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黒髪の美丈夫。
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この世界はマナの泡の表面のようなもの、物質はそんな泡の表面の波のようなものだ。
儚い、そんな夢のような世界。
そんな泡はくっついたり離れたりしながら「時空」というものを綴っている。
エーテルの海にはそんな時空がいくつもいくつもそれこそ泡の数ほど無数に浮かび、魔結晶の開ける穴はそんな時空同士を一瞬繋ぐゲートとなる。
でも。
一つだけ、そんな別世界との穴ではなく、この世界そのものに穿つ穴が開くこともある。
通常の異世界ではないそこ、この世界と表裏一体となっていつもすぐそこにあるそこ。
魔界。
空間を司る泡の表面にあるものが「マナ」であった場合。
その泡の裏側には「魔素」が存在している。
表面に人間が生まれ生活していると同じように、動植物が育まれているのと同じように、裏面の魔界には魔人や魔獣が住むという。
そんな世界が。
魔導士らが魔法陣によって魔結晶を起動させ呼び出すゲートはそれこそどこに繋がるかは保証されない。
エーテルの海を常に移動して時空でさえ全く異なる異世界とを自由に行き来する技術は今のこの世界にはない。
多分そんなことができるのは「神」だけだろう。そうセラフィーナは思っている。
神が使わした、神デウスの使徒であるギアにしても、その上位存在であるマ・ギアであっても、そんなことは出来はしなかった。
でも?
座標がはっきりわかっている魔界なら?
この空間にどこでもいい、時空の穴を開けてそこから魔素が溢れてくるなら、そこは魔界と繋がっていることになる。
空間の表と裏の、そんな関係である魔界なら。
「あなたは、魔界で楽しんでいるものとばっかり思っていたわ」
「ふん、デウスに言われたのでなかったら、だれがあんな場所で満足するか。退屈しかなかったよ。あそこは」
「こっちにいたら世界を壊すでしょう? あなたはそういう存在だもの」
「厄災竜、か。そんなものは人が勝手につけた名前であろう? 人は神にも等しい力を持つこの俺を恐れていたからな」
「だって、いく先々で人の住む里を壊して回ったら、そう思われて当然よね」
「おまえはほんとに白竜と同じことを言うな。やつはどうしてる?」
「わからないわ……。わたし、記憶が抜けてるの。全部を覚えていないのよ。それに、今は人間だし」
「おまえが人間か。ふん、聖女マリアのような事をいう。やつのように輪廻の輪に囚われたとでもいうのか? お前が?」
なにを馬鹿な事をとでも言わんばかりに鼻を鳴らす男性。
セラフィーナの目の前に立つのは漆黒の長い髪に切れ長の目をした背の高い美丈夫だった。
溢れていた魔素はだんだんとおさまり、その姿もくっきりと見えてきたところで。
「そういうあなたもすっかり人間の美男子にみえるわよ。どういう気の変わりようかしら?」
以前には人型になる時も決して隠そうとしなかった竜のツノ。それをいまは完全に消している。
「そうだな。穴を開ける呼水となった人間のマナが影響してるのやもしれんな。其奴の記憶が少し流れてきておるよ。ふむ。なかなか無粋な事を考えるものだな、人間とは」
「無粋なこと?」
「ああ。この国に混沌を撒き散らし混乱に陥れた所で隣国と組んで王家を倒す、つもりであったそうだよ」
「なんて事」
「ふむ。事情はだいたい理解した。どうだ、一つこの俺が手を貸してやろうか?」
不敵に笑うその美丈夫。セラフィーナにはその真意は計りかねた。
「どういうことよ!?」
「なあに。俺がこの領地の主ラカン・マキアベリとして事をおさめてやろう。其奴の記憶は全てここにあるからな。その代わり」
「そのかわり?」
「しばらくこの国で暮らすのも面白そうだ。おまえがいるなら尚更な」
そう、大きな口を開きガハハと笑った。
儚い、そんな夢のような世界。
そんな泡はくっついたり離れたりしながら「時空」というものを綴っている。
エーテルの海にはそんな時空がいくつもいくつもそれこそ泡の数ほど無数に浮かび、魔結晶の開ける穴はそんな時空同士を一瞬繋ぐゲートとなる。
でも。
一つだけ、そんな別世界との穴ではなく、この世界そのものに穿つ穴が開くこともある。
通常の異世界ではないそこ、この世界と表裏一体となっていつもすぐそこにあるそこ。
魔界。
空間を司る泡の表面にあるものが「マナ」であった場合。
その泡の裏側には「魔素」が存在している。
表面に人間が生まれ生活していると同じように、動植物が育まれているのと同じように、裏面の魔界には魔人や魔獣が住むという。
そんな世界が。
魔導士らが魔法陣によって魔結晶を起動させ呼び出すゲートはそれこそどこに繋がるかは保証されない。
エーテルの海を常に移動して時空でさえ全く異なる異世界とを自由に行き来する技術は今のこの世界にはない。
多分そんなことができるのは「神」だけだろう。そうセラフィーナは思っている。
神が使わした、神デウスの使徒であるギアにしても、その上位存在であるマ・ギアであっても、そんなことは出来はしなかった。
でも?
座標がはっきりわかっている魔界なら?
この空間にどこでもいい、時空の穴を開けてそこから魔素が溢れてくるなら、そこは魔界と繋がっていることになる。
空間の表と裏の、そんな関係である魔界なら。
「あなたは、魔界で楽しんでいるものとばっかり思っていたわ」
「ふん、デウスに言われたのでなかったら、だれがあんな場所で満足するか。退屈しかなかったよ。あそこは」
「こっちにいたら世界を壊すでしょう? あなたはそういう存在だもの」
「厄災竜、か。そんなものは人が勝手につけた名前であろう? 人は神にも等しい力を持つこの俺を恐れていたからな」
「だって、いく先々で人の住む里を壊して回ったら、そう思われて当然よね」
「おまえはほんとに白竜と同じことを言うな。やつはどうしてる?」
「わからないわ……。わたし、記憶が抜けてるの。全部を覚えていないのよ。それに、今は人間だし」
「おまえが人間か。ふん、聖女マリアのような事をいう。やつのように輪廻の輪に囚われたとでもいうのか? お前が?」
なにを馬鹿な事をとでも言わんばかりに鼻を鳴らす男性。
セラフィーナの目の前に立つのは漆黒の長い髪に切れ長の目をした背の高い美丈夫だった。
溢れていた魔素はだんだんとおさまり、その姿もくっきりと見えてきたところで。
「そういうあなたもすっかり人間の美男子にみえるわよ。どういう気の変わりようかしら?」
以前には人型になる時も決して隠そうとしなかった竜のツノ。それをいまは完全に消している。
「そうだな。穴を開ける呼水となった人間のマナが影響してるのやもしれんな。其奴の記憶が少し流れてきておるよ。ふむ。なかなか無粋な事を考えるものだな、人間とは」
「無粋なこと?」
「ああ。この国に混沌を撒き散らし混乱に陥れた所で隣国と組んで王家を倒す、つもりであったそうだよ」
「なんて事」
「ふむ。事情はだいたい理解した。どうだ、一つこの俺が手を貸してやろうか?」
不敵に笑うその美丈夫。セラフィーナにはその真意は計りかねた。
「どういうことよ!?」
「なあに。俺がこの領地の主ラカン・マキアベリとして事をおさめてやろう。其奴の記憶は全てここにあるからな。その代わり」
「そのかわり?」
「しばらくこの国で暮らすのも面白そうだ。おまえがいるなら尚更な」
そう、大きな口を開きガハハと笑った。
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