43 / 78
ざまぁされたらやり返す編
41話 能動的34秒間 イラストあり
「ゆう……しゃ……? ねえ、勇者!! ねえってば!?」
目の前で起こったそれに対して、最初にリアクションが起こしたのはファイフだった。
緩い弧を描いてから、地面に叩きつけられたユーリに駆け寄ろうとした、そのとき。
「全員、その場から動くなあぁッ! 動けば女王を殺す!!」
銃口をクインリィに突きつけながら、ガイムがそう叫んだことで、彼女の動きが止まった。
帝国兵士に拘束魔法をかけていたセイリーヌ、それを手伝っていたエニファーとビーリッシュ。そしてクインリィの横に控えていたジージョも、愕然としながら硬直する。
ガイムに呼びかけられたから、ではあるのだが、別の理由もある。
仰向けで倒れ伏したユーリが、微動だにしなかったからである。
数メートル先に倒れ伏すユーリに、ファイフは半ば絶叫のような声で呼びかける。
「ねえ、勇者! ウソだよね!? 銃で撃たれたくらいで、どうこうならないよね!? あ、あたしにぶん殴られても生きてんだもん! そんなんで死ぬわけないよね!?」
「誰が喋っていいと言った! っく……。やつが魔法を展開する前に撃ち込んだし、この弾丸は【勇装龍気】すら貫通する! そいつは死んだ!」
希望の芽を摘むためにそう怒鳴りつつ、ガイムは右腕の激痛に顔をしかめる。
身体強化魔法も使わずに撃ってしまったので、その反動(リコイル)で右腕が折れたのだ。
しかし、いまは強化魔法をかけているし、左手さえあれば十分に目標を達成できる。
「ヘルデン、奴らを殺せ! 女王以外の全員を、いますぐ殺すのだ!」
罪から言い逃れることはできなかった。
罪を罪で無くすことにも失敗した。
だったら、罪をなかったことにしてしまえばいい。
ここにいる全員を、葬り去れば良いのだ。
「お前らが黙って殺されれば、女王の命は保証してやる! だからその場で大人しくしていろ!」
「……ざっけんなよ。ンな話、信じられるわけ……!」
凄まじい殺気を立ち昇らせるファイフを、ガイムは銃の撃鉄を引き起こしながら睨み返す。
「そう思うのなら、勝手にするといい。わしも勝手にさせて貰うからな。
わしはもう、失うものなどなにもない。どう転んでも構わんぞ!」
「テメエ……!」
殺傷効果を生みそうなほどの視線をぶつけ合う中、ヘルデンは自分に治癒魔法をかけてから立ち上がり、
「拘束魔法【ジャイリス】」
「っぐ!」
ファイフを拘束してから、ブチ切れた目で彼女を見下した。
「いいけどよ……このデカ女やるのは最後だ。こいつは手足引きちぎって、犯しながら殺す……!」
「好きにしろ! さっさとせんか!」
「……分ぁった……よッ!!」
「ぐぅッ!」
ファイフの背を踏みつけてから、ヘルデンはジージョへと歩み寄り、手にした剣に【勇装龍気】を纏わせる。
「っく……!」
ヘルデンがそれを振りかぶり、ジージョはギュッと目をつぶりながら目を逸らし……。
「──彼女を殺すのなら、あなたも殺します」
凄まじい眼光を宿した目でヘルデンを射抜きながら、クインリィがそう言った。
「あなたの親も、殺します。兄弟も殺します。恋人も、親戚も、友人も、知人も、飼い犬にいたるまで。
いままであなたと関りを持った生物、全てを殺します。
逃げられると思わないでください。この世のあらゆる責め苦の果てに、殺します。
彼女が死んでも、私が死んでも、絶対に殺します」
「はっ……はあ!? なん、だよそれ……!」
あまりの迫力に、思わずヘルデンの手が止まる。
クインリィが身動き一つ取れないことは分かっている。
が、その視線に、声に、そして威容に射すくめられたように、動きを縫い留められてしまったのだ。
「や……やれるもんなら、やってみろよ!!」
しかし、やがて覚悟を固めたように、ヘルデンは振り上げた剣をグッと握り直す。
「やめっ……!」
クインリィがそう叫び、剣が振り下げられそうになった、そのとき──。
「あー! びっくりしたぁ! 死ぬかと思ったあ!!」
「「「「「!!!」」」」」
がばりっ! と、いきなりユーリが起き上がり、周囲の者たちもビクリと肩を跳ね上げた。
そんな中、ユーリは当たり前のように起き上がると、パンパンと服の裾に着いた砂を払いながら、
「ってか、え? 僕寝てた? 落ちてたよねいま? うわうわうわ。ごめんマジで。どれくらい寝てたかな?」
「34秒です」
「あー。でもそれくらいなら、まあまあまあ……って」
クインリィのその声に応えるとともに、ユーリは彼女のほうを振り向くと、いままさに剣を振り下げる瞬間のヘルデンと目が合った。
すると、その目の奥から、スゥ、と光が消え失せ、
「分かるよね、ヘルデンくん。そんなことしたら……」
ゴバアッ! と、その全身から凄まじい量の【勇装龍気】を放出させながら、目が全く笑っていない笑顔を浮かべた。
「殺すよ?」
「…………ッ」
ガチャンッ、と剣を取り落とし、ヘルデンはその場へとへたり込んだ。
その股間はだんだんと湿っていく。
重く、鋭く、恐ろしく、質量すらも伴った殺気。
一瞬にして、ヘルデンは理解する。
勇者として──生き物としての、格が違う、と。
この男だけは、相手にしてはいけない、と。
生物としての本能で、それを理解らせられてしまったのだ。
目の前で起こったそれに対して、最初にリアクションが起こしたのはファイフだった。
緩い弧を描いてから、地面に叩きつけられたユーリに駆け寄ろうとした、そのとき。
「全員、その場から動くなあぁッ! 動けば女王を殺す!!」
銃口をクインリィに突きつけながら、ガイムがそう叫んだことで、彼女の動きが止まった。
帝国兵士に拘束魔法をかけていたセイリーヌ、それを手伝っていたエニファーとビーリッシュ。そしてクインリィの横に控えていたジージョも、愕然としながら硬直する。
ガイムに呼びかけられたから、ではあるのだが、別の理由もある。
仰向けで倒れ伏したユーリが、微動だにしなかったからである。
数メートル先に倒れ伏すユーリに、ファイフは半ば絶叫のような声で呼びかける。
「ねえ、勇者! ウソだよね!? 銃で撃たれたくらいで、どうこうならないよね!? あ、あたしにぶん殴られても生きてんだもん! そんなんで死ぬわけないよね!?」
「誰が喋っていいと言った! っく……。やつが魔法を展開する前に撃ち込んだし、この弾丸は【勇装龍気】すら貫通する! そいつは死んだ!」
希望の芽を摘むためにそう怒鳴りつつ、ガイムは右腕の激痛に顔をしかめる。
身体強化魔法も使わずに撃ってしまったので、その反動(リコイル)で右腕が折れたのだ。
しかし、いまは強化魔法をかけているし、左手さえあれば十分に目標を達成できる。
「ヘルデン、奴らを殺せ! 女王以外の全員を、いますぐ殺すのだ!」
罪から言い逃れることはできなかった。
罪を罪で無くすことにも失敗した。
だったら、罪をなかったことにしてしまえばいい。
ここにいる全員を、葬り去れば良いのだ。
「お前らが黙って殺されれば、女王の命は保証してやる! だからその場で大人しくしていろ!」
「……ざっけんなよ。ンな話、信じられるわけ……!」
凄まじい殺気を立ち昇らせるファイフを、ガイムは銃の撃鉄を引き起こしながら睨み返す。
「そう思うのなら、勝手にするといい。わしも勝手にさせて貰うからな。
わしはもう、失うものなどなにもない。どう転んでも構わんぞ!」
「テメエ……!」
殺傷効果を生みそうなほどの視線をぶつけ合う中、ヘルデンは自分に治癒魔法をかけてから立ち上がり、
「拘束魔法【ジャイリス】」
「っぐ!」
ファイフを拘束してから、ブチ切れた目で彼女を見下した。
「いいけどよ……このデカ女やるのは最後だ。こいつは手足引きちぎって、犯しながら殺す……!」
「好きにしろ! さっさとせんか!」
「……分ぁった……よッ!!」
「ぐぅッ!」
ファイフの背を踏みつけてから、ヘルデンはジージョへと歩み寄り、手にした剣に【勇装龍気】を纏わせる。
「っく……!」
ヘルデンがそれを振りかぶり、ジージョはギュッと目をつぶりながら目を逸らし……。
「──彼女を殺すのなら、あなたも殺します」
凄まじい眼光を宿した目でヘルデンを射抜きながら、クインリィがそう言った。
「あなたの親も、殺します。兄弟も殺します。恋人も、親戚も、友人も、知人も、飼い犬にいたるまで。
いままであなたと関りを持った生物、全てを殺します。
逃げられると思わないでください。この世のあらゆる責め苦の果てに、殺します。
彼女が死んでも、私が死んでも、絶対に殺します」
「はっ……はあ!? なん、だよそれ……!」
あまりの迫力に、思わずヘルデンの手が止まる。
クインリィが身動き一つ取れないことは分かっている。
が、その視線に、声に、そして威容に射すくめられたように、動きを縫い留められてしまったのだ。
「や……やれるもんなら、やってみろよ!!」
しかし、やがて覚悟を固めたように、ヘルデンは振り上げた剣をグッと握り直す。
「やめっ……!」
クインリィがそう叫び、剣が振り下げられそうになった、そのとき──。
「あー! びっくりしたぁ! 死ぬかと思ったあ!!」
「「「「「!!!」」」」」
がばりっ! と、いきなりユーリが起き上がり、周囲の者たちもビクリと肩を跳ね上げた。
そんな中、ユーリは当たり前のように起き上がると、パンパンと服の裾に着いた砂を払いながら、
「ってか、え? 僕寝てた? 落ちてたよねいま? うわうわうわ。ごめんマジで。どれくらい寝てたかな?」
「34秒です」
「あー。でもそれくらいなら、まあまあまあ……って」
クインリィのその声に応えるとともに、ユーリは彼女のほうを振り向くと、いままさに剣を振り下げる瞬間のヘルデンと目が合った。
すると、その目の奥から、スゥ、と光が消え失せ、
「分かるよね、ヘルデンくん。そんなことしたら……」
ゴバアッ! と、その全身から凄まじい量の【勇装龍気】を放出させながら、目が全く笑っていない笑顔を浮かべた。
「殺すよ?」
「…………ッ」
ガチャンッ、と剣を取り落とし、ヘルデンはその場へとへたり込んだ。
その股間はだんだんと湿っていく。
重く、鋭く、恐ろしく、質量すらも伴った殺気。
一瞬にして、ヘルデンは理解する。
勇者として──生き物としての、格が違う、と。
この男だけは、相手にしてはいけない、と。
生物としての本能で、それを理解らせられてしまったのだ。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
