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第一章
10:魔道具商人シェダル
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契約を済ませた庭師のジョンと料理人ネイトにそれぞれマジックリングを手渡し今日中に離宮に向かえるように準備をお願いする。
「もし今日中に向かうのが無理ならば先に言って下さい。後日直接離宮に来て貰って構わない」
人各々準備もどれぐらい掛かるかわからないし、一先ず別れを告げる家族も居るだろう。別に来ようと思えばいつでも来れる隣街なのだから別れも何もない気もするが....。
けれどそう言った僕の言葉に2人は顔を横に振った。
「俺には家族がこの街には居ないので部屋の解約と荷物さえ準備すればすぐに出れます」
「私もです。息子達とは既に別々に暮らしてますので一言告げれば問題はありません。あの、離宮で庭師をする事自体は家族に話しても問題はないのですよね?」
「ああ。仕事場所を告げる事自体は問題はないよ。ただ離宮の内情を話す事は君達の安全にも関わる事だからそれだけは辞めて欲しいし、契約にも含まれている」
「わかりました。こう見えて口だけは固いのですよ」
そう言いながら笑みを浮かべるジョンは中々に胆が据わっているようだ。流石に商人だっただけはあるな。
「アルファルド様、実は今日ご紹介しようと思っていた商人もジョンから紹介して頂いた人物なのです」
「.....そうなのか?」
ギルド長が頷く。
「アルファルド様のご提示頂いた魔道具の販売経路は大商店だから良い訳ではなく、例え小さくとも魔道具に精通している商人商店でなければなりません。ですから以前商人をしていて界隈にも詳しいジョンさんから紹介して頂いたのです。シェダルさんどうぞ」
部屋の入り口とは別の奥にあった扉から1人の中年の男性が入ってくる。赤髪に緑色瞳のイケオジと言っても良さそうなぐらいには顔は整っている。年の頃は四十ぐらいだろうか?年齢に見合った渋さも漂わせている。
.....自分がこのぐらいの年齢になったらこうなりたいと思えるぐらいだが....とてもじゃないが商人には見えないんだが.....
「此方はシェダルさんと言って魔道具専門の商会をされているそうなんですが、商会を立ち上げてまだ間も無く王宮や特定の貴族様方との繋がりもありません」
「.....商会を立ち上げたばかり?それまではどうしていたんですか?」
「私は元々魔道具職人で、王都でも有名な商会で専属魔道具師として働いていました」
「そうなのか」
「はい。ですが私はその商会の商会長と折り合いが悪く商会を辞めさせられたのです。ならばとこの機会に自分の魔道具専用の商会を立ち上げようと思ったのです」
シェダルの口から商会長の話が出た途端、その瞳に一瞬だが怒りが感じられ、どうやら嘘は言っていない事がわかる。
「....何故折り合いが悪かったんだ?」
「商会長は粗悪品の魔道具でもお金にさえなればそれで良いと言うような商人でした。見習いになったばかりの魔道具師を集め、粗悪品を作らせた量産して売り捌いていたんです....何度申し入れをしても商会長は止めようとせず、私と顔を合わせる事もしなくなりました.....私も魔道具を製作する上で資金はどうしても必要不可欠なので目を瞑って商会で働いていたんですがある日設計図を盗まれたのです」
「.....犯人は商会長?」
「実行犯は同僚の魔道具師でしたが盗むように命令したのは商会長でした....」
「認めなかっただろう?」
「.....はい.....ですが流石に私も愛想がつきましたので独立したのです」
まぁ.....有名な商会でしかも商会長なんてしてたら認める訳がないだろうなぁ....けど魔道具の粗悪品なんて物を販売してたら下手したらクレームの嵐だろうに。
「.....その商会の名は?」
「.....ゼータ商会です....」
「ああ.....あそこか」
あそこの商会ならやりそうだな。かの商会は王妃と昵懇の中で王都でもやりたい放題に商会を運営しているからかなりの商会から反感を買っている事でも有名だ。だが後ろ楯に王族が居るから誰も反論出来ずにいる。
「あの商会は後ろ楯に王妃が居るからな.....まぁ何をしてても可笑しくはないな。だがギルド長、僕が取引したいのは魔道具だけではなく、離宮に定期的に食材等も運んでくれる商人なんだが彼の商会では無理だろう?ルートが違いすぎる」
魔道具を販売するルートと、食材等日用品を売買するルートは基本違う。大きな商会等では両方のルートを持っているからこそどちらも出来る事であって魔道具師をやっている彼にはどう考えてもそちらのルートは開拓出来ていないだろう。
「はい。ですから彼とジョンの息子さんがやっている商会2つで取引をしてはどうかと。どちらも王都には進出していない小さな商会ですのでアルファルド様のご指定に叶うかと」
ああ.....そう言う事か.....。確かに魔道具に関しては取り扱いに関しても良く知る魔道具師の方が理解が早いだろう。
「ジョンさんが創られた商会は小さいながらも信頼と実績を兼ね備えた商会です」
商業ギルドのギルド長がそう断言するのだからそれは確かなのだろう。
「.....そうだな....ギルド長がそこまで言うのならば信頼してみよう。では彼にも契約書を」
シェダルが渡された契約書を確認している間にジョンの息子の商会長も応接室へと呼ばれギルド長から説明を受け、契約書にサインをした。翠の離宮と専属契約を交わしたとしても王族御用達になる訳でもないのだと告げれば、ジョンと同じく人の良さそうな笑みを浮かべて王室御用達等目指してはいないので大丈夫です、とハッキリと僕に告げたのだった。
「もし今日中に向かうのが無理ならば先に言って下さい。後日直接離宮に来て貰って構わない」
人各々準備もどれぐらい掛かるかわからないし、一先ず別れを告げる家族も居るだろう。別に来ようと思えばいつでも来れる隣街なのだから別れも何もない気もするが....。
けれどそう言った僕の言葉に2人は顔を横に振った。
「俺には家族がこの街には居ないので部屋の解約と荷物さえ準備すればすぐに出れます」
「私もです。息子達とは既に別々に暮らしてますので一言告げれば問題はありません。あの、離宮で庭師をする事自体は家族に話しても問題はないのですよね?」
「ああ。仕事場所を告げる事自体は問題はないよ。ただ離宮の内情を話す事は君達の安全にも関わる事だからそれだけは辞めて欲しいし、契約にも含まれている」
「わかりました。こう見えて口だけは固いのですよ」
そう言いながら笑みを浮かべるジョンは中々に胆が据わっているようだ。流石に商人だっただけはあるな。
「アルファルド様、実は今日ご紹介しようと思っていた商人もジョンから紹介して頂いた人物なのです」
「.....そうなのか?」
ギルド長が頷く。
「アルファルド様のご提示頂いた魔道具の販売経路は大商店だから良い訳ではなく、例え小さくとも魔道具に精通している商人商店でなければなりません。ですから以前商人をしていて界隈にも詳しいジョンさんから紹介して頂いたのです。シェダルさんどうぞ」
部屋の入り口とは別の奥にあった扉から1人の中年の男性が入ってくる。赤髪に緑色瞳のイケオジと言っても良さそうなぐらいには顔は整っている。年の頃は四十ぐらいだろうか?年齢に見合った渋さも漂わせている。
.....自分がこのぐらいの年齢になったらこうなりたいと思えるぐらいだが....とてもじゃないが商人には見えないんだが.....
「此方はシェダルさんと言って魔道具専門の商会をされているそうなんですが、商会を立ち上げてまだ間も無く王宮や特定の貴族様方との繋がりもありません」
「.....商会を立ち上げたばかり?それまではどうしていたんですか?」
「私は元々魔道具職人で、王都でも有名な商会で専属魔道具師として働いていました」
「そうなのか」
「はい。ですが私はその商会の商会長と折り合いが悪く商会を辞めさせられたのです。ならばとこの機会に自分の魔道具専用の商会を立ち上げようと思ったのです」
シェダルの口から商会長の話が出た途端、その瞳に一瞬だが怒りが感じられ、どうやら嘘は言っていない事がわかる。
「....何故折り合いが悪かったんだ?」
「商会長は粗悪品の魔道具でもお金にさえなればそれで良いと言うような商人でした。見習いになったばかりの魔道具師を集め、粗悪品を作らせた量産して売り捌いていたんです....何度申し入れをしても商会長は止めようとせず、私と顔を合わせる事もしなくなりました.....私も魔道具を製作する上で資金はどうしても必要不可欠なので目を瞑って商会で働いていたんですがある日設計図を盗まれたのです」
「.....犯人は商会長?」
「実行犯は同僚の魔道具師でしたが盗むように命令したのは商会長でした....」
「認めなかっただろう?」
「.....はい.....ですが流石に私も愛想がつきましたので独立したのです」
まぁ.....有名な商会でしかも商会長なんてしてたら認める訳がないだろうなぁ....けど魔道具の粗悪品なんて物を販売してたら下手したらクレームの嵐だろうに。
「.....その商会の名は?」
「.....ゼータ商会です....」
「ああ.....あそこか」
あそこの商会ならやりそうだな。かの商会は王妃と昵懇の中で王都でもやりたい放題に商会を運営しているからかなりの商会から反感を買っている事でも有名だ。だが後ろ楯に王族が居るから誰も反論出来ずにいる。
「あの商会は後ろ楯に王妃が居るからな.....まぁ何をしてても可笑しくはないな。だがギルド長、僕が取引したいのは魔道具だけではなく、離宮に定期的に食材等も運んでくれる商人なんだが彼の商会では無理だろう?ルートが違いすぎる」
魔道具を販売するルートと、食材等日用品を売買するルートは基本違う。大きな商会等では両方のルートを持っているからこそどちらも出来る事であって魔道具師をやっている彼にはどう考えてもそちらのルートは開拓出来ていないだろう。
「はい。ですから彼とジョンの息子さんがやっている商会2つで取引をしてはどうかと。どちらも王都には進出していない小さな商会ですのでアルファルド様のご指定に叶うかと」
ああ.....そう言う事か.....。確かに魔道具に関しては取り扱いに関しても良く知る魔道具師の方が理解が早いだろう。
「ジョンさんが創られた商会は小さいながらも信頼と実績を兼ね備えた商会です」
商業ギルドのギルド長がそう断言するのだからそれは確かなのだろう。
「.....そうだな....ギルド長がそこまで言うのならば信頼してみよう。では彼にも契約書を」
シェダルが渡された契約書を確認している間にジョンの息子の商会長も応接室へと呼ばれギルド長から説明を受け、契約書にサインをした。翠の離宮と専属契約を交わしたとしても王族御用達になる訳でもないのだと告げれば、ジョンと同じく人の良さそうな笑みを浮かべて王室御用達等目指してはいないので大丈夫です、とハッキリと僕に告げたのだった。
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