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第二部。
祭祀。
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聖緑祭は、つつがなく始まった。
まず貴族や来賓が集まる中、聖女宮に設られた祭壇の前で、王による挨拶が行われる。
例年であれば代理として王太子がその任にあたることも多かったが、今回は帝国の皇太子一行が来賓として出席しているとあって、オクタビアヌス・ユリウス・アルメルセデス王陛下が自ら壇上に立ったのだった。
聖女宮広場は一般に解放され、そこでは色とりどりの屋台が立ち並んでいた。
彼らは聖女宮内部での式典の様子を窺い知ることはなかったが、翌日に控えた神楽舞台での聖剣の舞を楽しみにしていた。
二日間にわたる聖緑祭は、神に護られた国アルメルセデスにおける最大の行事であり、国家の威信をかけて行われる神事として長年親しまれてきた。
この日ばかりは周辺各国からの来訪客も増え、まるでこの国が世界の中心であるかのように錯覚する。
人々は、神を信じそしてその御力に縋る。
今年も豊作でありますように、と。
命の糧が豊富に降り注ぎますように、と。
そう願って。
シルフィーナは今日はなぜか聖女宮のホールにいた。
場違い、そう思ってはみたものの、招待状を受け取ってしまったのだからしょうがない。
そう思うしか無かった。
差出人はウイリアムス王太子。
そこにはアグリッパの名前も連名で書かれていた。
この場にいるのは王族と来賓、そして聖女宮関係者を除けば四大公爵家の面々と主な貴族の当主のみ。
エヴァンジェリンが凖聖女に推挙するとは言っていたものの、そう正式に任命されたわけでもない。
なおさら、未だ学びの途中であるシルフィーナにとって、そうした役職であってもすんなり受けるのには抵抗があった。
それなのに。
サイラスは今日明日は騎士団を統率する責任者としてこの聖緑祭全体の警備にあたっている。
であるから。
ウイリアムス王太子の招待状には、サイラスの代わり、スタンフォード侯爵家当主代理としてここに参列するようにとの要請が述べられていた。
それならばと。
筋が通っていなくもないとサイラスがそれに同意をした。
もうシルフィーナ本人には拒否をする選択肢は残されていなかったのだ。
「お姉様、そう硬くならないで。自然体でいらっしゃればよいのですよ?」
「ああ、エヴァンジェリン様。それでもわたくし……」
周囲は高位貴族の当主ばかり。
女性の姿は公爵家の夫人か聖女宮の関係者しかいなかった。
それに、聖女宮の関係者、スタッフはみな周囲でそれぞれ役目についている。
現聖女マリアンナ・フォルクス公爵令嬢と、聖女庁長官であるアウレリア・コット・ロックフェラー元王女は祭壇のひな壇の上に並んでいる。
周囲にこうして気安く話せる女性はエヴァンジェリンしか居なかったのだった。
それでも。
エヴァンジェリンに声をかけられて少しだけ緊張もほどけてみると。
周囲に響く厳かなパイプオルガンの音色が心に染み渡って。
天井にぐるっとはられたステンドグラスから差し込む幻想的な光りが祭壇の中央を照らしているのがわかる。
式典は厳かな雰囲気のまま進行して、やがて祭主である現聖女の祝詞が聞こえてきた。
来賓席の筆頭に座る帝国皇太子と皇女の二人も、その祝詞に聞き入っているのが表情でわかる。
サラ様も今日のこの聖緑祭を楽しんでくださっているのかな。
そう思うと心が少しだけ温かくなる。
何回かの休憩を挟み、式典は続いて。
来賓を代表して帝国皇太子アルブレヒト殿下の祝辞が述べられた後、だった。
貴族席のシルフィーナからしたらちょうど反対側の席に、黒い靄が巻き起こった。
それは、すぐには皆気がついていないようだったけれど、シルフィーナにはその靄がくっきりと見えて。
まず貴族や来賓が集まる中、聖女宮に設られた祭壇の前で、王による挨拶が行われる。
例年であれば代理として王太子がその任にあたることも多かったが、今回は帝国の皇太子一行が来賓として出席しているとあって、オクタビアヌス・ユリウス・アルメルセデス王陛下が自ら壇上に立ったのだった。
聖女宮広場は一般に解放され、そこでは色とりどりの屋台が立ち並んでいた。
彼らは聖女宮内部での式典の様子を窺い知ることはなかったが、翌日に控えた神楽舞台での聖剣の舞を楽しみにしていた。
二日間にわたる聖緑祭は、神に護られた国アルメルセデスにおける最大の行事であり、国家の威信をかけて行われる神事として長年親しまれてきた。
この日ばかりは周辺各国からの来訪客も増え、まるでこの国が世界の中心であるかのように錯覚する。
人々は、神を信じそしてその御力に縋る。
今年も豊作でありますように、と。
命の糧が豊富に降り注ぎますように、と。
そう願って。
シルフィーナは今日はなぜか聖女宮のホールにいた。
場違い、そう思ってはみたものの、招待状を受け取ってしまったのだからしょうがない。
そう思うしか無かった。
差出人はウイリアムス王太子。
そこにはアグリッパの名前も連名で書かれていた。
この場にいるのは王族と来賓、そして聖女宮関係者を除けば四大公爵家の面々と主な貴族の当主のみ。
エヴァンジェリンが凖聖女に推挙するとは言っていたものの、そう正式に任命されたわけでもない。
なおさら、未だ学びの途中であるシルフィーナにとって、そうした役職であってもすんなり受けるのには抵抗があった。
それなのに。
サイラスは今日明日は騎士団を統率する責任者としてこの聖緑祭全体の警備にあたっている。
であるから。
ウイリアムス王太子の招待状には、サイラスの代わり、スタンフォード侯爵家当主代理としてここに参列するようにとの要請が述べられていた。
それならばと。
筋が通っていなくもないとサイラスがそれに同意をした。
もうシルフィーナ本人には拒否をする選択肢は残されていなかったのだ。
「お姉様、そう硬くならないで。自然体でいらっしゃればよいのですよ?」
「ああ、エヴァンジェリン様。それでもわたくし……」
周囲は高位貴族の当主ばかり。
女性の姿は公爵家の夫人か聖女宮の関係者しかいなかった。
それに、聖女宮の関係者、スタッフはみな周囲でそれぞれ役目についている。
現聖女マリアンナ・フォルクス公爵令嬢と、聖女庁長官であるアウレリア・コット・ロックフェラー元王女は祭壇のひな壇の上に並んでいる。
周囲にこうして気安く話せる女性はエヴァンジェリンしか居なかったのだった。
それでも。
エヴァンジェリンに声をかけられて少しだけ緊張もほどけてみると。
周囲に響く厳かなパイプオルガンの音色が心に染み渡って。
天井にぐるっとはられたステンドグラスから差し込む幻想的な光りが祭壇の中央を照らしているのがわかる。
式典は厳かな雰囲気のまま進行して、やがて祭主である現聖女の祝詞が聞こえてきた。
来賓席の筆頭に座る帝国皇太子と皇女の二人も、その祝詞に聞き入っているのが表情でわかる。
サラ様も今日のこの聖緑祭を楽しんでくださっているのかな。
そう思うと心が少しだけ温かくなる。
何回かの休憩を挟み、式典は続いて。
来賓を代表して帝国皇太子アルブレヒト殿下の祝辞が述べられた後、だった。
貴族席のシルフィーナからしたらちょうど反対側の席に、黒い靄が巻き起こった。
それは、すぐには皆気がついていないようだったけれど、シルフィーナにはその靄がくっきりと見えて。
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