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信用。

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 信用していいのか?
 一瞬そう逡巡する。
 しかし。

 まあそこまで悪く思うこともないか。そう考え直して。

 昔から何度もぶつかってきた記憶がある。
 白竜のおじいさまと暮らしていた時の記憶がふわっと蘇って。
 ああ、なんで忘れていたんだろう。なんでおじいさまとの幸せだった暮らしを忘れてしまっていたんだろう。
 そう、額にに手をやる。

 鼓動がなぜか激しくなっている。
 まだ、思い出せてないことがあるんだろうか?
 それが怖くなって。
 しかし。あの笑顔は、黒竜ブラドのあの笑みは、昔に何度も見たことがあった。
 馴れ馴れしいブラドに同じように答え返していたものの、そこまで親密であったかと言われればそこまでは思い出せない。
 それでも、彼は信用できるのかも。だんだんとそんなふうにも思い始めて。

「信用して、いいの?」

「はは。信用? おかしな事を。かつて俺はおまえを裏切ったことがあったか?」

「思い出せないのよ」

「そうか。ならば思い出すまでおまえのそばにいるとしよう」

 そう言ってブラドは一本の見えざる手をセラフィーナに向けて伸ばす。

 拒否、できなかった。

 それはスルッとセラフィーナの心のゲートを抜け、すうっと魂の底にまで落ちていく。

 心の壁を素通りし、スルッと、ふんわりと、落ちて。
 心地よい。そんな肌触りのするブラドの心が触れた。

「俺はおまえの敵ではないよ。だからそう固くなるな。おまえがいる、そう感じたからこそ世界に開いた穴にわざわざ入ってきたのだから」

 そんなブラドの声は、思ったよりも優しくて。
 セラフィーナはただただ頷くだけしかできなかった。


 右手をサッと上に掲げるブラド。
 そのまま魔法陣を数枚浮かせ、パチンとゆびを鳴らす。

 パラン

 間の空間が一瞬にして弾け、元の部屋へと戻っていた。

「セラフィーナ!!」

 外から、中に入ろうとガタガタと扉を押す音が聞こえた。







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