考察系オタクが異世界で探偵役になりまして

四方木餅

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テストプレイとチュートリアル

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 最初に視界に入ったのは日が暮れてしまった先程のチュートリアルな平原だった。監督カミサマは映像撮影用のバカでかいカメラをこちらに向けている。このヒト本当に映画でも撮影するつもりなのか、そもそもこの世界に撮影って概念あるのか?

「視界は良好かな。手足も動かしやすい。むしろ軽いな」
「君のリクエスト通り身長はそのまま、体重というか成分比率は運動や戦闘にも対応できるよう調整済みだ。僕としてはもうちょい……おっぱいあってもいいんじゃないかと思うんだけどね」
「ふざけんな、これ以上盛られると服探しが面倒だし動き辛くなるし無駄に注目されたくないし弓が撃てなくなる」
「エリス~中の人リリカが出てきてるぞ」
「中の人言うなって」
「あとね、今はいいけどさ。僕基本的に君以外には見えない存在だから街中入ったら気をつけてよ」
「大元は妖精とか幽霊とか当たり前なファンタジー世界なんだろ?なんで監督だけ見えないん?」
「僕神様だからさ、分身アバター経由しないと干渉できないんだよね。君の世界で言うところのプレイヤーとゲームデータそのものって言えばわかる?」

 プレイヤーは画面の中に入り込んでゲームの世界そのものを文字通り動かして変えることはできない。操作方法に沿って自分の分身アバターを動かすだけ。つまり分身アバター経由で制限されてるゲームデータを進展させていくことしかできない。といった感じか。

「言いたいことはわかったけど……だからなんで例えがこっちの世界に染まりきってんの」
「学習ってか理解するにはに置き換えたほうが確実だからね~。あ、このボス第二形態出してきやがった」
「解説しながらゲームすんのかい!しかも私が昔クリアしたやつ!あとそいつ眠りよりも麻痺の方が効くよ」

 フリーダムな監督にツッコミつつも身体アバターの感覚や初期スキルを一通り試した。問題は次の魔法だ。この世界の魔法は自分で決めた呪文キーワードを一言以上唱えないと発動しない。監督カミサマが言うには呪文自体が魔法を使うためのトリガーみたいな役割を果たすのだと言う。無詠唱で魔法を使う場合は呪文の代わりにトリガーとなる『動作』が必要になる。つまり『カッコイイポーズ』的なやつ。想像してみたけど個人的には呪文よりずっと恥ずかしい。

「じゃあ、エリス。早速四大元素を試してみよっか!火からね」
「わかった……『燃えろ』」

 右手の人差し指を正面に向けロウソクの火、ライターの火、コンロの弱火といったイメージを元にシンプルな呪文キーワードを唱えてみた。目の前が真っ赤に燃えた。具体的に言うと卓上用の地球儀ぐらいのバカでかい火の玉が出てきた。

「いやなんで⁈」
「あっ……とりあえず他の属性も試してみようか」

 彼に促される通り風を起こして樹木をへし折り、水を生み出して地表を抉り、地面の土を形作ろうとして二メートルぐらいのハニワが出来上がった。ちなみに言っておくと全部初歩的な魔法を使った結果である。監督は申し訳なさそうに背後から声をかけてきた。

「あー……ごめんエリス。火力ってか魔力の質と量に初期設定のコストかけ過ぎてコントロール系スキル載せ忘れた」
「おい待て監督カミサマふざけんな」
「イヤだからね、せっかくこう……はじめてできた友達と『俺が考えた最強の美少女』を作ってるうちにさ、こう……ロマンを見出したくなっちゃうわけですよ。わかって♡」
「気持ちと言い分はわかったけど殴れるものなら一発殴らせて」

 というかこの神様ヒト、今私のこと友達って言った?嘘やん。私以上にぼっちライフしていたのかこの神様……いや、この世界に干渉する手段が私らでいうゲームだけなんだし無理もないか。娯楽があっても孤独を満たせるとは限らない。それはオタクわたしもよく知っている。起こるのはこれぐらいにして解決策へと頭を切り替えよう。

「コントロール補正かける当てはあるの?これじゃ街中で魔法なんて使えないよ」
「一応あります。ただ、今の時代は使えるか微妙なところなんだよね……隷属契約って言うんだけど」

 隷属って……平和ボケ呼ばわりされてる世代の私には字面が不穏過ぎるんですがちょっと。

「質問、それっていわゆる相手を自分の奴隷にするぞーとかそういう力だったりします?」
「その通り。対象に自分の魔力を与えることで生存を保持する事と引き換えに自分の命令に従わせる魔法だよ。100年前ならよくある感じだったけど、差別とかに厳しいからね最近。貴族とか良くやってるけど平民ではあまり見ないレアケースだね」

 あとは専用の魔法道具かな~高級品だけど。とかあっさり返してきやがった。道具があるならそれを使いたいところではある。

「ちなみにその魔法道具ってどれくらい高いの?」
「うーん、エリスぐらいの魔力に使えそうなのってガッツリ高級品レベルだからなぁ……最低でも1ソレアだね。梨々香の世界ってか国と時代の基準で言えば一億エンかな!」

 一億円って、人間一人あたり生涯で必要な最低限の金額じゃないですかヤダァ。……私の月給何千倍だよ。

「ついでに言うと一般的な平民の月給は20ルネア。2万エンだね、その分物価も税金も安いよ」
「なんだろう……すごいコメントに困る生活格差を感じる」
「ってなんでそんなに凹んでるの?」
「二重の意味で生活に困りそうだからかな!……あとこの世界の戸籍とか」

 直近のお題がすでに果てしなさすぎて真顔になる他ない。それを見かねたのか監督は提案してきた。

「エリス、とりあえずワトソン探しと街に向かおう。その辺は今悩んでも仕方ない」
「そーだね、うん」

 魔法の練習跡はどうにか直してから、監督に促され夜の平原を歩き始めた。この時は目先の難題に気を取られて、近くにいる誰かに気づかなかった。

「あの子……暖かくて、優しくて、陽だまりみたいな……美味しそうな匂いがする」

 そんな声が聞こえた気がした。数秒後、声の主が私の真正面にとは予想もしなかった。
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