拝啓、今日からモブ、始めます!

水月

文字の大きさ
11 / 20
第一章

11:マリーの特技

しおりを挟む
全ての契約を終えて商業ギルドを後にし、ジョンとネイトを連れてマリーとの待ち合わせ場所へと向かう。魔道具に関してはこの後再度シェダルとギルド長と3人で話し合う予定にしてある。その間にマリーにはネイトを連れて急ぎネイトが必要な物の買い出しを頼むつもりでいる。料理人ではない僕とマリーではわからない物もあるだろう。



「マリー、お待たせ。料理人と庭師が決まったよ」

僕がそう言って2人を紹介すると、マリーはじっと観察するように視線を向けた。そんなマリーの視線にジョンは変わらない態度だったがネイトは少しだけ居心地が悪そうだった。

....これはあれだな。若い女性にじっと見つめられる機会はあまりないだろうから困惑しているんだろうな....

料理人は基本的に朝から夜まで仕込みだの何だのと忙しい。そんな彼らに女性と親しくする暇は中々ないだろう。

「....マリーのお眼鏡には叶ったかな?」
「まぁそうですね....及第点かと」
「ふふふっ。相変わらず手厳しいな」
「当たり前です。アルファルド様の元で働くのですからしっかりした人でなければ!」

マリーはキッパリと言い切る。ここでマリーの言う"しっかり"とは僕を裏切らない人物だと言う事。何故かマリーは昔からそう言う事を見抜く天才だったから何度も助けられた。だからこそ僕はマリーの目を信頼出来る。 

「じゃあ納得言った所でマリーはネイトと一緒に行って買い出しを頼むよ。僕達ではわからない必要な物もあるかもしれないだろう?その後にネイトの家に行って離宮に来る準備を手伝ってくれ」
「わかりました。アルファルド様は何をされるんですか?」
「僕はもう一度商業ギルドに戻って魔道具商人との話し合いだよ。ネイトとジョンは荷馬車は操れるかな?」
「はい。食材の買い出しには荷馬車が必要だったので一応は」
「私も商人をやっていた頃は必要でしたから」

僕が訊ねると2人とも大丈夫だとすぐに返事が返ってくる。

「そうか。じゃあ荷物が多ければ荷馬車を借りてそれで荷物を運んでくれるかな?」
「「わかりました」」


待ち合わせは同じくこの場所で、夕刻までには1度此方に集合の旨を告げた。どうしても今日中に片付けが終わらない場合は明日以降でも構わないがその場合は直接離宮に来て貰わなくてはならない。この後に控えている魔道具商人とギルド長との話し合いの結果次第にはなるが魔道具を作成する時間が当分必要になるだろうから、僕が直接街へ行くことは難しいだろうから。

「.....量産する事は僕には対して難しくはないけどどれぐらいの数量を卸すかだよね。多すぎれば価格が下落するし、高過ぎればどんなに高性能な魔道具だったとしても高位貴族にしか買う事が出来なくなる。その辺りの匙加減が重要だな.....」

そんな事を考えながら僕は再び商業ギルドへと戻る道を歩いていった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...