お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!

友坂 悠

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第二部。

古い血。

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「ああ。良い気分だ。この力があればきっと私の願いも叶う」

 漆黒の蛇のような鎖をウネウネと体に纏う男性。
 ガレリア辺境伯当主代理としてこの場に参列していた、コーネリアス・フラウレム・ガレリアは、その赤く濁った目をギロっと剥いて、周囲を見渡す。
 自分のこの力に慄く人々を見るにつれその心の奥にできた魔石はどんどんと濁っていった。

 人の心の奥のマナは、魔に侵され結晶化し、そして魔石を産む。
 それは他の動物が魔物に、そして魔獣へと変化するのとなんら変わりがない。
 人が魔人になりうるということは古くは魔法庁、今の魔道士の塔の研究では常識であったけれど、それは禁忌として外部に漏れ出ることはなかった。
 人の心は弱いから、その弱さが自身のレイスが魔に汚染される恐怖に耐えることができない。そう信じられていた。
 魔は人の負の感情を糧に増幅し力を増やす。
 それは、聖なる氣によって浄化されない限り、人の力で抑え込むことは困難でもあった。

 だから。

「あなたは、人を辞めようとするのですか!!?」

 前に出てそんなコーネリアスと対峙したシルフィーナ。かつて見たあの漆黒の魔。それと同じものがこの男性の心のうちに顕現し、周囲を魔で侵そうとしている。
 それは、だめだ。
 それは、阻止しなくてはいけないこと。
 シルフィーナの魂の奥底にそう刻まれた使命。
 赤く、光るデウスの鍵。
 そんな存在を、はっきりと自身の中に感じて。

「はは! そこにも古い血の持ち主がいたか。そうだな、お前のそのマナ、私の妻にふさわしいぞ。ほら、そこにいる怯えた王族どもを排除してこの国を我らの血に取り戻すのだ!」

「何を仰っているのか分かりません! それにわたくしはもうすでにサイラス様の妻です! あなたのものなどにはなりません!」

 狂っている?
 感じたのはそんな感情。
 不思議と恐怖は感じなかった。
 シルフィーナは、自分の内に湧き上がってくるマナを、少しずつ外に出して。

「アウラ、ディン、力を貸して!」

 そう周囲に顕現するギアたちを呼ぶ。

 光の、エネルギーの源であるディン。
 空間を、次元をコントロールするアウラ。

 彼らの守りが必要だと本能的に感じて。

 彼女の周りに溢れる紫に光る粒子が、だんだんと光を増していく。

「おお、やはり欲しい。その力。お前は私のものにする!」

 漆黒の蛇がシルフィーナに向かって飛んだ。
 それは、彼女の周囲に巻き上がった嵐にぶつかって。
 そしてその周囲に突風を巻き起こした。
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