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皆ではしゃごうBBQ 第三話
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時刻も夕方となり、子供達ははしゃぎ疲れたのか爆睡をかましている頃。昼食のバーベキューを終わらせた我々大人たちは、晩飯までの間の暇つぶしとして日々の疲れを癒すべくクロエや烏骨鶏達と遊んでいたり、近所を散歩したり個人個人で楽しんでいたのだが、そこでちょっとした問題……と言っていいのかは不明だが、とある事が発生していた。
「うぅむ……この子、どうするよ」
唸り声をあげる須藤さん。
「どうするって……どうしましょうか」
俺もどうしたら良いのか分からず曖昧な返事をしてしまう。
俺達の目の前には小さな子犬が1匹。ちょこんとお座りしているその子犬は、ツヤのある黄金色のような色をした毛並みだった。
「パッと見ではゴールデンレトリバーの子犬っぽく感じますね」
「野犬なのか?」
ふむ……野犬には見えないな。毛ツヤは綺麗だし、汚れもそんなに無い。誰かが飼っていたが逃げ出したという感じだろうか。だけど、さっき言ったようにゴールデンレトリバーの子犬だとは思っていない。今は犬種が何だ、とか話題を逸らしたくなかったので言い切っただけだ。両親のどちらかにゴールデンレトリバーが混じっている雑種……言い方が良くなかったな、ミックス犬だろう。顔つきや脚の大きさ等からそれは分かる。
「ひとまず、このまま放っておくわけにもいきませんね。もう日が暮れだすので、他の動物に襲われても危険なので一時的に保護するしかなさそうですね」
俺はそう言うとその子犬を抱きかかえる。暴れもせず、大人しい。
抱きかかえるとその子犬は安心したのか、ゆらゆらと船を漕ぎだし、しまいには寝てしまった。疲れていたんだろう。
「鳴きもせず、大人しいもんだな」
松田さんが俺が抱えている子犬の顔を覗き込みながら言う。うおぉ、その角度怖っ。
「人間と同じように、知らない所を歩き回ると疲れるんですよ。そんでもってこの子はまだ子犬です。歩き回れるほどの体力も無いでしょうに」
「俺たちはこの土地の人間じゃないから何もできないからなぁ……たーきー、頼んだぞ」
「分かってますよ、須藤さん。俺は犬も飼った事あるので、色々と知ってるので任せてください。ひとまず皆さんはこのまま自由にくつろいでてください」
俺は室内に入ると、以前烏骨鶏達を入れていた犬用ゲージを組み立ててタオルを敷き、子犬をその中に入れた。ペット用シートを持っていないから今度買っておこう。今はタオルで我慢だ。
「孝文、その子飼うの?」
いつの間にか室内に入って来ていたサクラコがゲージの中で気持ちよさそうに寝てる子犬を見ながら言う。
「いや、飼うのは最終手段だよ。野犬の可能性はあるけど、ひとまずはこの子が逃げ出した可能性のほうを信じて元の飼い主を探してみるさ」
「わたしは飼っても良いと思うけどね!」
サクラコはそれはもう晴れやかな笑顔でそう言う。
いやね、俺も飼ってもいいとは思ってるけどさ。元の飼い主を探す必要はあるだろ。
「さぁ、この子も寝てる事だし庭に戻るぞ」
「はぁーい」
俺とサクラコが庭に戻ると、猫村さんと飯田さんがこちらに向かってきた。
「喜多さん、あの子犬のことだけど」
「何か心当たりでもありますか?」
「いや、心当たりなのかは分からないけど……少し前にここの近所でゴールデンレトリバーを増やしてる家があってね、――――」
それから猫村さんと飯田さんが語りだし、なんとなくだがあの子犬について憶測程度に分かってきた。
まず、少し前にこの近所にゴールデンレトリバーのブリーダーをしていた人がいたらしい。ブリーダーとして優秀だったらしいが、定年退職後に始めたブリーダー業だったがために、数年で身体が追いつかなくなっていき、しまいには疲労で倒れて帰らぬ人になったという。その時にも数頭犬は家に残っていたらしく、その犬達は保健所の方に回収されていったらしいが、どうもブリーダーが付けていた犬についての帳簿と保健所が回収した犬の匹数が合わなかったらしい。そこで脱走が懸念されたので、周辺を捜索してみたものの、結局見つからずそのままとなった、という事があったらしい。
「つまりは、その逃げ出したとされている犬の子供があの子犬じゃないか、という事ですね」
「うん、そうなんだよ。だからもし元の飼い主を探そうと思ってもそんな人はいないと思うよ」
確かに、もしあの子犬がその逃げ出した犬の子供なのであれば元の飼い主なんていないだろう。だが、そう決めつけるわけにもいかないんだよなぁ。
「ひとまず、今のは仮説にすぎませんからね。もし飼い主がいた場合、きっと困ってるはずなので探してみる必要はありそうです」
俺の話を聞き、猫村さんと飯田さんは頷く。
「……うん、確かにそうだね。あの子犬が逃げ出した犬の子供と決めつけるのは早計だったよ」
「そうだねぇ、喜多さんはよく考えてるのねぇ」
いいや、俺は別に深く考えているわけではないさ。子犬をこのまま放って見殺しにするわけにもいかないし、もし飼い主がいていらぬ面倒事に巻き込まれるのを回避する為だ。
「子犬については少し様子を見てから色々とやっていく事にしますね。さぁ、晩飯にしましょう」
俺達は皆の元へと戻っていった。
「さぁ皆さん、晩飯の調理しますよー」
「晩飯って、またバーベキューかー?もう焼いた肉と野菜は十分だぞ」
ふふふ、そう言うと思っていたさ。そんな事は想定済み、既に前もって下ごしらえをしていたのさ!
「これからピザを焼きます」
「「「おぉぉっ!」」」
フッ、皆嬉しそうな顔をしだしたな。そう、その顔が見たかったんだよっ!
直前で迷子犬の保護という突発イベントが発生したものの、気を取り直してピザ作りだ!
こうして、晩飯のピザの調理が始まった。
「うぅむ……この子、どうするよ」
唸り声をあげる須藤さん。
「どうするって……どうしましょうか」
俺もどうしたら良いのか分からず曖昧な返事をしてしまう。
俺達の目の前には小さな子犬が1匹。ちょこんとお座りしているその子犬は、ツヤのある黄金色のような色をした毛並みだった。
「パッと見ではゴールデンレトリバーの子犬っぽく感じますね」
「野犬なのか?」
ふむ……野犬には見えないな。毛ツヤは綺麗だし、汚れもそんなに無い。誰かが飼っていたが逃げ出したという感じだろうか。だけど、さっき言ったようにゴールデンレトリバーの子犬だとは思っていない。今は犬種が何だ、とか話題を逸らしたくなかったので言い切っただけだ。両親のどちらかにゴールデンレトリバーが混じっている雑種……言い方が良くなかったな、ミックス犬だろう。顔つきや脚の大きさ等からそれは分かる。
「ひとまず、このまま放っておくわけにもいきませんね。もう日が暮れだすので、他の動物に襲われても危険なので一時的に保護するしかなさそうですね」
俺はそう言うとその子犬を抱きかかえる。暴れもせず、大人しい。
抱きかかえるとその子犬は安心したのか、ゆらゆらと船を漕ぎだし、しまいには寝てしまった。疲れていたんだろう。
「鳴きもせず、大人しいもんだな」
松田さんが俺が抱えている子犬の顔を覗き込みながら言う。うおぉ、その角度怖っ。
「人間と同じように、知らない所を歩き回ると疲れるんですよ。そんでもってこの子はまだ子犬です。歩き回れるほどの体力も無いでしょうに」
「俺たちはこの土地の人間じゃないから何もできないからなぁ……たーきー、頼んだぞ」
「分かってますよ、須藤さん。俺は犬も飼った事あるので、色々と知ってるので任せてください。ひとまず皆さんはこのまま自由にくつろいでてください」
俺は室内に入ると、以前烏骨鶏達を入れていた犬用ゲージを組み立ててタオルを敷き、子犬をその中に入れた。ペット用シートを持っていないから今度買っておこう。今はタオルで我慢だ。
「孝文、その子飼うの?」
いつの間にか室内に入って来ていたサクラコがゲージの中で気持ちよさそうに寝てる子犬を見ながら言う。
「いや、飼うのは最終手段だよ。野犬の可能性はあるけど、ひとまずはこの子が逃げ出した可能性のほうを信じて元の飼い主を探してみるさ」
「わたしは飼っても良いと思うけどね!」
サクラコはそれはもう晴れやかな笑顔でそう言う。
いやね、俺も飼ってもいいとは思ってるけどさ。元の飼い主を探す必要はあるだろ。
「さぁ、この子も寝てる事だし庭に戻るぞ」
「はぁーい」
俺とサクラコが庭に戻ると、猫村さんと飯田さんがこちらに向かってきた。
「喜多さん、あの子犬のことだけど」
「何か心当たりでもありますか?」
「いや、心当たりなのかは分からないけど……少し前にここの近所でゴールデンレトリバーを増やしてる家があってね、――――」
それから猫村さんと飯田さんが語りだし、なんとなくだがあの子犬について憶測程度に分かってきた。
まず、少し前にこの近所にゴールデンレトリバーのブリーダーをしていた人がいたらしい。ブリーダーとして優秀だったらしいが、定年退職後に始めたブリーダー業だったがために、数年で身体が追いつかなくなっていき、しまいには疲労で倒れて帰らぬ人になったという。その時にも数頭犬は家に残っていたらしく、その犬達は保健所の方に回収されていったらしいが、どうもブリーダーが付けていた犬についての帳簿と保健所が回収した犬の匹数が合わなかったらしい。そこで脱走が懸念されたので、周辺を捜索してみたものの、結局見つからずそのままとなった、という事があったらしい。
「つまりは、その逃げ出したとされている犬の子供があの子犬じゃないか、という事ですね」
「うん、そうなんだよ。だからもし元の飼い主を探そうと思ってもそんな人はいないと思うよ」
確かに、もしあの子犬がその逃げ出した犬の子供なのであれば元の飼い主なんていないだろう。だが、そう決めつけるわけにもいかないんだよなぁ。
「ひとまず、今のは仮説にすぎませんからね。もし飼い主がいた場合、きっと困ってるはずなので探してみる必要はありそうです」
俺の話を聞き、猫村さんと飯田さんは頷く。
「……うん、確かにそうだね。あの子犬が逃げ出した犬の子供と決めつけるのは早計だったよ」
「そうだねぇ、喜多さんはよく考えてるのねぇ」
いいや、俺は別に深く考えているわけではないさ。子犬をこのまま放って見殺しにするわけにもいかないし、もし飼い主がいていらぬ面倒事に巻き込まれるのを回避する為だ。
「子犬については少し様子を見てから色々とやっていく事にしますね。さぁ、晩飯にしましょう」
俺達は皆の元へと戻っていった。
「さぁ皆さん、晩飯の調理しますよー」
「晩飯って、またバーベキューかー?もう焼いた肉と野菜は十分だぞ」
ふふふ、そう言うと思っていたさ。そんな事は想定済み、既に前もって下ごしらえをしていたのさ!
「これからピザを焼きます」
「「「おぉぉっ!」」」
フッ、皆嬉しそうな顔をしだしたな。そう、その顔が見たかったんだよっ!
直前で迷子犬の保護という突発イベントが発生したものの、気を取り直してピザ作りだ!
こうして、晩飯のピザの調理が始まった。
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