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14.旧友との再会
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「土地も確保できたし、レオが辺境の人達と上手く協力して植物の生産を進めてくれているみたいだから、園芸商会の方は何とかなりそうね」
ナタリーから預かった報告書を見ながら、私は順調に進んでいるらしい新規事業の様子に安堵の息を漏らした。せっかくエドゥアール様から信頼を得たのに、それを裏切るわけにはいかないからね。まぁ、私は提案するだけで実際の細かいことはナタリーをはじめとするグシュマーク商会のメンバーが全部やってくれているんだけど。いやぁ、流石うちのスタッフ。めちゃくちゃ優秀。私が突然言い出したことなのに、すぐに動いてくれて段取りをつけてくれた。彼らにはお世話になりすぎて頭が上がらないよね。今月のお給料、アップしよ。
「そうですね。ブルーナイト園芸商会についてはこれ以上お嬢様の方で特にする必要はないと思います。…それよりもお嬢様、ここに来てもう2週間になりますが辺境拍を落とす算段はついているのですか?」
「…う、痛いところをつくわね。…ちょうどそれについて頭を悩ませていたところよ」
そうなのだ。ここにきてあっという間に2週間が経ってしまった。舞踏会まで残り2週間しかないのだ。それまでにエドゥアール様を口説き落として、婚約を結んでもらわなければならない。エドゥアール様以外の男性にエスコートされるとか絶対に嫌だ。
しかし、この2週間で私ができたことといえば、庭師と仲良くなり、この辺境に新たな商会を立ててエドゥアール様にビジネスパートナー認定をされ、料理長の誤解を解き美味しい食事にたどり着いただけ。…あれ、おかしいな。何か一個も恋愛方面で進展がないんだけど…。
「…ナタリー、もしかして私、恋愛の才能ない?」
「今更気づいたんですか、お嬢様。そうですね。少なくとも、狙った男性をコロッと手のひらで転がせるような小悪魔的才能は皆無ですね」
「く、世知辛い…」
最後にエドゥアール様に会えたのは、あの商会を作りたいと交渉しに行った時だ。それ以降は全くエドゥアール様に会えていない。というか、そもそもエドゥアール様がこの城にいない。
「最近、エドゥアール様が忙しそうよね」
毎日朝早く城を出て行ったかと思うと、夜遅くに帰ってきている。どうやら国境の方で何か問題が起きたようだ。その対応でエドゥアール様は毎日駆り出されているらしい。
「どうやら隣国のベルバッハが不穏な動きを見せているみたいですね。それで国境にある城に毎日通い詰めているようです」
「ベルバッハか…。行ったことないなぁ。…あれ?ベルバッハといえば、確か第一皇女が行方不明になったって…」
「3年前の話ですけどね。一時期大捜索をしたみたいですが、今はもう亡くなったとされていて捜索もやめたと聞いています」
「…そうなんだ」
結局見つからなかったのか。…それは可哀そうだな。って、いけない。そんなことよりエドゥアール様をどうするかを考えないと…。
「はぁ、駄目だわ。全然思いつかない。…そもそも、肝心のエドゥアール様が落ち着かないとアプローチすらできないし…」
その時、部屋の扉がたたかれる音がした。私はナタリーと視線を合わせる。私は扉に向かって「どうぞ」と声をかけた。ガチャリと扉が開き、ノックをした人物が部屋に入ってくる。その正体はウォルターだった。
「お取込み中失礼します。エリワイド様にお客様がお見えになっているのですが…」
「私に客?…どなたかしら」
「それが『髭と眼鏡は魅惑のスパイス』といえば伝わると…」
「まぁ!アディが来ているのね!?」
ガタンと音を立てながら椅子から立ち上がる私にウォルターは戸惑いながら尋ねた。
「アディ…さまですか?」
「エリワイド様のご友人です」
ナタリーの冷静な説明にウォルターはなるほどと頷く。
「そうでしたか。いつもの接待室でお待ちいただいていますが、お会いになりますか?」
「ええ、会うわ!ありがとう、ウォルター」
アディは私の友人であり、同志だ。彼女もまたイケオジという存在をこよなく愛する人間で、理想のイケオジを探して世界を飛び回っている。今から約3年前、偶々この国に来ていた彼女と出会い意気投合した。それ以来、定期的に街中で見つけたイケオジについて手紙で報告しあう仲である。
「アディ!」
接待室の中に入ると、そこには腰まで伸ばした赤い髪を揺らしながらこちらを振り向く女性の姿があった。
「エリィ!」
私は彼女のもとに近づくと、手を取って再会を喜ぶ。
「久しぶりね!元気そうでよかったわ。まさかここで貴方に会えるなんて思ってなかったからびっくりしたわよ」
「私こそ、まさかエリィがこんな辺境にいるとは思っていなかったからびっくりしたわ。久しぶりにブランセントに来たから貴方に会いに行ったのに、屋敷にいないんですもの。聞けばこっちに貴方がいるっていうから飛んで来たわ」
そういうとアディは私に席に座りましょうと誘ってくる。私はそれに頷くと用意されていた椅子に座った。ナタリーがお茶を出してくれたのでそれをありがたく受け取りながら、アディに話しかける。
「随分と髪が伸びたわね。雰囲気も大分変った気がするわ」
「ふふふ。あれから3年も経ったんだもの。変わって当たり前よ。そういう貴方だって随分と変わったじゃない。聞いたわよ。貴方のお店、大繁盛なんですって?」
「あはは。私は自分の欲望に従っていただけなんだけどね。仲間たちが優秀すぎて、いつの間にかこんな形に…」
「例え、それが仲間たちの功績であったとしても、そういう仲間を得られたことは貴方の才能だと思うわ。優秀な人材と出会うって簡単そうで意外と難しいものよ」
「ありがとう、アディ。貴方にそう言ってもらえて嬉しいわ」
随分と大人びたアディに時の流れを感じながらも、私は久々の会話に花を咲かせる。
「それで?イケオジ探しの旅は順調?」
「超順調!出会ったイケオジをスケッチして紙にまとめているんだけど、最近、イケオジの魅力を普及するためにそれをまとめて本にしたのよ。名付けてイケオジ図鑑」
「まぁ!素敵ね!私も読んでみたいわ!」
アディの観察力は物凄い。ちょっとした相手のしぐさから相手の好みや癖、性格まで完璧に言い当ててしまうのだ。だからこそ、彼女の書くイケオジに関する考察は目を引くものがある。それをまとめて読めるなんて幸福以外の何ものでもない。
「ふふふ。そう言うと思って持って来たわよ。はい、これ貴方の分。特別にタダであげるわ」
「ありがとう!やっぱ持つべきものはオタクな友達ね!」
さっと差し出されたその本を私は両手で受け取る。決めた。これは家宝にしよう。
「ねぇ、エディ。その代わりと言ってはなんだけど、…貴方にお願いがあるの」
おずおずと切り出されたアディの言葉に私は視線を上げ、アディを見つめる。
「お願い?一体、何かしら?」
「あのね、前に私が家出した原因を話したことがあったでしょう?」
「ああ、お兄さんにイケオジ好きを理解してもらえなくて喧嘩になったっていうやつ?」
3年前、アディがこの国にやってきたのは家出が原因だった。イケオジが好きだという感情が理解してもらえない辛さを誰よりも知っているからこそ、私は彼女からその話をきいていてもたってもいられなかった。彼女の生活が安定するまで、父にお願いして家に泊めていたのだ。しばらくして、資金が貯まると彼女はイケオジ探しの旅へと飛び立っていったが。
「そう。私も若かったのよね…。でも最近になって思うのよ。いい加減仲直りしなきゃって」
きっとアディは元々、お兄さんのことが嫌いではないのだろう。お兄さんの話をするときの彼女の顔はいつも楽しそうだ。だからこそ、ずっとお兄さんと喧嘩別れした状況は彼女にとって良くないのではないかと心配していた。仲直りしたいと前向きな気持ちになってくれたのは、私にとっても嬉しいことだった。
「それでね、仲直りの品としてお兄様に服をプレゼントしたいと思っているの。私の国では服をプレゼントするのは親愛の証だから」
なるほど。確かにそういう文化がある国の存在は噂で聞いたことがある。会う口実にもなるし、服をプレゼントするというのは中々いいアイデアだ。
「ねぇ、エリィ。この依頼、貴方の所で引き受けてくれないかしら。私、貴方の作る服が大好きなのよ。ぜひ、お兄様に貴方が作る服を着てもらいたいわ」
アディの言葉に私は笑顔で頷いた。大切な友人の頼み、断るわけがない。
「そういうことなら喜んで引き受けるわよ。他でもない大切な友人の頼みだもの。アディがお兄さんと仲直りできるように全力で応援するわ!」
「ありがとう、エディ。嬉しいわ」
ほっとしたような笑みを浮かべるアディ。それを横目に見ながら私はナタリーから紙を受取り、アディに笑いかけた。
「そうと決まれば、早速打ち合わせしましょ!最高の一着をお兄さんにお届けするわよ!」
「ええ!」
こうしてアディ、お兄さんと仲直り大作戦は幕を開けたのだった。
ナタリーから預かった報告書を見ながら、私は順調に進んでいるらしい新規事業の様子に安堵の息を漏らした。せっかくエドゥアール様から信頼を得たのに、それを裏切るわけにはいかないからね。まぁ、私は提案するだけで実際の細かいことはナタリーをはじめとするグシュマーク商会のメンバーが全部やってくれているんだけど。いやぁ、流石うちのスタッフ。めちゃくちゃ優秀。私が突然言い出したことなのに、すぐに動いてくれて段取りをつけてくれた。彼らにはお世話になりすぎて頭が上がらないよね。今月のお給料、アップしよ。
「そうですね。ブルーナイト園芸商会についてはこれ以上お嬢様の方で特にする必要はないと思います。…それよりもお嬢様、ここに来てもう2週間になりますが辺境拍を落とす算段はついているのですか?」
「…う、痛いところをつくわね。…ちょうどそれについて頭を悩ませていたところよ」
そうなのだ。ここにきてあっという間に2週間が経ってしまった。舞踏会まで残り2週間しかないのだ。それまでにエドゥアール様を口説き落として、婚約を結んでもらわなければならない。エドゥアール様以外の男性にエスコートされるとか絶対に嫌だ。
しかし、この2週間で私ができたことといえば、庭師と仲良くなり、この辺境に新たな商会を立ててエドゥアール様にビジネスパートナー認定をされ、料理長の誤解を解き美味しい食事にたどり着いただけ。…あれ、おかしいな。何か一個も恋愛方面で進展がないんだけど…。
「…ナタリー、もしかして私、恋愛の才能ない?」
「今更気づいたんですか、お嬢様。そうですね。少なくとも、狙った男性をコロッと手のひらで転がせるような小悪魔的才能は皆無ですね」
「く、世知辛い…」
最後にエドゥアール様に会えたのは、あの商会を作りたいと交渉しに行った時だ。それ以降は全くエドゥアール様に会えていない。というか、そもそもエドゥアール様がこの城にいない。
「最近、エドゥアール様が忙しそうよね」
毎日朝早く城を出て行ったかと思うと、夜遅くに帰ってきている。どうやら国境の方で何か問題が起きたようだ。その対応でエドゥアール様は毎日駆り出されているらしい。
「どうやら隣国のベルバッハが不穏な動きを見せているみたいですね。それで国境にある城に毎日通い詰めているようです」
「ベルバッハか…。行ったことないなぁ。…あれ?ベルバッハといえば、確か第一皇女が行方不明になったって…」
「3年前の話ですけどね。一時期大捜索をしたみたいですが、今はもう亡くなったとされていて捜索もやめたと聞いています」
「…そうなんだ」
結局見つからなかったのか。…それは可哀そうだな。って、いけない。そんなことよりエドゥアール様をどうするかを考えないと…。
「はぁ、駄目だわ。全然思いつかない。…そもそも、肝心のエドゥアール様が落ち着かないとアプローチすらできないし…」
その時、部屋の扉がたたかれる音がした。私はナタリーと視線を合わせる。私は扉に向かって「どうぞ」と声をかけた。ガチャリと扉が開き、ノックをした人物が部屋に入ってくる。その正体はウォルターだった。
「お取込み中失礼します。エリワイド様にお客様がお見えになっているのですが…」
「私に客?…どなたかしら」
「それが『髭と眼鏡は魅惑のスパイス』といえば伝わると…」
「まぁ!アディが来ているのね!?」
ガタンと音を立てながら椅子から立ち上がる私にウォルターは戸惑いながら尋ねた。
「アディ…さまですか?」
「エリワイド様のご友人です」
ナタリーの冷静な説明にウォルターはなるほどと頷く。
「そうでしたか。いつもの接待室でお待ちいただいていますが、お会いになりますか?」
「ええ、会うわ!ありがとう、ウォルター」
アディは私の友人であり、同志だ。彼女もまたイケオジという存在をこよなく愛する人間で、理想のイケオジを探して世界を飛び回っている。今から約3年前、偶々この国に来ていた彼女と出会い意気投合した。それ以来、定期的に街中で見つけたイケオジについて手紙で報告しあう仲である。
「アディ!」
接待室の中に入ると、そこには腰まで伸ばした赤い髪を揺らしながらこちらを振り向く女性の姿があった。
「エリィ!」
私は彼女のもとに近づくと、手を取って再会を喜ぶ。
「久しぶりね!元気そうでよかったわ。まさかここで貴方に会えるなんて思ってなかったからびっくりしたわよ」
「私こそ、まさかエリィがこんな辺境にいるとは思っていなかったからびっくりしたわ。久しぶりにブランセントに来たから貴方に会いに行ったのに、屋敷にいないんですもの。聞けばこっちに貴方がいるっていうから飛んで来たわ」
そういうとアディは私に席に座りましょうと誘ってくる。私はそれに頷くと用意されていた椅子に座った。ナタリーがお茶を出してくれたのでそれをありがたく受け取りながら、アディに話しかける。
「随分と髪が伸びたわね。雰囲気も大分変った気がするわ」
「ふふふ。あれから3年も経ったんだもの。変わって当たり前よ。そういう貴方だって随分と変わったじゃない。聞いたわよ。貴方のお店、大繁盛なんですって?」
「あはは。私は自分の欲望に従っていただけなんだけどね。仲間たちが優秀すぎて、いつの間にかこんな形に…」
「例え、それが仲間たちの功績であったとしても、そういう仲間を得られたことは貴方の才能だと思うわ。優秀な人材と出会うって簡単そうで意外と難しいものよ」
「ありがとう、アディ。貴方にそう言ってもらえて嬉しいわ」
随分と大人びたアディに時の流れを感じながらも、私は久々の会話に花を咲かせる。
「それで?イケオジ探しの旅は順調?」
「超順調!出会ったイケオジをスケッチして紙にまとめているんだけど、最近、イケオジの魅力を普及するためにそれをまとめて本にしたのよ。名付けてイケオジ図鑑」
「まぁ!素敵ね!私も読んでみたいわ!」
アディの観察力は物凄い。ちょっとした相手のしぐさから相手の好みや癖、性格まで完璧に言い当ててしまうのだ。だからこそ、彼女の書くイケオジに関する考察は目を引くものがある。それをまとめて読めるなんて幸福以外の何ものでもない。
「ふふふ。そう言うと思って持って来たわよ。はい、これ貴方の分。特別にタダであげるわ」
「ありがとう!やっぱ持つべきものはオタクな友達ね!」
さっと差し出されたその本を私は両手で受け取る。決めた。これは家宝にしよう。
「ねぇ、エディ。その代わりと言ってはなんだけど、…貴方にお願いがあるの」
おずおずと切り出されたアディの言葉に私は視線を上げ、アディを見つめる。
「お願い?一体、何かしら?」
「あのね、前に私が家出した原因を話したことがあったでしょう?」
「ああ、お兄さんにイケオジ好きを理解してもらえなくて喧嘩になったっていうやつ?」
3年前、アディがこの国にやってきたのは家出が原因だった。イケオジが好きだという感情が理解してもらえない辛さを誰よりも知っているからこそ、私は彼女からその話をきいていてもたってもいられなかった。彼女の生活が安定するまで、父にお願いして家に泊めていたのだ。しばらくして、資金が貯まると彼女はイケオジ探しの旅へと飛び立っていったが。
「そう。私も若かったのよね…。でも最近になって思うのよ。いい加減仲直りしなきゃって」
きっとアディは元々、お兄さんのことが嫌いではないのだろう。お兄さんの話をするときの彼女の顔はいつも楽しそうだ。だからこそ、ずっとお兄さんと喧嘩別れした状況は彼女にとって良くないのではないかと心配していた。仲直りしたいと前向きな気持ちになってくれたのは、私にとっても嬉しいことだった。
「それでね、仲直りの品としてお兄様に服をプレゼントしたいと思っているの。私の国では服をプレゼントするのは親愛の証だから」
なるほど。確かにそういう文化がある国の存在は噂で聞いたことがある。会う口実にもなるし、服をプレゼントするというのは中々いいアイデアだ。
「ねぇ、エリィ。この依頼、貴方の所で引き受けてくれないかしら。私、貴方の作る服が大好きなのよ。ぜひ、お兄様に貴方が作る服を着てもらいたいわ」
アディの言葉に私は笑顔で頷いた。大切な友人の頼み、断るわけがない。
「そういうことなら喜んで引き受けるわよ。他でもない大切な友人の頼みだもの。アディがお兄さんと仲直りできるように全力で応援するわ!」
「ありがとう、エディ。嬉しいわ」
ほっとしたような笑みを浮かべるアディ。それを横目に見ながら私はナタリーから紙を受取り、アディに笑いかけた。
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