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青腕の怪人 三バカと器
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例の太陽頭の事件から三週間、桜のつぼみは柔らかく開き、暖かな風に乗って花弁はひらひらと飛んでいく。今日はあの時みたいに特に用事もなく、また散歩をしていた。学校は四月の二週目からだし、のんびりとしていた。ただあの時と違うのは、僕の横に三バカ中の二バカがいるってこと…。
「なぁ、雄二。今日何するよ。別に散歩するのが悪ぃわけじゃねぇけど、もっといい時間の使い方ってのがあるだろ?ほかに友達とか女とかいないんか?」
「そうよ、もっとぱぁっと遊べるところに行こ?ゲーセンとかさぁ。あ、そうそう。この前ツブツブで見たんだけど、『三枚舌のパトリオット』って映画が公開されてるんだって。面白そうじゃない?ぬっきーはどう思う?」
僕の横で騒いでいる二人は貫大海(ぬき ひろみ)と霧島明日香(きりしま あすか)。僕と同じ大学でなぜか仲良くしている三バカ中の二バカ。あともう一人いるけど、今はバイトに行ってる。この二人は…そうだな、一言でいうなら女好きとギャル。大海は金髪でチャラチャラしているし、明日香は格好はおとなしいがそこそこやんちゃな奴だ。
「僕はこの春風にあたりたくてこうしてるんだ。他に行きたいところがあるなら二人で行ってくればいいのに。」
「なぁに寂しいこと言ってんの雄二、人数は多い方が楽しいだろ?」
「それは時と場合によるし…。」
「もー、いいじゃんさ。ずっと当たってるわけじゃないんでしょ?それに雄ちゃんずっとここうろちょろしてるし…春休みもうちょっとすることないの?」
…別にないわけじゃない。でも、やる気が起きないだけ。それに前の太陽頭の件でつかれているんだ。でもそのことを話しても笑われるだけだろうし。
「僕はこの前大きな行事に参加してだな、それで疲れてるんだ。少し怪我したし。」
「おいおい嘘はなしだぜ、雄二ぃ。この前女とふたりでColorfulに行ってたろ。しかも制服の…どっかで見たがここらへんじゃ見ない制服だったな。ったく隅に置けねぇなぁ雄二ぃ。」
ニヨニヨしながら肩を組み、詰めてくる。さながら一般人に金をせびるヤンキーの構図だ。花びらがひらひらと舞い、組んでいる大海の腕につく。
「それはそうと腹が減ったなぁ。どこかで飯食わね?」
「私さんせーい。パフェ食べたいわ。」
「…まぁ、僕も空いてるし食べに行くか。」
―時間は正午を過ぎる前のこと。花びらの舞う河川沿いの道を歩き、三週間前に雄二と翔子がパフェを頼んで店員さんを驚かしたところで有名なColorfulへ入った。中は昼前のためそこまで混んでなかったが、ある程度客はいた。三人は注文を済ませ、料理が来るのを待つ、そんな隙間時間だった。―
「はぁ~、最近お金ないのよねぇ。シフト入ろうにも私の入れる日に人が集中したりで。買いたいコスメがあるのにこれじゃ買えないのよ。」
「あぁ、まぁ今は高校生、それこそ大学生は春休みで多いんじゃね。それに明日香のバイト先って学校近くのシルバーだろ?そりゃ誰だって学近でバイトしてぇだろうよ。楽だし。」
シルバーはシルバーハウンズというカフェの略称で、オリジナルの豆を焙煎して作るコーヒーから季節限定のスイーツ的なドリンクまで幅広く提供しているところだ。僕は行ったことないし、ハードルが高い。なんせ注文が複雑すぎて頼めない。活気のある中高生や大学生、いわゆる「陽キャ」と言われる人たちや、意識の高そうな社会人が注文の時に呪文を唱え、出てくるドリンクを飲みながら他人の悪口やパソコンをカタカタしているところだ…とイメージしている。なんせ行ったことないし。明日香はそんなところ、しかも学校の近くの店舗でバイトしているのだ。
「すごいね、明日香さん。病まない?ああいうところって。」
「雄くんねぇ…いつも行こう行こうって言ってるのにいつも『僕はいいや。』なんて言っちゃってさ。行こうよ、おいしいし。一回行ったらその偏見変わるって。」
僕の偏見は前に話したことあるから伝わってるんだけど、どうしても行きたくない。なんか、怖いし。
「まぁたそんな怪訝な顔して。注文が難しいなら私が頼んであげるわよ!」
「うーん、確かに行かずに変な考えを持つのもちょっとどうかと思うぜ雄二。俺もついてってやるから、な。」
「えぇ…。いやだ。なじめないもん。」
僕はいつだってそう。この前だって人を助けるのに一時間くらい悩んだし。治したい正確ではあるけど、この方が楽なんだよなぁ。
そんな話をしている間に、注文したもので僕らのテーブルと席がだんだんと埋まっていく。ちょうどお昼だし、店内も騒がしくなっていくだろう。パフェの写真を撮って加工している明日香と、早くしないとアイスクリームが溶けてしまうのではないかとそわそわしてしまう僕、そんなことはお構いなしにかつ丼をほおばる大海。スマホを触り終えた明日香は目をキラキラさせてパフェを食べ始める。ストロベリーパフェは少し溶けだしているが、彼女と反対側のアイスの話であり、気づくそぶりもなかった。そっとナプキンで拭くように促し、やっと気づいたらしい。スマホ触らなければ、溶けずに済んだろうに。
かつ丼を水で押し流し、一息ついて大海が口を開く。
「あ、そうそう。この前さ、縫之介からNチャで共有されたんだけど、辰瀬の方で治験バイトがあるらしいぜ。しかも結構高額なバイトだ。」
ツブツブのバイト募集を見せる大海。闇バイトもある中でよく言おうと思ったな…でも縫之介がソースなら確かにあいつは広めかないな。
佐藤縫之介(さとう ほうのすけ)、三バカの一人でまぁまぁ渋めの男、しかし一番の奇人でもある。三人でいるときも大体の問題はこいつが発端だったりする。大海と明日香が言うになんだかんだそこが面白いらしい。多分三バカのバカ成分の7割は縫之介が担ってるんじゃないか?
「あんまちゃんと見てなかったから、今読むわ。なになに?内服薬の治験、四日間で施設内は自由にできるらしい。給料は一、十、百…二、二十万?!?!?」
「「…はぁッ!?」」
バカみたいな金額に驚く僕ら、集まる視線、当然のようにフラッシュバックする三週間前の記憶…。レジにはこの前接客してくれた女性の店員さんが目を丸くしている。ほんの数秒で僕らの背中は猫みたいに丸くなり、視線は離散していく。
「え、普通にやばめなんじゃない?四日で二十万って一日五万…今月の私より稼ぐじゃない…。」
「あぁ、これはやばいだろ。正直怖すぎて応募できねぇよ。」
「これどうする?縫之介のことだし、多分金額しか見てないと思う。」
「まさか…もう応募してるとか…いやまさか、そんなことないか!」
「もう応募しといたぞ。」
「「「…ッ?!?!?!」」」
ふと横を見ると縫之介の姿がそこにあった。なんか少し悲しそうな顔をしているが、僕が言ったことが効いてしまったのか…。僕の横に何事もなかったかのように座る縫之介。
「え、応募したって…お前マジで言ってる?」
「あぁ、だって金欲しいし面白そうだったから。」
「縫ちゃんさすがに無理よこれは。怖すぎるわ。」
「あと僕らの了承取らずにバイト参加させるのえぐくないか?」
「しかもこれ、青腕と日食?とか言う宗教団体っぽくない?」
「うん、だから応募した。」
「お前…最高だな。」
そういいながら頭を抱える大海。明らかに皮肉だろうな。佐藤家の両親はどんな教育をしたらこんな化け物を生み出せるのか気になってきた。大海が頭抱えるってよっぽどだぞ。いつも二つ返事な二人もさすがに躊躇っているが、そんなことを知る由もなく縫之介は店員さんを呼び、カモ肉のサラダを頼んでいだ。…なんっか不思議なこと思ったんだけど、あまりの衝撃に忘れてしまった。
「これ、今週の土曜からなんだよね。」
「しかも急すぎる。言うならもうちょい早くいってくれや。」
「昨日見つけたからしゃあない。」
もしゃもしゃとサラダをほおばりながら答える縫之介。でも僕は知っている。この人たちは絶対に行く。だって面白いこと大好き人間の集まりだし、縫之介の誘った遊びはどれも面白かった。
「いや、さすがにこいつはいけないぜ。」
「私も。縫之介の誘いはいつも面白い物ばかりだけど、これはシャレにならないわ。」
アレー?そんなことある?まさかそうなるとは思わなかった。さすがの二人も頭が上がってない。僕はもちろん行かないけど、ここ三人で頑張るのかと思ってた。でもラッキーだ。このまま行かない方向にもっていこう。
縫之介がサラダを食べ終わり、皆会計を済ませた。帰り道はちょっと重たい足取りだったが、縫之介はそんなこと気にしていない感じだ。
「今日何して遊ぶ?」
「え、あぁ、今日はそうだな…カラオケでも行くか?」
「いいわね、ちょっと重たい雰囲気だしぱぁーっと歌いましょ。」
「え、そんな変なことがあったか?」
いやいや嘘だろ。気づかんか縫之介。さすがに化け物すぎる。どうやって今まで生きてきたんだこいつは。大学でまだ一年…いや、半年くらいだな、そんだけしかあってないから過去は深くは聞かないけどさ。
「そういえばさ、どうやって俺らの場所分かったん?」
「それだ!僕が感じた不思議さ。どうして?」
「え?あぁ、今日バイトだと思ったらシフト入ってなくて、どうしよっかなぁってウロウロしてたら、おばあちゃんに声かけられて。」
ん?おばあちゃん?急に出てきたけど。
「そのおばあちゃんが『ツブツブを見てみなさい。お友達がどこにいるかわかるはずよ。』なんて言ってたから見てみたらさ、明日香がColorful のストロベリーパフェ上げてるもんだから。それで特定できたんだよね。」
待て待て待て、なんかそのおばあちゃん僕あった事ありそうなんだけど。
「それで、礼を言って向かおうとしたら、『それと、今悩んでいるバイト、お友達を絶対に連れてきなさい。その中に器がおる。悩んでいる時間はない。』なんて言ってきて。もうその時には応募してたから行く気満々だったんだけどね。」
やっっぱりだよ。あのおばあちゃんか。しかも器って多分僕のことじゃん、前にも言われたし。
「え、何そのおばあちゃん。怖くない?なんで私が投稿した時間わかるの?フォロワーにいたかしら…。みんな私と同じくらいだと思ってたんだけど。」
「それにそのバイトのことも見抜いていんの、やばくないか?予言者か何かじゃね?」
はぁ~、太陽頭の件であったおばあちゃんで間違いなさそうだな。こっちの情報が筒抜けている。…え、行かないとやばいかな。前もあのおばあちゃんの言うこと聞いたけど…この前のこと言ってみるか。もしかしたらこのまま鼻を折れるかもしれない。
口角が下がっている二人とウッキウキな一人に僕は口を挟んだ。
「ねぇ、ごめん。僕そのおばあちゃんと面識あるかも。」
「はぁ?マジで言ってるの雄くん。」
首が前へずいっと動く明日香。さすがの縫之介も驚いている様子。
「この前、三週間前くらいだ。」
「ほぉ?…ってなると、雄二がColorfulに制服の女の子と言った時と重なるな。」
「そう、あの時だよ。彼女は雨咲翔子って人。縫之介は面識ある…ていうかみんなあるだろ?なんか、縫之介が助けられたみたいな話してたじゃん。」
「あぁ、あの時のかっこいい女の子ね。私も覚えてるわ。」
「そう、あの子と化け物退治に行ったんだ。」
口を開けてぽかんとする明日香と大海、のんきな顔をしている縫之介、より一層ウキウキしてないか。
「その時は顔が太陽みたいになってるやつと戦って…。それでそいつから猛攻を食らったから怪我してたんだ…。信じられないかもしれないけど。」
「いや、逆だ。雄二の話で一気に信憑性が上がったぜ。におうぞ。」
「あと、オフィスで戦ったんだけど、向かおうか悩んでいる時にそのおばあちゃんにあった。その時も器がどうとか…とりあえず、当時の僕の状況も筒抜けだった。」
「これは…行くしかなくない?」
「うぉうぉ、じゃないわ、ぼけ。」
「でも、今日のこともあるし、何より『器』ってのが気になるわね。」
あれ、なんかみんな目が輝きだしてる気がする…これってもしかして。
待ちきれなさそうな縫之介が切り出す。
「よし、行かね?おもしろそうやん。」
「あぁ、俺も気になってきた。もしインチキ集団なら、俺はそいつらをぶっとばす。」
「謎もあるし、このままだと気持ち悪いもの、私も行くわ。それに雄くん、あんたも来なさいよ。今回の件、雄くんがキーマンだと思うわ。」
「あぁ、俺のダチをそそのかしたばあさんもそこにいるはずだ。お前のこと放っちゃおけねぇ。」
三人の目が一層輝きだす。そうなっちゃうかぁ、怖がらせようと思ったのにぃぃ!!
悔しさを押し殺し、僕は流れでうなずいてしまった。バイトは今週の土曜日。気持ちが持たないよ…。
「なぁ、雄二。今日何するよ。別に散歩するのが悪ぃわけじゃねぇけど、もっといい時間の使い方ってのがあるだろ?ほかに友達とか女とかいないんか?」
「そうよ、もっとぱぁっと遊べるところに行こ?ゲーセンとかさぁ。あ、そうそう。この前ツブツブで見たんだけど、『三枚舌のパトリオット』って映画が公開されてるんだって。面白そうじゃない?ぬっきーはどう思う?」
僕の横で騒いでいる二人は貫大海(ぬき ひろみ)と霧島明日香(きりしま あすか)。僕と同じ大学でなぜか仲良くしている三バカ中の二バカ。あともう一人いるけど、今はバイトに行ってる。この二人は…そうだな、一言でいうなら女好きとギャル。大海は金髪でチャラチャラしているし、明日香は格好はおとなしいがそこそこやんちゃな奴だ。
「僕はこの春風にあたりたくてこうしてるんだ。他に行きたいところがあるなら二人で行ってくればいいのに。」
「なぁに寂しいこと言ってんの雄二、人数は多い方が楽しいだろ?」
「それは時と場合によるし…。」
「もー、いいじゃんさ。ずっと当たってるわけじゃないんでしょ?それに雄ちゃんずっとここうろちょろしてるし…春休みもうちょっとすることないの?」
…別にないわけじゃない。でも、やる気が起きないだけ。それに前の太陽頭の件でつかれているんだ。でもそのことを話しても笑われるだけだろうし。
「僕はこの前大きな行事に参加してだな、それで疲れてるんだ。少し怪我したし。」
「おいおい嘘はなしだぜ、雄二ぃ。この前女とふたりでColorfulに行ってたろ。しかも制服の…どっかで見たがここらへんじゃ見ない制服だったな。ったく隅に置けねぇなぁ雄二ぃ。」
ニヨニヨしながら肩を組み、詰めてくる。さながら一般人に金をせびるヤンキーの構図だ。花びらがひらひらと舞い、組んでいる大海の腕につく。
「それはそうと腹が減ったなぁ。どこかで飯食わね?」
「私さんせーい。パフェ食べたいわ。」
「…まぁ、僕も空いてるし食べに行くか。」
―時間は正午を過ぎる前のこと。花びらの舞う河川沿いの道を歩き、三週間前に雄二と翔子がパフェを頼んで店員さんを驚かしたところで有名なColorfulへ入った。中は昼前のためそこまで混んでなかったが、ある程度客はいた。三人は注文を済ませ、料理が来るのを待つ、そんな隙間時間だった。―
「はぁ~、最近お金ないのよねぇ。シフト入ろうにも私の入れる日に人が集中したりで。買いたいコスメがあるのにこれじゃ買えないのよ。」
「あぁ、まぁ今は高校生、それこそ大学生は春休みで多いんじゃね。それに明日香のバイト先って学校近くのシルバーだろ?そりゃ誰だって学近でバイトしてぇだろうよ。楽だし。」
シルバーはシルバーハウンズというカフェの略称で、オリジナルの豆を焙煎して作るコーヒーから季節限定のスイーツ的なドリンクまで幅広く提供しているところだ。僕は行ったことないし、ハードルが高い。なんせ注文が複雑すぎて頼めない。活気のある中高生や大学生、いわゆる「陽キャ」と言われる人たちや、意識の高そうな社会人が注文の時に呪文を唱え、出てくるドリンクを飲みながら他人の悪口やパソコンをカタカタしているところだ…とイメージしている。なんせ行ったことないし。明日香はそんなところ、しかも学校の近くの店舗でバイトしているのだ。
「すごいね、明日香さん。病まない?ああいうところって。」
「雄くんねぇ…いつも行こう行こうって言ってるのにいつも『僕はいいや。』なんて言っちゃってさ。行こうよ、おいしいし。一回行ったらその偏見変わるって。」
僕の偏見は前に話したことあるから伝わってるんだけど、どうしても行きたくない。なんか、怖いし。
「まぁたそんな怪訝な顔して。注文が難しいなら私が頼んであげるわよ!」
「うーん、確かに行かずに変な考えを持つのもちょっとどうかと思うぜ雄二。俺もついてってやるから、な。」
「えぇ…。いやだ。なじめないもん。」
僕はいつだってそう。この前だって人を助けるのに一時間くらい悩んだし。治したい正確ではあるけど、この方が楽なんだよなぁ。
そんな話をしている間に、注文したもので僕らのテーブルと席がだんだんと埋まっていく。ちょうどお昼だし、店内も騒がしくなっていくだろう。パフェの写真を撮って加工している明日香と、早くしないとアイスクリームが溶けてしまうのではないかとそわそわしてしまう僕、そんなことはお構いなしにかつ丼をほおばる大海。スマホを触り終えた明日香は目をキラキラさせてパフェを食べ始める。ストロベリーパフェは少し溶けだしているが、彼女と反対側のアイスの話であり、気づくそぶりもなかった。そっとナプキンで拭くように促し、やっと気づいたらしい。スマホ触らなければ、溶けずに済んだろうに。
かつ丼を水で押し流し、一息ついて大海が口を開く。
「あ、そうそう。この前さ、縫之介からNチャで共有されたんだけど、辰瀬の方で治験バイトがあるらしいぜ。しかも結構高額なバイトだ。」
ツブツブのバイト募集を見せる大海。闇バイトもある中でよく言おうと思ったな…でも縫之介がソースなら確かにあいつは広めかないな。
佐藤縫之介(さとう ほうのすけ)、三バカの一人でまぁまぁ渋めの男、しかし一番の奇人でもある。三人でいるときも大体の問題はこいつが発端だったりする。大海と明日香が言うになんだかんだそこが面白いらしい。多分三バカのバカ成分の7割は縫之介が担ってるんじゃないか?
「あんまちゃんと見てなかったから、今読むわ。なになに?内服薬の治験、四日間で施設内は自由にできるらしい。給料は一、十、百…二、二十万?!?!?」
「「…はぁッ!?」」
バカみたいな金額に驚く僕ら、集まる視線、当然のようにフラッシュバックする三週間前の記憶…。レジにはこの前接客してくれた女性の店員さんが目を丸くしている。ほんの数秒で僕らの背中は猫みたいに丸くなり、視線は離散していく。
「え、普通にやばめなんじゃない?四日で二十万って一日五万…今月の私より稼ぐじゃない…。」
「あぁ、これはやばいだろ。正直怖すぎて応募できねぇよ。」
「これどうする?縫之介のことだし、多分金額しか見てないと思う。」
「まさか…もう応募してるとか…いやまさか、そんなことないか!」
「もう応募しといたぞ。」
「「「…ッ?!?!?!」」」
ふと横を見ると縫之介の姿がそこにあった。なんか少し悲しそうな顔をしているが、僕が言ったことが効いてしまったのか…。僕の横に何事もなかったかのように座る縫之介。
「え、応募したって…お前マジで言ってる?」
「あぁ、だって金欲しいし面白そうだったから。」
「縫ちゃんさすがに無理よこれは。怖すぎるわ。」
「あと僕らの了承取らずにバイト参加させるのえぐくないか?」
「しかもこれ、青腕と日食?とか言う宗教団体っぽくない?」
「うん、だから応募した。」
「お前…最高だな。」
そういいながら頭を抱える大海。明らかに皮肉だろうな。佐藤家の両親はどんな教育をしたらこんな化け物を生み出せるのか気になってきた。大海が頭抱えるってよっぽどだぞ。いつも二つ返事な二人もさすがに躊躇っているが、そんなことを知る由もなく縫之介は店員さんを呼び、カモ肉のサラダを頼んでいだ。…なんっか不思議なこと思ったんだけど、あまりの衝撃に忘れてしまった。
「これ、今週の土曜からなんだよね。」
「しかも急すぎる。言うならもうちょい早くいってくれや。」
「昨日見つけたからしゃあない。」
もしゃもしゃとサラダをほおばりながら答える縫之介。でも僕は知っている。この人たちは絶対に行く。だって面白いこと大好き人間の集まりだし、縫之介の誘った遊びはどれも面白かった。
「いや、さすがにこいつはいけないぜ。」
「私も。縫之介の誘いはいつも面白い物ばかりだけど、これはシャレにならないわ。」
アレー?そんなことある?まさかそうなるとは思わなかった。さすがの二人も頭が上がってない。僕はもちろん行かないけど、ここ三人で頑張るのかと思ってた。でもラッキーだ。このまま行かない方向にもっていこう。
縫之介がサラダを食べ終わり、皆会計を済ませた。帰り道はちょっと重たい足取りだったが、縫之介はそんなこと気にしていない感じだ。
「今日何して遊ぶ?」
「え、あぁ、今日はそうだな…カラオケでも行くか?」
「いいわね、ちょっと重たい雰囲気だしぱぁーっと歌いましょ。」
「え、そんな変なことがあったか?」
いやいや嘘だろ。気づかんか縫之介。さすがに化け物すぎる。どうやって今まで生きてきたんだこいつは。大学でまだ一年…いや、半年くらいだな、そんだけしかあってないから過去は深くは聞かないけどさ。
「そういえばさ、どうやって俺らの場所分かったん?」
「それだ!僕が感じた不思議さ。どうして?」
「え?あぁ、今日バイトだと思ったらシフト入ってなくて、どうしよっかなぁってウロウロしてたら、おばあちゃんに声かけられて。」
ん?おばあちゃん?急に出てきたけど。
「そのおばあちゃんが『ツブツブを見てみなさい。お友達がどこにいるかわかるはずよ。』なんて言ってたから見てみたらさ、明日香がColorful のストロベリーパフェ上げてるもんだから。それで特定できたんだよね。」
待て待て待て、なんかそのおばあちゃん僕あった事ありそうなんだけど。
「それで、礼を言って向かおうとしたら、『それと、今悩んでいるバイト、お友達を絶対に連れてきなさい。その中に器がおる。悩んでいる時間はない。』なんて言ってきて。もうその時には応募してたから行く気満々だったんだけどね。」
やっっぱりだよ。あのおばあちゃんか。しかも器って多分僕のことじゃん、前にも言われたし。
「え、何そのおばあちゃん。怖くない?なんで私が投稿した時間わかるの?フォロワーにいたかしら…。みんな私と同じくらいだと思ってたんだけど。」
「それにそのバイトのことも見抜いていんの、やばくないか?予言者か何かじゃね?」
はぁ~、太陽頭の件であったおばあちゃんで間違いなさそうだな。こっちの情報が筒抜けている。…え、行かないとやばいかな。前もあのおばあちゃんの言うこと聞いたけど…この前のこと言ってみるか。もしかしたらこのまま鼻を折れるかもしれない。
口角が下がっている二人とウッキウキな一人に僕は口を挟んだ。
「ねぇ、ごめん。僕そのおばあちゃんと面識あるかも。」
「はぁ?マジで言ってるの雄くん。」
首が前へずいっと動く明日香。さすがの縫之介も驚いている様子。
「この前、三週間前くらいだ。」
「ほぉ?…ってなると、雄二がColorfulに制服の女の子と言った時と重なるな。」
「そう、あの時だよ。彼女は雨咲翔子って人。縫之介は面識ある…ていうかみんなあるだろ?なんか、縫之介が助けられたみたいな話してたじゃん。」
「あぁ、あの時のかっこいい女の子ね。私も覚えてるわ。」
「そう、あの子と化け物退治に行ったんだ。」
口を開けてぽかんとする明日香と大海、のんきな顔をしている縫之介、より一層ウキウキしてないか。
「その時は顔が太陽みたいになってるやつと戦って…。それでそいつから猛攻を食らったから怪我してたんだ…。信じられないかもしれないけど。」
「いや、逆だ。雄二の話で一気に信憑性が上がったぜ。におうぞ。」
「あと、オフィスで戦ったんだけど、向かおうか悩んでいる時にそのおばあちゃんにあった。その時も器がどうとか…とりあえず、当時の僕の状況も筒抜けだった。」
「これは…行くしかなくない?」
「うぉうぉ、じゃないわ、ぼけ。」
「でも、今日のこともあるし、何より『器』ってのが気になるわね。」
あれ、なんかみんな目が輝きだしてる気がする…これってもしかして。
待ちきれなさそうな縫之介が切り出す。
「よし、行かね?おもしろそうやん。」
「あぁ、俺も気になってきた。もしインチキ集団なら、俺はそいつらをぶっとばす。」
「謎もあるし、このままだと気持ち悪いもの、私も行くわ。それに雄くん、あんたも来なさいよ。今回の件、雄くんがキーマンだと思うわ。」
「あぁ、俺のダチをそそのかしたばあさんもそこにいるはずだ。お前のこと放っちゃおけねぇ。」
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