お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!

友坂 悠

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第二部。

漆黒の闇の鎖。

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「いけません!」

 おもむろに立ち上がりそう叫ぶ帝国皇女、サラ・カッサンドラ=アマテラスの声がホール中に響き渡った。

 気がつくといつの間にか現れたメイド服の女性が数人、皇女の前に集まって。
 彼女を庇うように円陣を組む。

「王よ! 至急退避を!」

 それは帝国皇太子アルブレヒトの声で。
 サラの様子から事態を察したのだろう、ここに居ては危険だと断言するかのようなその鬼気迫る声に、王族席の人々は立ち上がり周囲を確認する。

「何!? あれは!!」
 人の目には見えない漆黒の闇に反応したのは元王女アウレリア。聖女庁長官を務める彼女は祭壇のひな壇の上階より眺め、ホールのほぼ反対側貴族席の左端にいた一人の男性の周囲に闇の鎖が蠢いているのを見てしまって。
 蛇のように湯気のように揺れて立ちのぼるその漆黒の闇、闇の鎖が艶かしくうねる。
 それがかえって気持ち悪く、見てはいけないものを見てしまったようなそんな感覚に陥った。

「マリアンナ様、結界を!」
「ええ、アウレリア様!」

 聖女と元聖女、いや、それは役職としてだけの問題で実際には二人とも現役の聖女であった。
 そんな二人はまず王族が集まるスペースに聖なる結界を構築する。
 魔が入り込まないように、魔による侵食を阻止するための結界。
 あの漆黒の闇が魔に侵された存在であるのは聖女二人にはすぐわかった。
 あれは、危険。
 そうはっきりと認識して。


 各国よりの来賓たちはその中に各国にある聖女宮に仕える聖職者も多くいたおかげか、事態に素早く対応できていた。
 近くにいたサラ皇女の指示により彼女のメイド部隊の数人が退避の護衛につく。
 立ち上った黒い魔力は強力で、通常の魔道士や聖職者では太刀打ちできるものでもなく。
 とにかく無事に避難を、と。
 それだけに集中して。

 そして。

 一番近くにいた貴族席の面々。
 さすがにそこにいたのは侯爵伯爵など貴族のそれも当主たちであったからか。
 むやみやたらと騒ぎ立てるなど見苦しい真似をするものはおらず、貴族の矜持、威厳を保ってその場に留まっていた。
 魔力的も高位の貴族は下位の貴族よりも高い魔力特性値を持つものが多く。
 そして当主ともなればなおさら剣の腕にも自信があるものが多かった。
 しかし。
 いかんせん、高齢であるものも数多く。
 その脅威に迂闊に手を出すこともできずにいたのだった。

「すみません、そこを通してください」

 そんな貴族の当主たちにそう声をかけその隙間を縫うように前にでる者がいた。

 シルフィーナは、自分の危険を顧みることなく、恐怖を感じる心をどこかにやってしまったかのように。
 ただ闇雲に前へと体を動かしていた。

 それが、自分の役割だと。
 そう主張するかのように。
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