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セラという名で。
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きゃぁ! と、声をあげるそのいじめっ子令嬢。
「あらあら。手を滑らせたのですか? せっかくの白のドレスがワインで真っ赤になってますわよ? すぐに染み抜きしないとたいへんだわ」
実はセラフィーナの魔法、アウラの空間魔法だったのだけれどそんなことおくびにもださずしれっとそう言ってやると、キッとこちらを睨んで。そのまま二人揃ってすごすごと退出していったのだった。
「強いんだな。君は」
(旦那様!? もしかしてずっと見てたの!!?)
いつの間にかそばにいたらしい彼がそう呟いた。
「一部始終、見ていらっしゃったのですか?」
ちょっと拗ねた顔をしてみせる。
「君はもっと気弱な人だと思っていたよ。しかし。濡れなくて良かった。そのドレス、君のお気に入りなのだろう?」
お気に入りなわけないでしょう!
思わずそういいかけてやめた。
婚姻の日に着てきた水色のシフォンドレス。
こういう場に着て来れるのはこれしかないから着ているだけだったのに。
やっぱりこの人はセラフィーナ自身のことになんか興味ないんだろうな。なんて考え彼のその顔をまじまじみると。
なんだか少しだけやさしいお顔に見える。
冷酷そうないつもの目じゃない。
(もしかして呆れていらっしゃる?)
のかもしれないなぁと、ちょっとだけ天を仰いだ。
実はあれからセラフィーナは街にこっそりと出向き偽名、セラと言う名で冒険者登録も済ませていた。
自分の下着くらい自分で買わなきゃと、お金を稼ぐ手段が欲しかったからだ。
あれが欲しいこれが欲しいだなんて贅沢を言うつもりはなかったけど、必要最低限の身の回りのものはなんとかしたくって。
だけれど、「下着の替えが無いから買って欲しい」だなんてセバスに言いたくは無かった。
もちろんドレスが欲しいだなんてことも言えないままこうして一張羅のドレスであちらこちら出向いていたのだ。
まあ、冒険者としての稼ぎもあんまり派手に立ち回ることもできない分しれている。
それでも身の回りの着替えくらいはなんとか自分で調達してるわけだけれど。
旦那様は、セラフィーナのそんな私物は実家から持ってきたんだろうくらいに思ってそうだし、そう思わせておこうと思ったのも彼女自身なのだけれど。それでも、
(もう少しくらい……)
こちらのことを知ろうとしてもいいんじゃない?
そうも思ってしまうのだ。
夜会はそのあとは特に何もなく終わった。
わざわざ壁の花をしているセラフィーナに話しかけてくるような奇特な貴族もいなかったし、令嬢方はみな旦那様、ルークヴァルトを遠目に見るだけで近づいても来なかった。
いろんな種類のソーセージを堪能し、白いエール黒いエール琥珀色の綺麗なエールといっぱい楽しんだセラフィーナは、ほろ酔いで気分も良くなって始終笑っていた。
隣にずっといてくれた旦那様の苦笑いをしたお顔も、申し訳ないなぁとは思いつつどうしようもないと諦めて。
「あらあら。手を滑らせたのですか? せっかくの白のドレスがワインで真っ赤になってますわよ? すぐに染み抜きしないとたいへんだわ」
実はセラフィーナの魔法、アウラの空間魔法だったのだけれどそんなことおくびにもださずしれっとそう言ってやると、キッとこちらを睨んで。そのまま二人揃ってすごすごと退出していったのだった。
「強いんだな。君は」
(旦那様!? もしかしてずっと見てたの!!?)
いつの間にかそばにいたらしい彼がそう呟いた。
「一部始終、見ていらっしゃったのですか?」
ちょっと拗ねた顔をしてみせる。
「君はもっと気弱な人だと思っていたよ。しかし。濡れなくて良かった。そのドレス、君のお気に入りなのだろう?」
お気に入りなわけないでしょう!
思わずそういいかけてやめた。
婚姻の日に着てきた水色のシフォンドレス。
こういう場に着て来れるのはこれしかないから着ているだけだったのに。
やっぱりこの人はセラフィーナ自身のことになんか興味ないんだろうな。なんて考え彼のその顔をまじまじみると。
なんだか少しだけやさしいお顔に見える。
冷酷そうないつもの目じゃない。
(もしかして呆れていらっしゃる?)
のかもしれないなぁと、ちょっとだけ天を仰いだ。
実はあれからセラフィーナは街にこっそりと出向き偽名、セラと言う名で冒険者登録も済ませていた。
自分の下着くらい自分で買わなきゃと、お金を稼ぐ手段が欲しかったからだ。
あれが欲しいこれが欲しいだなんて贅沢を言うつもりはなかったけど、必要最低限の身の回りのものはなんとかしたくって。
だけれど、「下着の替えが無いから買って欲しい」だなんてセバスに言いたくは無かった。
もちろんドレスが欲しいだなんてことも言えないままこうして一張羅のドレスであちらこちら出向いていたのだ。
まあ、冒険者としての稼ぎもあんまり派手に立ち回ることもできない分しれている。
それでも身の回りの着替えくらいはなんとか自分で調達してるわけだけれど。
旦那様は、セラフィーナのそんな私物は実家から持ってきたんだろうくらいに思ってそうだし、そう思わせておこうと思ったのも彼女自身なのだけれど。それでも、
(もう少しくらい……)
こちらのことを知ろうとしてもいいんじゃない?
そうも思ってしまうのだ。
夜会はそのあとは特に何もなく終わった。
わざわざ壁の花をしているセラフィーナに話しかけてくるような奇特な貴族もいなかったし、令嬢方はみな旦那様、ルークヴァルトを遠目に見るだけで近づいても来なかった。
いろんな種類のソーセージを堪能し、白いエール黒いエール琥珀色の綺麗なエールといっぱい楽しんだセラフィーナは、ほろ酔いで気分も良くなって始終笑っていた。
隣にずっといてくれた旦那様の苦笑いをしたお顔も、申し訳ないなぁとは思いつつどうしようもないと諦めて。
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