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セラフィーナじゃ、ない。
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月のあかりがキラキラと輝いてあたり一面を照らしていた。
流石にこんなキャンプ地の身を隠す場所に乏しい場所でこうして立ち尽くすのには工夫が必要だ。
周囲に次元の壁を張り空間を捻じ曲げることで、セラフィーナの姿は遠目からは見えなくなっていた。
(まあそれでも旦那様の寝所の方向だけは開いてるから、そっち方面からは見えちゃうんだけどね)
急造のテントが立ち並ぶ中そこまで身を隠す場所があるわけでもない。ここはたまたまもともと打ち捨てられた井戸があった場所の周囲であったため、セラフィーナはそんな井戸小屋の影に身を隠していた。
そうしてこっそりルークヴァルトの寝所のテントを眺めながら、クロムが上手く手紙と荷物を置いてこれるか考えているとほかのいろんなことも頭に浮かんでくる。
中でも一番に疑問なのは、変わりすぎたルークヴァルトの態度。
セラフィーナの事などただの契約婚のお飾り妻だと言って興味もなかったくせに。
あの事件のあと急に愛してるって言ってくるようになったこと。
あれは危機に陥って助けられたことによる一時の気の迷いみたいなものじゃないのか?
本当のセラフィーナを知ったら逆にまた嫌われてしまうのじゃないのか?
そもそも女性がお嫌いで今でもセラフィーナ以外の人には冷たい態度のままの彼。
セラフィーナが彼の望むように大人しくして居なかったことで、呆れてしまわれるんじゃないか。
怒って、またセラフィーナのことなど知らない、と、無視をされてしまうようになったら……。
それはやっぱり嫌、だ。
自分の中の彼に対する気持ちは恋愛ではない。そう認識しているはず。
それでも、嫌われたくないと強く思うこの気持ち……。
これって一体なんだろう。
もしかしたら、記憶を失う前のセラフィーナの心がそう思わせているのだろうか?
今の自分の中にある記憶は、魔女エメラだった頃が6割、セラフィーナとして生まれた後が4割をしめている。
それでも今の自分はやっぱり過去のセラフィーナと一緒じゃない。
あの時どうしたああしたっていう記憶だけならわかっても、その時どんな気持ちだったのかはいまだにほとんど理解できないのだ。
自己の同一性というものを考えてしまったら、やっぱりどうしても自分と過去のセラフィーナは、「違う」って、そう思ってしまうから。
自分はやっぱりセラフィーナじゃないんじゃないか。もしかして過去のセラフィーナだった心はもういないんじゃないか。
そんなことをうだうだ考えている時だった。
「セラフィーナ!」
と。そう呼ぶ声にはっとして。
流石にこんなキャンプ地の身を隠す場所に乏しい場所でこうして立ち尽くすのには工夫が必要だ。
周囲に次元の壁を張り空間を捻じ曲げることで、セラフィーナの姿は遠目からは見えなくなっていた。
(まあそれでも旦那様の寝所の方向だけは開いてるから、そっち方面からは見えちゃうんだけどね)
急造のテントが立ち並ぶ中そこまで身を隠す場所があるわけでもない。ここはたまたまもともと打ち捨てられた井戸があった場所の周囲であったため、セラフィーナはそんな井戸小屋の影に身を隠していた。
そうしてこっそりルークヴァルトの寝所のテントを眺めながら、クロムが上手く手紙と荷物を置いてこれるか考えているとほかのいろんなことも頭に浮かんでくる。
中でも一番に疑問なのは、変わりすぎたルークヴァルトの態度。
セラフィーナの事などただの契約婚のお飾り妻だと言って興味もなかったくせに。
あの事件のあと急に愛してるって言ってくるようになったこと。
あれは危機に陥って助けられたことによる一時の気の迷いみたいなものじゃないのか?
本当のセラフィーナを知ったら逆にまた嫌われてしまうのじゃないのか?
そもそも女性がお嫌いで今でもセラフィーナ以外の人には冷たい態度のままの彼。
セラフィーナが彼の望むように大人しくして居なかったことで、呆れてしまわれるんじゃないか。
怒って、またセラフィーナのことなど知らない、と、無視をされてしまうようになったら……。
それはやっぱり嫌、だ。
自分の中の彼に対する気持ちは恋愛ではない。そう認識しているはず。
それでも、嫌われたくないと強く思うこの気持ち……。
これって一体なんだろう。
もしかしたら、記憶を失う前のセラフィーナの心がそう思わせているのだろうか?
今の自分の中にある記憶は、魔女エメラだった頃が6割、セラフィーナとして生まれた後が4割をしめている。
それでも今の自分はやっぱり過去のセラフィーナと一緒じゃない。
あの時どうしたああしたっていう記憶だけならわかっても、その時どんな気持ちだったのかはいまだにほとんど理解できないのだ。
自己の同一性というものを考えてしまったら、やっぱりどうしても自分と過去のセラフィーナは、「違う」って、そう思ってしまうから。
自分はやっぱりセラフィーナじゃないんじゃないか。もしかして過去のセラフィーナだった心はもういないんじゃないか。
そんなことをうだうだ考えている時だった。
「セラフィーナ!」
と。そう呼ぶ声にはっとして。
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