにグラスをぶちまけた彼女の方にはね返った。
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