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七章 決戦
35話 死線を越えた先に 4
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太陽を凍らされたジークは今起こっている自体がうまく認識できていなかった。
「太陽が…凍った?」
「そうですね。まあ、凍らせたのは太陽ではないんですが」
「はっ?」
コイルと言っていることが理解できないジークは呆然とした顔で立ち尽くしたまんまだった。
「簡単に言いますと、太陽はエネルギーの活動体です。なので、エネルギー活動の流れを止めました」
「そ、そんなのって……」
「氷魔法を極めた私にしかできないことですよ。ここまで来るのに何億とかかりましたからね。まあいつのまにか邪神になってましたがこれもいい経験ですよ。あ、止められる時間に限りがありますので早々に殺させてもらいますね」
「そんなのってありかよ」
いつのまにかまた足元が凍らされていて、逃げることができないままゆっくりとコイルはジークの元に近づいていった。
「来るんじゃねえって言ってんだろうが!」
「煩いですね。まあ最期の叫びとでも捉えれば心地いいものです」
身動きが取れないジークを哀れなものを見るような目で見つめ、ジークは怒りを露わにした表情で睨み返していた。
「さようなら」
「クソが!」
手に先が鋭利な氷を出現させ、頭上に振りかぶった。
そして、コイルは一言の別れの挨拶をしてその鋭利な氷を振り下ろした。
地面に氷が落ち、カランカランと音が鳴った。
「どうしてなんですかね」
「…………」
コイルは立ち尽くしたまま、ジークにそう質問した。だが、ジークは身動き一つせず言葉も返さなかった。
「ここまで来たのに何もできずに死ぬのは……どうなんですか」
「…………」
「兄弟より先に死ぬのは辛いですか」
「…………」
「私は……辛いですね」
コイルは最後にそう言って仰向けに倒れた。
「俺だって、そんな目に遭えば辛いさ」
仰向けで倒れているコイルを上から見つめながらそう呟く。
術者が完全に死んだことで身動きを封じていた氷は全て霧散し、ジークは自由に動けるようになった。
なぜジークが生きていて、コイルが死んだのか。
それはジークが持つ『天照』の能力だった。
『八咫の鏡』
透明であり、誰からも察知されない無敵の盾。
自分への攻撃を全て相手にそのまま返すという不意の一撃。
体の身動きを封じた氷は、攻撃ではなく妨害と見受けられたためこのスキルが使えなかったが、氷での明確な攻撃行動に反応して発動したのだ。
「だから言ったんだよ。俺に近づくなって」
他にもいくつか策はあったがどれも確実にできる自信がなかったため、一番できる確率が高いこのスキルを使用したのだ。
「さてと、あっちは終わったかな」
少し遠くで戦っているはずのアストを見つけるためにキョロキョロと辺りを見回すがどこにも見当たらなかった。
一方場所がある変わってアストたちがいる場所は、上空にいた。
あれからしばらく睨み合いをして戦闘となったのだが、カイルは風魔法を使って俺の攻撃を全て無効にするせいでほとんど最初の時と変わっていなかった。だが、カイルの攻撃も俺が全て無効化していたためそれはお互い様だった。
「チッ……とっとと死んでくれたらいいものを」
「俺は死ねないんでな。そろそろ決着をつけるか」
「そうだな……死ね!」
カイルがそう言うと、視界がいきなり狭まり呼吸が一瞬できなくなった。
「風魔法の極致。空気を思いのままには操ることができる。
今お前に起きているのは、お前の周囲の空気をいじって酸素の量を多くしたんだ。
高分圧となった酸素を摂取し続けているとどうなるか、答えは酸素中毒になる。お前は神だからあんまり気にしないかもしれないが元は人間だ。人間の構造を壊せば自ずと体も壊れていく。だから戦闘中ずっとお前の周囲の空気をいじってたんだが、やっと効果が出てきたか」
カイルが長々と説明してくれている間。俺は呼吸ができないまま立ち尽くしていた。
「じゃあな」
カイルは別れの言葉を呟き風を纏った矢を放った。
「死ぬのはお前なんだよ」
だが次の瞬間、アストは飛来した矢を掴んで折捨てた。
「な、なんで動けてるんだよ!」
「スキルだ。特別に教えてやるよ。このスキルは『無酸素行動』。酸素を摂取しなくてもスキルを使っている間は無酸素で自由に動き回ることができるんだよ」
「馬鹿げてるだろ」
「それじゃあな」
カイルが頬を引きっていると、いつのまにか目の前に移動してきたアストの手によって地上に叩き落とされた。
その衝撃で地面は陥没し、カイルは気を失った。
「終わったかアスト」
「おう。そっちも終わったみたいだな」
「まあな。てかアイツらはどこ行ったんだ?」
「確かに…ジャンヌたちが見当たらないな」
周りを見るが、分断されてしまったジャンヌたちの姿が見えなかった。
『判別』や探知系の魔法やスキルを使うが全く反応がなかった。
「無事だといいんだが……」
「アイツらも強いから大丈夫だろ。俺たちはとりあえず先に進もうぜ」
「……ああ」
ジャンヌたちの無事を祈りながら、俺とジークは奥に続いている穴に進んでいった。
「太陽が…凍った?」
「そうですね。まあ、凍らせたのは太陽ではないんですが」
「はっ?」
コイルと言っていることが理解できないジークは呆然とした顔で立ち尽くしたまんまだった。
「簡単に言いますと、太陽はエネルギーの活動体です。なので、エネルギー活動の流れを止めました」
「そ、そんなのって……」
「氷魔法を極めた私にしかできないことですよ。ここまで来るのに何億とかかりましたからね。まあいつのまにか邪神になってましたがこれもいい経験ですよ。あ、止められる時間に限りがありますので早々に殺させてもらいますね」
「そんなのってありかよ」
いつのまにかまた足元が凍らされていて、逃げることができないままゆっくりとコイルはジークの元に近づいていった。
「来るんじゃねえって言ってんだろうが!」
「煩いですね。まあ最期の叫びとでも捉えれば心地いいものです」
身動きが取れないジークを哀れなものを見るような目で見つめ、ジークは怒りを露わにした表情で睨み返していた。
「さようなら」
「クソが!」
手に先が鋭利な氷を出現させ、頭上に振りかぶった。
そして、コイルは一言の別れの挨拶をしてその鋭利な氷を振り下ろした。
地面に氷が落ち、カランカランと音が鳴った。
「どうしてなんですかね」
「…………」
コイルは立ち尽くしたまま、ジークにそう質問した。だが、ジークは身動き一つせず言葉も返さなかった。
「ここまで来たのに何もできずに死ぬのは……どうなんですか」
「…………」
「兄弟より先に死ぬのは辛いですか」
「…………」
「私は……辛いですね」
コイルは最後にそう言って仰向けに倒れた。
「俺だって、そんな目に遭えば辛いさ」
仰向けで倒れているコイルを上から見つめながらそう呟く。
術者が完全に死んだことで身動きを封じていた氷は全て霧散し、ジークは自由に動けるようになった。
なぜジークが生きていて、コイルが死んだのか。
それはジークが持つ『天照』の能力だった。
『八咫の鏡』
透明であり、誰からも察知されない無敵の盾。
自分への攻撃を全て相手にそのまま返すという不意の一撃。
体の身動きを封じた氷は、攻撃ではなく妨害と見受けられたためこのスキルが使えなかったが、氷での明確な攻撃行動に反応して発動したのだ。
「だから言ったんだよ。俺に近づくなって」
他にもいくつか策はあったがどれも確実にできる自信がなかったため、一番できる確率が高いこのスキルを使用したのだ。
「さてと、あっちは終わったかな」
少し遠くで戦っているはずのアストを見つけるためにキョロキョロと辺りを見回すがどこにも見当たらなかった。
一方場所がある変わってアストたちがいる場所は、上空にいた。
あれからしばらく睨み合いをして戦闘となったのだが、カイルは風魔法を使って俺の攻撃を全て無効にするせいでほとんど最初の時と変わっていなかった。だが、カイルの攻撃も俺が全て無効化していたためそれはお互い様だった。
「チッ……とっとと死んでくれたらいいものを」
「俺は死ねないんでな。そろそろ決着をつけるか」
「そうだな……死ね!」
カイルがそう言うと、視界がいきなり狭まり呼吸が一瞬できなくなった。
「風魔法の極致。空気を思いのままには操ることができる。
今お前に起きているのは、お前の周囲の空気をいじって酸素の量を多くしたんだ。
高分圧となった酸素を摂取し続けているとどうなるか、答えは酸素中毒になる。お前は神だからあんまり気にしないかもしれないが元は人間だ。人間の構造を壊せば自ずと体も壊れていく。だから戦闘中ずっとお前の周囲の空気をいじってたんだが、やっと効果が出てきたか」
カイルが長々と説明してくれている間。俺は呼吸ができないまま立ち尽くしていた。
「じゃあな」
カイルは別れの言葉を呟き風を纏った矢を放った。
「死ぬのはお前なんだよ」
だが次の瞬間、アストは飛来した矢を掴んで折捨てた。
「な、なんで動けてるんだよ!」
「スキルだ。特別に教えてやるよ。このスキルは『無酸素行動』。酸素を摂取しなくてもスキルを使っている間は無酸素で自由に動き回ることができるんだよ」
「馬鹿げてるだろ」
「それじゃあな」
カイルが頬を引きっていると、いつのまにか目の前に移動してきたアストの手によって地上に叩き落とされた。
その衝撃で地面は陥没し、カイルは気を失った。
「終わったかアスト」
「おう。そっちも終わったみたいだな」
「まあな。てかアイツらはどこ行ったんだ?」
「確かに…ジャンヌたちが見当たらないな」
周りを見るが、分断されてしまったジャンヌたちの姿が見えなかった。
『判別』や探知系の魔法やスキルを使うが全く反応がなかった。
「無事だといいんだが……」
「アイツらも強いから大丈夫だろ。俺たちはとりあえず先に進もうぜ」
「……ああ」
ジャンヌたちの無事を祈りながら、俺とジークは奥に続いている穴に進んでいった。
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