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七章 決戦
30話 魔王と謁見
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魔王城の門兵に職質されたが、魔族の仲介で人間国の代表として来ていることになった。
魔王城の中に入ると、思ったより清潔感があり外観からは想像できないような華やかな装飾が施されていた。
「この内装は現魔王の趣味か?」
「趣味というわけではないが魔王様は綺麗なものが好きでな。昔は武器や防具が飾られてたんだが魔王様が「物騒だからやめて」と言って花瓶や絵画に変わったんだ」
「ん?魔王ってもしかして女の子なのか?」
「魔王は男にしかなれないと思ってたのか?魔王は力があるやつなら女子でも幼子でもなれるんだ」
「それは分かってるが……まさか今のが女とはなぁ」
「どうした、女だと都合が悪いのか?」
「いや、もし戦闘とかになってもなるべく女は殴りたくなくてな」
「じゃあそうならないように頑張ってくれ」
連れてきてくれた魔族がそういい立ち止まると、目の前に石造りの巨大な扉があった。
「この中に魔王がいるのか?」
「ああ、今開けるからちょっと待っててくれ」
こんなでかい扉をどうやって空けるのだろうと少し楽しみに待っていたが、魔族は何故か扉の隣に移動し何も無い壁に手を着けた。
「なにしてんだ?」
「ちょっと待っててくださいねぇ」
「すぐ開くから少し静かに」
2人の魔族に声をかけるのを止められて大人しくしていると、ガコンッと何かが外れる音がした。
「よし、開くぞ」
何かこの扉を開けるためのカラクリがあったみたいだ。まあそうでもしないとこんな扉開かないだろうしな。
「おし、こっちから入ってくれ」
俺が巨大な扉を見ながらまだかまだかと待っていると、壁に手をついていた魔族の方からそう声をかけられた。
そっちの方に顔を向けると、ちょうど人1人分入れそうな穴が開いていた。
「あ、あれ?この扉は開かないのか?」
「わざわざそんな重たい扉開けるのはめんどくさいだろ?てか何年も使ってなさすぎて錆びて動かないんだよ」
「えぇぇ」
俺は魔族が意外にもガサツだったことを身をもって体験し、少し気落としながら穴を潜った。
「よくぞ来たの。人間の童よ」
穴を潜った先には、妙齢の女が1人だけ八畳間程度の小さな空間に居た。
綺麗な紅い髪を足元まで伸ばし、端麗な顔立ちをしてすらっと長い身長をしているその女はカツカツと靴音を鳴らしながら俺の目の前まで来た。
「お主がアラストールとか言うやつかの?」
「ああ、そうだ。おまえが魔王でいいんだよな」
「左様。では早速取引と行こう。我が国魔国は人間の国を始め全ての種族国家に対し平和協定を結びたいと思っている。そしてあわよくば、同盟国家にも加わりたいと思っている」
魔王はソファに座り、俺も座るように言ってからいきなりそんなことを言い始めた。
「魔族はまだ迫害の対象になっている。俺が仲介し国の代表が許しても国民がそれを受け付けないだろう」
「それは我も危惧しておる。そこはこれからの我ら魔族の振る舞いで改善していきたいと思っている。現在まで残っている魔族の固定観念をここで断ち切りたいのだ」
「どうしてそこまで拘る。魔族は今まで独立国家として成り立っていたんだろう?」
「側から見ればそうだろう。しかし、現在魔国は危機に瀕しておる」
「……食料問題とかか?」
「御名答。魔国の土は栽培には向いておらん。土魔法でどれだけ耕しても死んだ土では実になってくれんのだ」
「それは魔国の人数増加にも関係していたりするのか?」
「よくそこまで気が回るの。だがその通りだ。魔国の人口は近年増加傾向にある。だが食料がなければそのものたちは餓死してしまう」
「今までの魔王はどうしてたんだ」
「人口を保たせるために子供を産む数を国法で定めていたのだ。だがそれは我の信念には合わないと思い廃棄したのだ」
「信念?」
「ああ。我は民全てに自由と幸せになって欲しいのだ。国に縛られるのではなく、自分の意思で動ける自由な国にしたい。今までの魔王は民を束縛して戦争の道具としか見ていなかったからな」
「…………なんだ。いい王じゃないか」
「むっ、なんだその言い方は」
「褒めてんだよ。お膳立てはしてやるから、あとはそっちで頑張れよ」
「い、いいのか?」
「なにがだよ」
「いや、お主も人間だろう。魔族に肩入れしているとバレればお主も迫害されるのではないか?」
「そんな心配してんなら俺なんか呼ぶなよ。だがまあ、そんな心配はいらないとおもうぜ」
「そ、そうであればいいんだが」
「じゃあ、さっそく始めるか。真実化発動。現在の魔族は、決して悪いやつじゃない。少なくとも、魔王は良い奴だ」
俺がそう呟くと、ここにいる4人は首を傾げた。
俺のしていることの意味がわからないのだろう。
「これは俺のスキルだ。安心しろ、これで多少は魔族の風評被害は無くなるはずだ」
「ほ、本当なのか?」
「五年もあったら有効な関係が気づけると思うぞ。ま、何か問題があったらこれで俺を呼んでくれ」
俺はそう言い、連絡用の魔道具を魔王に手渡した。
「そのボタンを押して要件を言えば、俺に聞こえるから」
「す、すごいなこの魔道具は。人類はここまで進化していたのか」
「それは俺が作った奴だからまだ普及はしてないぞ。じゃあ俺は行くから、あとは頑張れよ」
「ああ。必ずや友好的な関係を築くとしよう。今日は本当にありがとう」
「気にするな。じゃあな」
俺はそう言って、部屋から出て帰路に立った。連れてきてくれた魔族が送ると言ってくれたが送ってもらっていると何日かかるかわからないため一人で帰ることにした。まぁ帰ると言っても転移なんだが。
転移を発動して、俺は一瞬で王国に戻ってきた。
ーーーーーーーー
作者より。
第12回のファンタジー小説大賞に今年も一応エントリーしたので、とりあえず頑張ってみようと思います。
他作品も投稿しているので、よかったら読んでみてください。
これからも頑張るので、応援よろしくお願いします!
魔王城の中に入ると、思ったより清潔感があり外観からは想像できないような華やかな装飾が施されていた。
「この内装は現魔王の趣味か?」
「趣味というわけではないが魔王様は綺麗なものが好きでな。昔は武器や防具が飾られてたんだが魔王様が「物騒だからやめて」と言って花瓶や絵画に変わったんだ」
「ん?魔王ってもしかして女の子なのか?」
「魔王は男にしかなれないと思ってたのか?魔王は力があるやつなら女子でも幼子でもなれるんだ」
「それは分かってるが……まさか今のが女とはなぁ」
「どうした、女だと都合が悪いのか?」
「いや、もし戦闘とかになってもなるべく女は殴りたくなくてな」
「じゃあそうならないように頑張ってくれ」
連れてきてくれた魔族がそういい立ち止まると、目の前に石造りの巨大な扉があった。
「この中に魔王がいるのか?」
「ああ、今開けるからちょっと待っててくれ」
こんなでかい扉をどうやって空けるのだろうと少し楽しみに待っていたが、魔族は何故か扉の隣に移動し何も無い壁に手を着けた。
「なにしてんだ?」
「ちょっと待っててくださいねぇ」
「すぐ開くから少し静かに」
2人の魔族に声をかけるのを止められて大人しくしていると、ガコンッと何かが外れる音がした。
「よし、開くぞ」
何かこの扉を開けるためのカラクリがあったみたいだ。まあそうでもしないとこんな扉開かないだろうしな。
「おし、こっちから入ってくれ」
俺が巨大な扉を見ながらまだかまだかと待っていると、壁に手をついていた魔族の方からそう声をかけられた。
そっちの方に顔を向けると、ちょうど人1人分入れそうな穴が開いていた。
「あ、あれ?この扉は開かないのか?」
「わざわざそんな重たい扉開けるのはめんどくさいだろ?てか何年も使ってなさすぎて錆びて動かないんだよ」
「えぇぇ」
俺は魔族が意外にもガサツだったことを身をもって体験し、少し気落としながら穴を潜った。
「よくぞ来たの。人間の童よ」
穴を潜った先には、妙齢の女が1人だけ八畳間程度の小さな空間に居た。
綺麗な紅い髪を足元まで伸ばし、端麗な顔立ちをしてすらっと長い身長をしているその女はカツカツと靴音を鳴らしながら俺の目の前まで来た。
「お主がアラストールとか言うやつかの?」
「ああ、そうだ。おまえが魔王でいいんだよな」
「左様。では早速取引と行こう。我が国魔国は人間の国を始め全ての種族国家に対し平和協定を結びたいと思っている。そしてあわよくば、同盟国家にも加わりたいと思っている」
魔王はソファに座り、俺も座るように言ってからいきなりそんなことを言い始めた。
「魔族はまだ迫害の対象になっている。俺が仲介し国の代表が許しても国民がそれを受け付けないだろう」
「それは我も危惧しておる。そこはこれからの我ら魔族の振る舞いで改善していきたいと思っている。現在まで残っている魔族の固定観念をここで断ち切りたいのだ」
「どうしてそこまで拘る。魔族は今まで独立国家として成り立っていたんだろう?」
「側から見ればそうだろう。しかし、現在魔国は危機に瀕しておる」
「……食料問題とかか?」
「御名答。魔国の土は栽培には向いておらん。土魔法でどれだけ耕しても死んだ土では実になってくれんのだ」
「それは魔国の人数増加にも関係していたりするのか?」
「よくそこまで気が回るの。だがその通りだ。魔国の人口は近年増加傾向にある。だが食料がなければそのものたちは餓死してしまう」
「今までの魔王はどうしてたんだ」
「人口を保たせるために子供を産む数を国法で定めていたのだ。だがそれは我の信念には合わないと思い廃棄したのだ」
「信念?」
「ああ。我は民全てに自由と幸せになって欲しいのだ。国に縛られるのではなく、自分の意思で動ける自由な国にしたい。今までの魔王は民を束縛して戦争の道具としか見ていなかったからな」
「…………なんだ。いい王じゃないか」
「むっ、なんだその言い方は」
「褒めてんだよ。お膳立てはしてやるから、あとはそっちで頑張れよ」
「い、いいのか?」
「なにがだよ」
「いや、お主も人間だろう。魔族に肩入れしているとバレればお主も迫害されるのではないか?」
「そんな心配してんなら俺なんか呼ぶなよ。だがまあ、そんな心配はいらないとおもうぜ」
「そ、そうであればいいんだが」
「じゃあ、さっそく始めるか。真実化発動。現在の魔族は、決して悪いやつじゃない。少なくとも、魔王は良い奴だ」
俺がそう呟くと、ここにいる4人は首を傾げた。
俺のしていることの意味がわからないのだろう。
「これは俺のスキルだ。安心しろ、これで多少は魔族の風評被害は無くなるはずだ」
「ほ、本当なのか?」
「五年もあったら有効な関係が気づけると思うぞ。ま、何か問題があったらこれで俺を呼んでくれ」
俺はそう言い、連絡用の魔道具を魔王に手渡した。
「そのボタンを押して要件を言えば、俺に聞こえるから」
「す、すごいなこの魔道具は。人類はここまで進化していたのか」
「それは俺が作った奴だからまだ普及はしてないぞ。じゃあ俺は行くから、あとは頑張れよ」
「ああ。必ずや友好的な関係を築くとしよう。今日は本当にありがとう」
「気にするな。じゃあな」
俺はそう言って、部屋から出て帰路に立った。連れてきてくれた魔族が送ると言ってくれたが送ってもらっていると何日かかるかわからないため一人で帰ることにした。まぁ帰ると言っても転移なんだが。
転移を発動して、俺は一瞬で王国に戻ってきた。
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作者より。
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