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第一章
13:魔道具師ハリス
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ある一定の生活基盤が整えば、離宮での暮らしは格段に水準が上がった。
新たに雇った料理人と庭師、そして侍女マリーと僕。王族の住む離宮の筈なのに住人が四人しか居ないのはとてもじゃないけど普通ではない。常識から言えばこれを放置している王宮は他国から見たら異常だろう。けれどそれを異常だと思わない王妃を筆頭とした王族なのだから僕からしたら呆れて物が言えない。
まぁ僕としては好き勝手出来るから有難いけど。
魔道具師シェダルの商会で取り扱いを始めた僕こと、魔道具師ハリスの魔道具はそれはそれは売れた。予約で一年先まで埋まる程の人気だ。基本的には伝達用の魔道具の改良型なので商業ギルド長が各ギルドへの魔道具の宣伝を担ってくれたお陰で全ギルドから注文が入ったのだ。流石にそれだけの数を一度に製作するのは難しいので納期を決め順次納品と言う形にして、ほぼ一年掛かるぐらいの注文数だったのだ。
そしてシェダルが考案していた保冷庫の改良型にちいても彼の頭の中には設計図が当然残っているので新たに書き起こして貰い、設計図の問題点を指摘し更に改良出来る部分のヒントを教えてやり盗まれた設計図の物よりもはるかに良品となった更なる改良型の保冷庫を創り上げ販売したところ大ヒット商品となった。主に小さい家で従来の大型や中型の保冷庫を置くのが大変だった家庭に喜ばれた。
当然そのヒットに黙って居なかったのは元々の設計図を盗んだゼータ商会だ。自分達の設計図が僕達に盗まれたと言い出したのだ。
「.....本当にバカだよねぇ…...」
当然そのような反論が認められる訳がない。ゼータ商会が出した盗まれたと主張する設計図とシェダルと僕が創った新たな保冷庫の設計図は似ても似つかない性能なのだから。
「ゼータ商会の魔道具師って頭大丈夫なの?」
実物を見たら全く違う事ぐらい魔道具師ならわかる筈だ。そんな僕の疑問にシェダルは苦笑いを浮かべるのみだった。
因みに魔道具師ハリスとして街に出る際には目と髪の色を魔法で変えて第三王子アルファルドだと解らないように変装をしている。流石に第三王子の顔は知らなくとも見た目の特徴を知っている者は多い。下手に僕が魔道具作りに関わっていると知れ渡るのは困るからね。
何れにせよ生活の資金源も整った事だし、これでいつ王宮からの予算が滞る事になっても問題は全くない。寧ろ王宮からの微々たる予算なんて要らないぐらいなんだけど。
マリーには既にシェダルの魔道具商会から得た僕の口座から寄付金と言う形で僕に毎月入るようになっているから、そちらから使用人の給与や生活費等の必要経費は使うように伝えてある。
王宮から届く雀の涙程の金額と同等にしないで欲しいな。それなりに見た目だけでも質素な生活をしていれば資金源を疑われる事もないだろう。
まさか僕が魔道具で王国の一年間の予算を僅か一月で稼ぐとは王妃達も思うまい。
「ま、気がついたところで遅いけどね」
僕が城を出た時点でお前達王族の先にあるのは破滅だけ。
「ふふふ....本当に楽しみだよ」
母上が味わった苦しみ以上の苦しみを僕が与えてあげる。
ふ、と机の上に置いてある一通の手紙が視界に入る。今朝マリーが僕宛に届いた招待状だと言って持ってきた物だ。
真っ白い封筒に紋章の入った封蝋がされている。
辺境伯ディーバイン家。
今は友好条約で戦争こそないが決して仲の良いとは言えない隣国との境界を守護する王国の盾。王家とは昔からそれなりに交遊があり、母上が生きていた頃には何度か辺境伯家にも招待をされた事もあった。その頃はまだ皆僕にも優しかったから。
けれど母上が亡くなってからは王城に辺境伯家が来ても僕は一切無視されていた。城の中ですれ違っても此方を見もしなかったのに。
それなのに何故今更招待状など?
僕は手にした招待状を見もせずに破り棄て魔法で燃やす。
「.....今更何の為に招待状を送りつけて来たのか知らないけど.....本気で参加すると思ってるなら辺境伯家も終わりかな?」
それに今は戯れ事に構ってる暇等僕にはない。兎に角今は動かせる資金を増やす事が第一。その為には魔道具の開発が必要不可欠だ。
「僕達の魔道具がなければ生活が回らない....せめてそれぐらいには魔道具師としてシェダルとハリスの名は広まらなければならない」
その為の布石は打っておいたし、だからこそ今はそれ以外の余計な事に煩わされるのは正直勘弁して欲しいと言うものだろう。
「ま、どうしても重要な話でもあるなら直接訪ねて来るでしょ。この離宮に来れる勇気があるならばだけど」
その時はどの面下げて僕の前に来るのか楽しみだ。
新たに雇った料理人と庭師、そして侍女マリーと僕。王族の住む離宮の筈なのに住人が四人しか居ないのはとてもじゃないけど普通ではない。常識から言えばこれを放置している王宮は他国から見たら異常だろう。けれどそれを異常だと思わない王妃を筆頭とした王族なのだから僕からしたら呆れて物が言えない。
まぁ僕としては好き勝手出来るから有難いけど。
魔道具師シェダルの商会で取り扱いを始めた僕こと、魔道具師ハリスの魔道具はそれはそれは売れた。予約で一年先まで埋まる程の人気だ。基本的には伝達用の魔道具の改良型なので商業ギルド長が各ギルドへの魔道具の宣伝を担ってくれたお陰で全ギルドから注文が入ったのだ。流石にそれだけの数を一度に製作するのは難しいので納期を決め順次納品と言う形にして、ほぼ一年掛かるぐらいの注文数だったのだ。
そしてシェダルが考案していた保冷庫の改良型にちいても彼の頭の中には設計図が当然残っているので新たに書き起こして貰い、設計図の問題点を指摘し更に改良出来る部分のヒントを教えてやり盗まれた設計図の物よりもはるかに良品となった更なる改良型の保冷庫を創り上げ販売したところ大ヒット商品となった。主に小さい家で従来の大型や中型の保冷庫を置くのが大変だった家庭に喜ばれた。
当然そのヒットに黙って居なかったのは元々の設計図を盗んだゼータ商会だ。自分達の設計図が僕達に盗まれたと言い出したのだ。
「.....本当にバカだよねぇ…...」
当然そのような反論が認められる訳がない。ゼータ商会が出した盗まれたと主張する設計図とシェダルと僕が創った新たな保冷庫の設計図は似ても似つかない性能なのだから。
「ゼータ商会の魔道具師って頭大丈夫なの?」
実物を見たら全く違う事ぐらい魔道具師ならわかる筈だ。そんな僕の疑問にシェダルは苦笑いを浮かべるのみだった。
因みに魔道具師ハリスとして街に出る際には目と髪の色を魔法で変えて第三王子アルファルドだと解らないように変装をしている。流石に第三王子の顔は知らなくとも見た目の特徴を知っている者は多い。下手に僕が魔道具作りに関わっていると知れ渡るのは困るからね。
何れにせよ生活の資金源も整った事だし、これでいつ王宮からの予算が滞る事になっても問題は全くない。寧ろ王宮からの微々たる予算なんて要らないぐらいなんだけど。
マリーには既にシェダルの魔道具商会から得た僕の口座から寄付金と言う形で僕に毎月入るようになっているから、そちらから使用人の給与や生活費等の必要経費は使うように伝えてある。
王宮から届く雀の涙程の金額と同等にしないで欲しいな。それなりに見た目だけでも質素な生活をしていれば資金源を疑われる事もないだろう。
まさか僕が魔道具で王国の一年間の予算を僅か一月で稼ぐとは王妃達も思うまい。
「ま、気がついたところで遅いけどね」
僕が城を出た時点でお前達王族の先にあるのは破滅だけ。
「ふふふ....本当に楽しみだよ」
母上が味わった苦しみ以上の苦しみを僕が与えてあげる。
ふ、と机の上に置いてある一通の手紙が視界に入る。今朝マリーが僕宛に届いた招待状だと言って持ってきた物だ。
真っ白い封筒に紋章の入った封蝋がされている。
辺境伯ディーバイン家。
今は友好条約で戦争こそないが決して仲の良いとは言えない隣国との境界を守護する王国の盾。王家とは昔からそれなりに交遊があり、母上が生きていた頃には何度か辺境伯家にも招待をされた事もあった。その頃はまだ皆僕にも優しかったから。
けれど母上が亡くなってからは王城に辺境伯家が来ても僕は一切無視されていた。城の中ですれ違っても此方を見もしなかったのに。
それなのに何故今更招待状など?
僕は手にした招待状を見もせずに破り棄て魔法で燃やす。
「.....今更何の為に招待状を送りつけて来たのか知らないけど.....本気で参加すると思ってるなら辺境伯家も終わりかな?」
それに今は戯れ事に構ってる暇等僕にはない。兎に角今は動かせる資金を増やす事が第一。その為には魔道具の開発が必要不可欠だ。
「僕達の魔道具がなければ生活が回らない....せめてそれぐらいには魔道具師としてシェダルとハリスの名は広まらなければならない」
その為の布石は打っておいたし、だからこそ今はそれ以外の余計な事に煩わされるのは正直勘弁して欲しいと言うものだろう。
「ま、どうしても重要な話でもあるなら直接訪ねて来るでしょ。この離宮に来れる勇気があるならばだけど」
その時はどの面下げて僕の前に来るのか楽しみだ。
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