考察系オタクが異世界で探偵役になりまして

四方木餅

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交渉とキャラメイク

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 目を覚ますとそこは写真やファンタジー作品のチュートリアルでよく見るような清々しい草原だった。一面が草か青空、ちょっと遠めに山があるぐらいしか見えない。
「何処よここ?さっき事故ってたから……もしかしてあの世?もしくは、母さんや美鈴が好きな異世界トリップって奴?」
「その通りだ名探偵!」
何処からともなくハイテンションな少年の声が聞こえてきた。しばらく周りを見渡すと、目の前でふわふわ浮いてる美少年が現れた。
「えっと……どちら様です?」
「吾輩は神である。名前はまだ無い。だからなんかいい感じの頭良さそうな名前つけて!」
「漱石か!なんで神よ⁈ついでにその発言自体頭悪そうな人の発想だよ!」
 パニック起こしてつい初対面の相手にツッコミを入れてしまった。普段なら子供相手に大人気ないと思うけど、死んだと思った矢先にこれじゃ正直そんなこと考える余裕すら無い。こちらの混乱をよそに神を自称する美少年は目を輝かせて拍手した。
「スゴイ!全部のボケを拾ってツッコミを決めてくれたね!最高だよ!君のような主人公を待っていた!」
「えっと……いくつか質問していい?」
「もちろん。その代わり全部答え切ったら僕に名前つけて!そうすれば君の望む物を僕が出来る範囲でなんでも叶えてあげる」
 美少年はふわふわと私の周りを漂って、こちらの発言を待っている。
「 そりゃどうも。一つ目、私さ事故で死んだよね?なんで今君と会話できてんの?」
「うむ、お答えしよう!君は、榎本 梨々香えのもと りりかは君が生きていた世界で事故に遭って死んだ。厳密に言えば仮死状態だからギリギリ生きてるかな?その時に死にたて、いや特別に死にかけホヤホヤの君の魂を僕の世界に呼び出したんだ。ちなみに他のご家族は無事だよ。意識不明の重体だけど」
 この美青年カミサマ、あっさりととんでも無いこと言ってくれやがりましたね。私含めてギリギリ全員生きてるのか。まぁ家族のことは聞くつもりだったし手間が省けてよかった。正直、推しジャンルと借金返済以外ほとんど未練なかったし。これで次の質問は決まった。
「私を呼び出した理由は?それに元の世界に帰れるかな?」
「次の疑問、お答えしましょう!僕の管理してる世界でちょっとした時代の変化があったの。君の世界で言う産業革命って奴。魔王と勇者が云々ってのはつい100年前に落ち着いちゃってさ、今度は個人の欲望と恨みが渦巻く犯罪都市って感じになってんだよ。でもねぇ……今までみんなして魔法とか戦闘力ばっかりで解決してたせいで、マトモに頭脳で解決できる人いないんだよ。僕自身もどうしたもんか悩んでたんだけど、そこで君の世界にある『推理』と言う概念を知った」
 このヒトなに言ってんの?剣と魔法のファンタジーの世界から犯人はお前だ!っていう推理モノやろうってこと?超展開すぎませんかね?
「君の生前の記憶、見せてもらったよ。カッコイイ奇変人だよね、名探偵。そこで、カミサマは閃いた。僕たちが知らなくてできないなら知っている人間をこっちに呼べばいいじゃない!そんなわけで……推理できるように色々手当ほせいするから、こっちで名探偵やってくれよ」
「理に適ってるけど……暴論デスネ」
 そしてこの口ぶり、YESというまで話が進まないパターンですね。ゲームで見た。
「残念ながら拒否権はないし助手ワトソン役は現地調達してもらうけど、最低限の生きていける補正はかけるから安心してね」
「左様でございますか……」
 情報量の多さに思考停止同然に呆れていると、カミサマは私の目を見て向き直った。
「さて、他に質問はあるかな?」
「……仮に元の世界に戻った時の話だけど、その時って事故直後に戻される?それとも何年か経ってる?それ次第では帰ってからの私や家族の人生が真面目に詰むんですけど」
「流石に気にするよねぇ……慎重な子だなぁ。まぁ宜しい、答えて進ぜよう。時間軸はある程度こっちで操作できるけど……多分三年ぐらい誤差でズレると思ってくれたまえ」
 この時ばかりは自分の法律に関する知識の無さを恨んだ。人生であんまり関係なかった内容とはいえ、何が役に立つかわからないものだなんて死にかけてから気づくとはなんたる皮肉か。つい遠い目になった。
「そっか……最悪……会社クビかなうん。うち一応ホワイトだけど、性根は体育会系だし、私そもそも役立たずだったからな、ありえるな」
「どんだけシビアな時代なのだね君の世界、結構平和って聞いてたんだけどな」
「うん、平和だよ。ただし蓋を開けたら無限搾取と飼い殺しの世界かなぁ……」
「なんというか、いつの世もロクでもねぇなぁ人間……うん、そればかりは面倒見切れないけど……可能な限り換金できるものを持ち込めないか試してみるよ」
「気持ちだけでも充分だよ。……ありがとう」
「さて、しんみりしちゃったけど他に質問あるかい?無ければそろそろ君のこの世界の肉体アバターのキャラメイクを始めたいんだけど。そしてそろそろ名前もつけて欲しいんだけど」
 流石におしゃべりが過ぎた、と言いたげに自称カミサマは話を進めようとこちらに促す。でもその前にこれは聞いておきたい。もしかしたら、私の身の振り方の分岐にも繋がるだろうから。
「待ってその前に一つ。この世界って神様は君だけ?それとも神話みたいな多神教?」
「うーん……どちらでもあるかな?僕って言う全知全能な大元の神様がいるけど僕単品だと一度にできることは限られてくるからね。必要な時に分身作ってそれに任せちゃう感じ」
「演算処理がすごいパソコンとデータ共有してる携帯用端末スマホやタブレットみたいな感じか」
「そうそれ!そんな感じ!いやぁ、君の読解力ってか例え方が丁度いいから僕も楽でいいね!」
「なんで別世界の神様がパソコンやスマホを知って……あたしの記憶覗いたからか!」
 楽しそうに私の反応を見て笑い転げる自称神様。数分してから落ち着いたのかこちらに向き直る。
「あー笑った!ここまで笑ったの久しぶりだよ。本当、君を主役に選んで良かった!」
「やっと落ち着いたんだね。とりあえず話進めてくれる?」
「不敬かつ辛辣だね、こっちは面白いから全然いいけど!」
 そのあとどこからともなくテーブルと椅子を取り出して座らされた。その上にはスキル一覧表なる辞書のように分厚い本を開いて自称神様と私のキャラメイクについて長々と打ち合わせした。途中で私の知識をもとに神様が再現した駄菓子やジュースを食べて休憩したけどどれも見た目以外は劇的にマズくて2人して爆笑していた。ここまで笑ったのは多分1年以上ぶりだろうな。そんな感傷に浸るうちに私のキャラメイクが終わり、神様が私を異世界カミサマんちへ送り出す。
「梨々香、僕の名前決まった?」
「決めた。カミサマはさ、あたしを主役に物語を記録するんだろ?怖くて仕方ないのに……なんか映画作るみたいでワクワクするんだ。だから、君は今からあたしの『監督』ってことでどうよ?」
私の提案を聞いた神様は肩を震わせて爆笑した。この人結構笑いの沸点低いんじゃないのか?そんな疑惑が浮上して、仕方ない。
か、いいねぇ!気に入った!映画って娯楽も面白そうだし、次の機会に教えてくれよ」
「どこまで人の記憶覗いたんだこのヒト……まぁピンキリはあるけど、いいよ」
 神様はメガホンとカチンコを取り出して宣言する。
「それでは僕の初監督作品!『名探偵エリスの事件簿』ヨーイ、アクション!」
 監督カミサマがカチンコを鳴らすと私の視界は暗転した。
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