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15.隣国の目的
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「状況は?」
慌ただしく騎士たちが防衛の準備を進める城の中で、私は騎士団長のピエールに現在の状況を尋ねる。卓上に置かれた地形図を真剣に見つめていた彼は、顔を上げると強張った顔で私の問いに答えた。
「どうやら彼らは行方不明になった皇女を探しているようです」
皇女を探している?…確か、向こうの皇女は3年ほど前に行方不明になったと聞いたことがある。だがしかし、既に亡くなったとされ、捜索も終わったのではなかったか…?
「皇女は既に亡くなったとされていたのではないのか?」
「それが…どうやら皇女の目撃情報がどこからか入ったようです。隣国の皇帝は皇女を溺愛しておりましたから、必死になってその情報が正しいかどうか確かめているようで…」
そういえば現皇帝が王太子だったころ、皇女の元にくる縁談をことごとく破談へと持ち込んでいったという噂を聞いたことがあるな…。
「その皇女がいたとされるところはどこだ?」
「それが、どうやらこのブランセントのようで…」
「なるほど。そういうことだったのか…。では戦争を目論んでいるわけではないのだな?」
「はい。現時点では皇女の捜索が真の目的かと。恐らく、戦争の準備をしているのは皇女捜索の目を眩ませるためかと。下手に知られてこちらに先に皇女を保護されることを恐れているのかと思われます。皇女を人質にとられる可能性も十分ありますから」
そういうことだったのか。ひとまず、戦争を仕掛けてくるつもりではないならば一安心だ。しかし、万が一皇女がこの国の悪人に捕まり命を落としたとでもなれば大問題。それこそこの国に戦争を仕掛けてくる事態になりかねない。一刻も早く皇女を見つけ出し、その身の安全を確保しなければならないな。
「一先ず、隣国が頻繁に密偵を送ってきていた理由は分かった。あとはその皇女を見つけ出し、身柄の安全を確保しなければだな…」
「そうですね。御身に傷一つつけさせるわけにはいきません。この国の平和のためにも」
「ああ。そうだな。皇女を上手く利用すれば、上手く和平交渉にも持ち込めるかもしれん。とにかく、防衛の強化をしつつも、皇女の捜索を強化する必要があるな。ピエール、お前は辺境の騎士たちに捜索の指示を出せ。私は今から王宮へ行き、陛下に協力を願ってくる」
「はっ!すぐさま捜索を開始いたします!」
早速部下に指示を飛ばすピエールを横目に、私は王宮へ向かうため城の外に向かい翼竜へと飛び乗る。そして、空へと舞い上がると猛スピードで城へと向かった。
―絶対にこの地を火の海にするわけにはいかない。私の贖罪は未だ終わっていないのだ―
※※※
「アディのお兄さん、身長はどれくらいかしら?」
アディのお兄さんへのプレゼントを作るため、私は早速、アディとの打ち合わせを行っていた。プレゼントをする服のイメージを固めるため、アディに色々とお兄さんについての話を聞く。
「私より大きいのは確かだけど、3年以上会ってないから正直正確には分からないわ」
それはそうか。年齢的に成長が著しい時だろうし、身長が大きくなっている可能性もあるわよね。
「なら、多少サイズに誤差があっても支障がでない外套をプレゼントにしましょうか。それなら多少大きくても着れるし、大きめに作っておけば後でサイズ調整もできるわ」
「いいわね!そうしましょう!」
そう話がまとまった所で、私は色や生地を候補の中からアディに選んでもらう。どうやらアディのお兄さんは青色の服を好んで着ていたらしい。特に少し濃い青色が似合うとのことだったので、紺色を基調とした外套を作ることにした。
「アディって刺繍はできる?」
「もちろんよ。刺繍は得意だわ」
流石アディ。女子力が高い。刺繍が苦手な私は素直に感心する。
「なら、外套のどこかにお兄さんの名前を刺繍で入れましょうか。アディが刺繍をしたと知ればお兄さんもきっと喜んでくれると思うわ」
「いいわね、それ!腕が鳴るわ!」
その後も私はアディと話し合いながら外套のデザインについて話を詰める。その結果、私とアディの理想がこれでもかと詰め込まれた、まるで王子様みたいなデザインになった。
「あとプレゼントができるとしたら、定番だけどハンカチや鞄かしらね」
「ハンカチは自分で刺繍したものを贈るわ。鞄か。確かにお兄さまが鞄を持っているの見たことがないし、プレゼントにいいかもしれないわ。鞄ってアレンジできるものなの?」
鞄は紳士の神器だ。当然、私の商会でも取り扱っているし、色々と自分好みにカスタマイズできる仕組みを整えてある。
「できるわよ!型と革をオリジナルのものから好きに選べるわ。大きいものだと時間がかかってしまうから、今回は小さいものにしましょうか。腰に巻けるタイプなら普段鞄を持たない男性でも使いやすいと思うわ」
アディによるとお兄さんは結構仕事であちこち動き回ることが多いそうだ。荷物は付き人が持ってくれることが多いのであまり鞄を手荷物ことをしないという。…付き人ってアディって実は結構なお嬢様なんだろうかと疑問に思ったが、深く追及はしない。誰だって隠したいことの一つや二つはある。
「最高ね!それにしましょう!」
「じゃあ、これがカタログ。このなかから好きなものを選んでいって」
革の色味や鞄の形を選び終わったところで、私たちは休憩にメアリーが用意してくれた紅茶を飲み始めた。お茶請けのクッキーを食べながらアディがそういえばと私の方を見る。
「エリィがここに滞在している理由ってここの辺境伯に婚約を申し込むためよね?」
「ええ」
「進捗状況はどんな感じなの?」
「それが全く。最近はお会いすることすらできていないのよ」
困り顔でそう述べる私に、アディは目を丸くさせ首を傾げた。
「あら。どうして?」
「隣国が不穏な動きを見せているせいで、エドゥアール様はその対応でお忙しいの。毎日国境沿いの城に行っているみたいで、殆どこの城にいないわ」
「隣国って…ベルバッハのこと?」
アディの言葉に私は頷く。
「ええ。どうやら戦争の準備をしている動きがあるらしくてね、この国に攻め込もうとしているんじゃないかって噂されているわ」
「まぁ!なんてこと…!まさか…お…さまが…こと…なんて…」
驚愕の表情でそう言葉を発するアディ。最後の方に何か言っていたが、声が小さすぎて聞き取ることができなかった。
「え?ごめん、最後の方を聞き取れなかったわ。何て言ったのかしら?」
「へっ?あ、大したことないから大丈夫よ。まさかベルバッハがそんなことをするなんてと言っただけ」
アディが驚くのも無理はない。ベルバッハは戦争をしない平和な国として有名だったし、きっと誰もこんな事態は想像もしていなかっただろう。
「そうよね。今までベルバッハは戦争を嫌う国で有名だったし。こんなことになるなんて、とても残念だわ…」
「ええ、とてもショックだわ…。信じられない。…あ、貴方の話がではなくて、ベルバッハがそんなことをするのがよ」
慌ててそう付け足すアディに私は大丈夫だと微笑む。
「もちろん分かっているわ。そうよね、ベルバッハは貴方の故郷だもの。ショックよね」
「ええ…」
私だってこのブランセントが他国に戦争を仕掛けようとしたら悲しい気持ちになる。彼女の気持ちを思うと、私はいたたまれなくなった。
「エリィ、私急用を思い出したわ。申し訳ないけど、今日はここで失礼してもいいかしら」
「え?…ええ、もちろん大丈夫よ。見送るわ」
「大丈夫よ。もうこの城にも慣れたし、見送りは必要ないわ。貴方はこのままゆっくりしてて。じゃあね、また!」
「またねって、…アディ、物凄い速さで帰って行ったわね。一体、何かあったのかしら…」
部屋に取り残された私とナタリーはお互いに顔を見合わせ、首を傾げる。とりあえずナタリーに今日の打ち合わせで決まった内容を商会のメンバーに伝えるようにお願いすると、私は今後の動きについて一人紅茶をすすりながら考えるのだった。
慌ただしく騎士たちが防衛の準備を進める城の中で、私は騎士団長のピエールに現在の状況を尋ねる。卓上に置かれた地形図を真剣に見つめていた彼は、顔を上げると強張った顔で私の問いに答えた。
「どうやら彼らは行方不明になった皇女を探しているようです」
皇女を探している?…確か、向こうの皇女は3年ほど前に行方不明になったと聞いたことがある。だがしかし、既に亡くなったとされ、捜索も終わったのではなかったか…?
「皇女は既に亡くなったとされていたのではないのか?」
「それが…どうやら皇女の目撃情報がどこからか入ったようです。隣国の皇帝は皇女を溺愛しておりましたから、必死になってその情報が正しいかどうか確かめているようで…」
そういえば現皇帝が王太子だったころ、皇女の元にくる縁談をことごとく破談へと持ち込んでいったという噂を聞いたことがあるな…。
「その皇女がいたとされるところはどこだ?」
「それが、どうやらこのブランセントのようで…」
「なるほど。そういうことだったのか…。では戦争を目論んでいるわけではないのだな?」
「はい。現時点では皇女の捜索が真の目的かと。恐らく、戦争の準備をしているのは皇女捜索の目を眩ませるためかと。下手に知られてこちらに先に皇女を保護されることを恐れているのかと思われます。皇女を人質にとられる可能性も十分ありますから」
そういうことだったのか。ひとまず、戦争を仕掛けてくるつもりではないならば一安心だ。しかし、万が一皇女がこの国の悪人に捕まり命を落としたとでもなれば大問題。それこそこの国に戦争を仕掛けてくる事態になりかねない。一刻も早く皇女を見つけ出し、その身の安全を確保しなければならないな。
「一先ず、隣国が頻繁に密偵を送ってきていた理由は分かった。あとはその皇女を見つけ出し、身柄の安全を確保しなければだな…」
「そうですね。御身に傷一つつけさせるわけにはいきません。この国の平和のためにも」
「ああ。そうだな。皇女を上手く利用すれば、上手く和平交渉にも持ち込めるかもしれん。とにかく、防衛の強化をしつつも、皇女の捜索を強化する必要があるな。ピエール、お前は辺境の騎士たちに捜索の指示を出せ。私は今から王宮へ行き、陛下に協力を願ってくる」
「はっ!すぐさま捜索を開始いたします!」
早速部下に指示を飛ばすピエールを横目に、私は王宮へ向かうため城の外に向かい翼竜へと飛び乗る。そして、空へと舞い上がると猛スピードで城へと向かった。
―絶対にこの地を火の海にするわけにはいかない。私の贖罪は未だ終わっていないのだ―
※※※
「アディのお兄さん、身長はどれくらいかしら?」
アディのお兄さんへのプレゼントを作るため、私は早速、アディとの打ち合わせを行っていた。プレゼントをする服のイメージを固めるため、アディに色々とお兄さんについての話を聞く。
「私より大きいのは確かだけど、3年以上会ってないから正直正確には分からないわ」
それはそうか。年齢的に成長が著しい時だろうし、身長が大きくなっている可能性もあるわよね。
「なら、多少サイズに誤差があっても支障がでない外套をプレゼントにしましょうか。それなら多少大きくても着れるし、大きめに作っておけば後でサイズ調整もできるわ」
「いいわね!そうしましょう!」
そう話がまとまった所で、私は色や生地を候補の中からアディに選んでもらう。どうやらアディのお兄さんは青色の服を好んで着ていたらしい。特に少し濃い青色が似合うとのことだったので、紺色を基調とした外套を作ることにした。
「アディって刺繍はできる?」
「もちろんよ。刺繍は得意だわ」
流石アディ。女子力が高い。刺繍が苦手な私は素直に感心する。
「なら、外套のどこかにお兄さんの名前を刺繍で入れましょうか。アディが刺繍をしたと知ればお兄さんもきっと喜んでくれると思うわ」
「いいわね、それ!腕が鳴るわ!」
その後も私はアディと話し合いながら外套のデザインについて話を詰める。その結果、私とアディの理想がこれでもかと詰め込まれた、まるで王子様みたいなデザインになった。
「あとプレゼントができるとしたら、定番だけどハンカチや鞄かしらね」
「ハンカチは自分で刺繍したものを贈るわ。鞄か。確かにお兄さまが鞄を持っているの見たことがないし、プレゼントにいいかもしれないわ。鞄ってアレンジできるものなの?」
鞄は紳士の神器だ。当然、私の商会でも取り扱っているし、色々と自分好みにカスタマイズできる仕組みを整えてある。
「できるわよ!型と革をオリジナルのものから好きに選べるわ。大きいものだと時間がかかってしまうから、今回は小さいものにしましょうか。腰に巻けるタイプなら普段鞄を持たない男性でも使いやすいと思うわ」
アディによるとお兄さんは結構仕事であちこち動き回ることが多いそうだ。荷物は付き人が持ってくれることが多いのであまり鞄を手荷物ことをしないという。…付き人ってアディって実は結構なお嬢様なんだろうかと疑問に思ったが、深く追及はしない。誰だって隠したいことの一つや二つはある。
「最高ね!それにしましょう!」
「じゃあ、これがカタログ。このなかから好きなものを選んでいって」
革の色味や鞄の形を選び終わったところで、私たちは休憩にメアリーが用意してくれた紅茶を飲み始めた。お茶請けのクッキーを食べながらアディがそういえばと私の方を見る。
「エリィがここに滞在している理由ってここの辺境伯に婚約を申し込むためよね?」
「ええ」
「進捗状況はどんな感じなの?」
「それが全く。最近はお会いすることすらできていないのよ」
困り顔でそう述べる私に、アディは目を丸くさせ首を傾げた。
「あら。どうして?」
「隣国が不穏な動きを見せているせいで、エドゥアール様はその対応でお忙しいの。毎日国境沿いの城に行っているみたいで、殆どこの城にいないわ」
「隣国って…ベルバッハのこと?」
アディの言葉に私は頷く。
「ええ。どうやら戦争の準備をしている動きがあるらしくてね、この国に攻め込もうとしているんじゃないかって噂されているわ」
「まぁ!なんてこと…!まさか…お…さまが…こと…なんて…」
驚愕の表情でそう言葉を発するアディ。最後の方に何か言っていたが、声が小さすぎて聞き取ることができなかった。
「え?ごめん、最後の方を聞き取れなかったわ。何て言ったのかしら?」
「へっ?あ、大したことないから大丈夫よ。まさかベルバッハがそんなことをするなんてと言っただけ」
アディが驚くのも無理はない。ベルバッハは戦争をしない平和な国として有名だったし、きっと誰もこんな事態は想像もしていなかっただろう。
「そうよね。今までベルバッハは戦争を嫌う国で有名だったし。こんなことになるなんて、とても残念だわ…」
「ええ、とてもショックだわ…。信じられない。…あ、貴方の話がではなくて、ベルバッハがそんなことをするのがよ」
慌ててそう付け足すアディに私は大丈夫だと微笑む。
「もちろん分かっているわ。そうよね、ベルバッハは貴方の故郷だもの。ショックよね」
「ええ…」
私だってこのブランセントが他国に戦争を仕掛けようとしたら悲しい気持ちになる。彼女の気持ちを思うと、私はいたたまれなくなった。
「エリィ、私急用を思い出したわ。申し訳ないけど、今日はここで失礼してもいいかしら」
「え?…ええ、もちろん大丈夫よ。見送るわ」
「大丈夫よ。もうこの城にも慣れたし、見送りは必要ないわ。貴方はこのままゆっくりしてて。じゃあね、また!」
「またねって、…アディ、物凄い速さで帰って行ったわね。一体、何かあったのかしら…」
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