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 私の呼吸がむうちゃんの集中を削いではいけないので、出かけた。ゆっくり掃除でもしたい。いつするのだろう。全然していない。髪の毛が落ちていたら拾う程度だ。むうちゃんが仕事ばかりしているからできない。別の部屋で仕事をしたらいいのにな。2階には部屋は5つくらい。和室しかない部屋もある。私たちの部屋は広いほうだ。ベッドの設置場所は気に入らないけれど。
 まだ客に出くわしていないけれど、そのうち他人と触れ合うのだろう。大人になると少しずつ皮膚が厚くなる気がする。その分、心にもガーゼを重ねて守っているように思う。それを解きほぐして、私もいつか誰かとわかり合うのだろうか。むうちゃんのように献身的に愛せるだろうか。たーくんのように悪い人ってそんなにいるのかな。

 カーブではないところで先日の男の子に再会した。実は昨日もうろついてみた。ストーカー気質なのだろうか。
「また迷子?」
 と呆れ顔。
「ううん。ただの散歩」
「そう」
 今日はお互いに歩み寄る。
「何年生?」
 と聞いてみる。
「5年」
「同じだ」
 名札から苗字は読めないけれど、たけしという名前は見えた。
「どうしてここに?」
「叔母さんの静養」
 嘘はつかない。
「病気なの?」
「もう治ったかな。仕事してるし」
「そう」
 彼がほっとしたのがわかった。
「どこかいいところない? 暇で」
 私もこの景色に、同じ毎日にもう飽きそう。
「この辺はないかな。観光の人は登山とか川下りとか」
「へえ。どこか行かない?」
 と勇気を出して誘ってはみたけれど、
「うちに帰らないと」
 と言われてしまった。
「そう」
「妹がいるんだ。一人で留守番してるから帰らないと」
 少し俯いて彼は答えた。
「一人で?」
「うん」
 おかしな話である。
「何歳?」
 それによってはこの男の子はヤングケラーということだ。
「4歳。ちょっと変わってるんだ。何か見えるらしくて、それと喋ってる? 共鳴しているっていうのかな」
 おいおいおい、嫌いじゃない話題だ。
「幽霊?」
「お化けかもしれないし精霊とかかもしれないけどわからないんだ。ちゃんと喋ったことないし」
 ますます気になる。
「そうなんだ」

「うちくる?」
 その言葉にどきりとした。
「いいの?」
「いいよ。妹、変だけど。変だけど、妹がうちの家計を担ってるんだ」
「親いないの?」
 私たちはもう同じ方向に歩き出していた。
「いるよ。お父さんはパチンコしてる。お母さんはパートに出てる。でもそれで足りなくなったら妹が除霊みたいのをしてお金を得てる。結果が出てからお金をもらってるから詐欺とかじゃないよ」
「へえ」
 男の子と一緒に歩くことは集団登校ではよくある。しかしこんなふうに対になって歩幅を合わせて歩くのは初めてだ。色恋ではない。むしろ稚拙。
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