【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

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ざまぁされたらやり返す編

43話 切り捨てられる イラストあり

「特に貴様だ、ユーリ!! 勇者の肩書きを失った貴様は、ただの一般市民へと成り下がった!
 しかし貴様の保有する戦力は、個が持つ力として過分なのだ! 危険なのだ!
 そんな危険な存在を、帝国……いや、各国がいつまでも野放しにしていると思うか!?」

 事実、ユーリを引退させたのち、ガイムは彼を殺処分するために動こうとしていた。
 まだ形にはなっていないものの、帝国でも一定の信任を得られている話である。
 各国も同じようなことを思っていてもおかしくはない。

「それに、今回派手に動いたことで、元老院にも目をつけられただろうなぁ! は、はは! 本当にバカな男だ! 自分が死ぬために、あくせくと動き回るとはな!
 いいか、貴様に自由などあると思うな! 元老院が! 帝国が! 世界中が! 貴様の敵だ!
 平和な引退生活など送れるものか! すぐにでもどこかの勢力が動いて、貴様の自由を……!」
「──させませんよ、そんなこと」

 そのとき、ユーリの背後で銀鈴が鳴り響く。
 いつの間にかそこに屹立していたクインリィが、ガイムをキッと睨みながら議論に割り入ってきた。

「確かに私は元老院から、そして貴方から、勇者ユーリとその一行を守り切ることができず、引退に追いやってしまいました。
 私にもっと力があれば……と、一年前のあのときから、後悔しなかった日はありません」

そのときの感情を思い起こすように、無表情の中に僅かな苦味が混じり、美しい鼻梁にも皺が寄る。

「……しかし、あのときといまでは違います」

 次の瞬間には、元の気品と威厳に満ちた表情へと舞い戻り、堂々たる口調で告げた。

「いままで私たちは、帝国や元老院の圧力に屈し、不平等な条約規約を飲まされ続けてきました。
 しかし、これからは戦っていくことに決めました。
 貴方や元老院を相手に、勇者ユーリが果敢に戦い続けたように。
 私たちも──ユリウス王国も、貴方たちが押し付ける『理不尽』と、戦っていく覚悟を決め、体制を整えたのです。
 ユーリの処遇も然り。例え誰がどんなこと勧告をしてきても、ユーリの自由と身の安全は、今度こそこの私が守り抜いて見せます」
「……クインリィ様」

 思わず彼女の名前を呼ぶと、彼女は少しだけ悪戯っぽく笑い、

「お忍びでないときなら、こういった口調も少しは様になって見えるでしょう?」
「うん。惚れ直した。今度もんじゃ奢ってあげるね」
「カレーもんじゃでお願いします」
「明太チーズじゃないの?」
「奢りなら冒険ができますので」

 そんなやりとりをしていると、ユーリのケータイにメールが届いた。

「なんだろう……あっ」

 ガイムの胸元から手を離し、メールを読んだユーリは、半笑いになりながらその文面をクインリィにも見せた。すると彼女は、どちらかというとげんなりとした表情になり、そのままの視線をガイムに放る。

「な、なんだ……? なにを見ている!?」
「いや実はね、大暴走が起きた時点で、うちのスタッフから帝国に連絡をしてたんですよ。ガイムさんが黒幕ってことも含めてね。
そしたら、」

 ユーリはメールの文面を見せつつ、

「『こちらは一切関知していない。ガイムの独断である』って。
 証拠もあるから、もちろんこのまままでで済ませるつもりはないですけど……。
 とりあえず、ガイムさん。あなた……帝国からも切り捨てられちゃったみたいですね~」
「…………ぐぅ、う、うぅ!」

 ガイムは地面に頭を擦り付け、悔しげに呻き声をあげる。
 これでガイムは、完全に終わった。
 各方面とのパイプを切られ、帝国からも見限られたら、さすがに減刑は望めないだろう。
 ユリウス王国の国内法で、きちんと裁くことができそうだ。

(さてと、残る問題は……)

 と、ユーリが麓の様子を望遠魔法で見ようとした、そのとき、

「勇者! 勇者勇者勇者勇者勇者ッ! 勇者ぁ~!!」
「ごぶぅッ!」

 暴れ馬の突っ込まれたかのような衝撃が、背面よりユーリを襲う。
 まだラスボスいた!? などと思いながら振り返ると、ファイフがユーリの背中へと抱き着いているところだった。
 そのさらに背後には、苦笑いしているジージョもいる。どうやら彼女が、ファイフの拘束魔法を説いてくれたようだ。

「勇者勇者勇者ぁ~! 良かったよぉ~! ぐすっ、うぅ……死んだかと思った! もう会えないかと思ったよ~!」

「あ、はは。心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。どこにも怪我してないし、スタイルもいいし、肌もきれいだよ、僕」

 背中越しに茶髪のポニーテールをポンポンと叩くと、彼女は一層ユーリの身体を強く抱きしめ、

「ぐす……う、うぅ……でもさ、あんたさぁ、この作戦立てたときから、ひっく、なんか地に足がついてなかったっていうか……自分のことなんて、どうでもいいって思ってる感じだったっていうか……! なんか、どっか行っちゃいそうで、すごい怖かったの!」
「…………」

 そんなことはない、と、そう言い返すことはできなかった。
 正直、彼女の言う通りだったからだ。

 ──この戦いが終われば、自分ももう終わってもいい。

 意識してそう思っていたわけではない。
 ただユーリは、心のどこかでずっとそんなことを思っていた。

 信頼できる後輩に組織を任せることができたし、仇敵を倒すこともできた。
 自分の役目は、もう終わったのだ。
 勇者ユーリは、ここで終わりなのだ。
 ここから先は、自分のために人生を謳歌する……などとは言ってみたものの、そこからの人生など想像もつかない。
 想像もつかないものには縋れない。
 
 ゆえにユーリは、どこか自分をないがしろにしているところがあった。
 あまり表には出していないつもりだったが、野性的な感性の持ち主であるファイフには、それが伝わってしまったらしい。

「……うん。大丈夫だよ、大丈夫。僕はどこにも行かないし、みんなとずっと一緒だよ」
「……ほんと?」
「本当だよ」
「一緒に遊んでくれる?」
「遊ぶよ」
「デッドリフトの補助、入ってくれる」
「入るよ」
「……グスッ。じゃあいいよ」

 そんなやりとりを終えると、彼女はようやく納得したように身体を離してくれた。
 ユーリとて、なにも本気で死に場所を探しているわけではない。
 いまは想像もつかないが、彼女らと過ごしているうちに、きっと他の生きがいが見つかるだろう。
 ──きっと、そうなのだ。

「……さて、じゃあ最後の一仕事、いきますかぁ~」

 もう一度彼女の頭を撫でてから、ユーリは麓へと視線を向けた。

「そろそろ、大暴走スタンビートを完全に終わらせねばならないとね!」

 ──と。
 ユーリが軽く肩を回し始めた、そのとき。

「ゆ、勇者様! 申し訳ございません!」

 セイリーヌが彼の元へとやってきて、息せき切らしながら告げた。

「ヘ、ヘルデンが……どこにも、見当たりません!!」
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