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尾行。
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「君、どこまでついてくるつもりかな?」
冒険者ギルドを出ていくサイレンのあとをついてきたあたし。
大通りを抜けサイレンが横道に入ったところであたしもそちらへと急いでみたら、角を曲がってみたら彼がいない。
あれっと思ってキョロキョロしてしまったところで、空中に浮かぶサイレンからそう声をかけられた。
はっとそちらをみると、魔法陣みたいなものを空中に浮かべその上に立つ彼が見える。
「はう、ごめんなさい。あたし、勇者様にお礼が言いたくって」
子猫を抱いた少女。そんな姿に少しでも油断してくれるといいな。それがあたしの作戦なのだ。
ちょっと剣呑な皺を浮かべるサイレン。
「なんで僕が勇者の知り合いだと思ったの?」
「あたし昨日、変な人たちに絡まれているところを勇者様に助けて頂いたんです。その後ギルドに入っていくお姿を見ていましたから」
これは、嘘じゃない。
サイレン達と合流するところまでは見てはいなかったんだけど、ノワから聞いた話だとあの後すぐロビーでノワと彼らは合流し、受付でそのままパーティ申請をしたのだということだった。
パーティ申請はギルドカードにその情報が記入されることによって恩恵が得られるようになっている。
まあ恩恵って言ってもゲームの時みたいにパーティだからと自動バフがかかるとかそういうことは無いみたいだけど、貢献値の分配や手続きにソロである場合とパーティを組んでいる場合によって差があるため、通常は必ずギルドでちゃんと手続きをしておくのが常識になってるんだよね。
「ふーん。そっか。でももう調査は終わったから勇者はまた別のところに旅立つ予定なんだよ。残念だったね」
「はう。魔道士様はもう勇者様とはお会いにならないんですか?」
「そういうこと。ああ言っとくけど僕は彼がどこに泊まっているのかも知らないからね。あとをつけても無駄だよ」
まあ、これは本当だろう。
というかノワの弁によれば、彼はもともと宿を決めていなかったらしい。
必要があればその日一晩の宿を探すこともあるけれど、毎日が危険との隣り合わせだった彼は、ダンジョンに入る前にはいつだって泊まる場所帰る場所の確保なんかはしないそうだ。
宿を決め、もし万一戻れなかった時にはその宿に迷惑をかけるかもしれない。そんなふうに考えてしまうからって。
だから。
昨夜ノワだけが街に戻ってこなかったことは、誰にも知られていなかった。
当然この人たちもそのことはノワから聞き出して知ってたはず。
知っててこうしてこんなことを言うんだものな。
ああ、ちょっとだけ腹が立ってきた。
「そうですか。もしまた勇者様と合流される予定があるのならお手紙でも渡してもらえたらとお願いしようと思ってて。お声をかける勇気が出ないままあとをつけちゃいました。ごめんなさい」
「まあ、いいけどね。他に用事がないなら僕はもう行くよ。あと君、そんな下手くそな尾行でもされる方は良い気がしないもんなんだ。僕が気が長い方だったからよかったものの、気の短いやつならいきなり攻撃されても文句は言えないよ? これからは気をつけるんだね」
そういうとサイレン、魔法陣をシュンと消し去ると地面にタンっと飛び降りて、そのままスタスタ歩いて行った。
流石にあたしは尾行をやめ、その場に佇んでサイレンを見送ったのだった。
表向きはね?
実はすでに召喚モンスター・カメレオンスパイダーを放っていたあたし。
蜘蛛の魔獣なんだけどカメレオンのように皮膚の色を変え、尾行やスパイに特化した能力を発揮するこのクモコ。
体のサイズも極小にしてあるから、きっと気がつかないはず!
ここでサイレンと戦って倒したとしても残りのメンバーを警戒させるだけ。
できれば一網打尽にしたいし、おまけに本当のこと言ってこの街の中ではあまり戦いたくない。
目立つしそれに、下手したらあたしが悪者にされちゃうもの。
だから。
こうして油断してくれてるうちになんとか全員の居場所を見つけておきたいなって。
冒険者ギルドを出ていくサイレンのあとをついてきたあたし。
大通りを抜けサイレンが横道に入ったところであたしもそちらへと急いでみたら、角を曲がってみたら彼がいない。
あれっと思ってキョロキョロしてしまったところで、空中に浮かぶサイレンからそう声をかけられた。
はっとそちらをみると、魔法陣みたいなものを空中に浮かべその上に立つ彼が見える。
「はう、ごめんなさい。あたし、勇者様にお礼が言いたくって」
子猫を抱いた少女。そんな姿に少しでも油断してくれるといいな。それがあたしの作戦なのだ。
ちょっと剣呑な皺を浮かべるサイレン。
「なんで僕が勇者の知り合いだと思ったの?」
「あたし昨日、変な人たちに絡まれているところを勇者様に助けて頂いたんです。その後ギルドに入っていくお姿を見ていましたから」
これは、嘘じゃない。
サイレン達と合流するところまでは見てはいなかったんだけど、ノワから聞いた話だとあの後すぐロビーでノワと彼らは合流し、受付でそのままパーティ申請をしたのだということだった。
パーティ申請はギルドカードにその情報が記入されることによって恩恵が得られるようになっている。
まあ恩恵って言ってもゲームの時みたいにパーティだからと自動バフがかかるとかそういうことは無いみたいだけど、貢献値の分配や手続きにソロである場合とパーティを組んでいる場合によって差があるため、通常は必ずギルドでちゃんと手続きをしておくのが常識になってるんだよね。
「ふーん。そっか。でももう調査は終わったから勇者はまた別のところに旅立つ予定なんだよ。残念だったね」
「はう。魔道士様はもう勇者様とはお会いにならないんですか?」
「そういうこと。ああ言っとくけど僕は彼がどこに泊まっているのかも知らないからね。あとをつけても無駄だよ」
まあ、これは本当だろう。
というかノワの弁によれば、彼はもともと宿を決めていなかったらしい。
必要があればその日一晩の宿を探すこともあるけれど、毎日が危険との隣り合わせだった彼は、ダンジョンに入る前にはいつだって泊まる場所帰る場所の確保なんかはしないそうだ。
宿を決め、もし万一戻れなかった時にはその宿に迷惑をかけるかもしれない。そんなふうに考えてしまうからって。
だから。
昨夜ノワだけが街に戻ってこなかったことは、誰にも知られていなかった。
当然この人たちもそのことはノワから聞き出して知ってたはず。
知っててこうしてこんなことを言うんだものな。
ああ、ちょっとだけ腹が立ってきた。
「そうですか。もしまた勇者様と合流される予定があるのならお手紙でも渡してもらえたらとお願いしようと思ってて。お声をかける勇気が出ないままあとをつけちゃいました。ごめんなさい」
「まあ、いいけどね。他に用事がないなら僕はもう行くよ。あと君、そんな下手くそな尾行でもされる方は良い気がしないもんなんだ。僕が気が長い方だったからよかったものの、気の短いやつならいきなり攻撃されても文句は言えないよ? これからは気をつけるんだね」
そういうとサイレン、魔法陣をシュンと消し去ると地面にタンっと飛び降りて、そのままスタスタ歩いて行った。
流石にあたしは尾行をやめ、その場に佇んでサイレンを見送ったのだった。
表向きはね?
実はすでに召喚モンスター・カメレオンスパイダーを放っていたあたし。
蜘蛛の魔獣なんだけどカメレオンのように皮膚の色を変え、尾行やスパイに特化した能力を発揮するこのクモコ。
体のサイズも極小にしてあるから、きっと気がつかないはず!
ここでサイレンと戦って倒したとしても残りのメンバーを警戒させるだけ。
できれば一網打尽にしたいし、おまけに本当のこと言ってこの街の中ではあまり戦いたくない。
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