お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!

友坂 悠

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第二部。

女神。

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 壁の前までくると、銀色の扉がスーッと横開きに開いた。

 驚き立ち止まろうとするシルフィーナに、「大丈夫ですよ。こちらに」と優しく手をひくジェラルド。

 白が基調の室内には天井に大きなシャンデリアが見えるだけ、中は割と広いけれどそこにはおおよそ人のいる気配は感じない。
 机も椅子も、箪笥やカーテン、カーペットといった通常の貴族の屋敷や宮殿にはつきもののそういった装飾もいっさいみあたらなかった。

 後ろの扉が、スーッと閉まる。
 ドキン、と、自分の心臓の音だけが耳に響く。

「あの、ジェラルド、様?」

 我慢ができなくてそう呟くように尋ねたシルフィーナに、ジェラルド。

「まあ、ちょっと変わってるんだ。アグリッパ様は。人間嫌いにも度がすぎててね」

 そう、申し訳なさげな顔を向ける。


「もう、流石に出てきてくださいよ叔父さん。あんなに会いたがっていたシルフィーナ嬢ですよ?」

 そう、部屋の中央に向かって声を張り上げる彼。

(わたくし、歓迎されていないのかしら)

 確かに最初は魔道士の塔側が望んだことではあったのだろう。
 でもそれも数年前の事。

(きっと当時とは事情が変わったのに違いないわ)

 そう、考えてしまう。

(わたくしなんか、やっぱりこんなところに来るべきじゃなかったのだわ)

 そうやって萎縮して。

 サイラス様は、もっと自信を持っていいよと言ってくださった。
 それでも。

 すぐにそんな自信は剥がれていく。



 《ソファーを出そう。まずそこに座ってくつろいでほしい》

 部屋の中に、そんな声が響き渡る。

 え?

 っと、そう思った時には。

 部屋の奥から四角い塊が動いて近づいてきたかと思ったら、中央に止まり展開。
 そしてそれは長椅子のような形へ変化していった。

 びっくりしてジェラルドの方を見ると。

「驚かせてごめんね。シルフィーナ様。とりあえずここに腰掛けて」

 そうソファーまでエスコートされた。




 見かけによらずふわふわな白いソファー。これがさっきまで白い塊にしか見えなかったものだなんて。
 言われるままそこに腰掛けると、奥からワゴンを押した猫型のオート・マタがひょこひょこと歩いてくる。
(以前図書館で見た着ぐるみと似てるけれど少し違うかしら?)
 そんな感想を持ったシルフィーナ。

「いらっしゃいませお嬢様。お茶をどうぞ」

 可愛らしい声でそう言う猫型の着ぐるみに、緊張していた心が少し和んで。
 お嬢様、ではないのだけど。そう思いつつ。

「ありがとう。いただくわ」

 と素直に答える。

 押してきたワゴンの一部がスルルと変形し、ソファーのすぐ横でこじんまりしたサイドチェストに変わる。
 かちゃかちゃと茶器を並べて器用に紅茶を注ぐその猫。
 そんな姿に微笑ましく思っているとまた空から声が聞こえた。

 《やはり。君の中には女神様がいらっしゃるようだ》
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